第21話 この画面はどうですか?

今日の活動!

知らねぇ奴が部室に来て、ゲームのテストプレイを依頼された。

暇だったから、断れ無かった。いざゲームスタート!

ゲームハードは部室にあるものだったので、依頼をしてきた田辺からディスクを受け取り、ハードにセット。

「何やってるんですか?」

おっと、カセットとかを入れる時に出る、息をカセットなどに吹きかける少し前の世代の人の大半がやった癖が出てしまった。

実際は、息などの湿気などで劣化を早めてしまうからやらない方が良い。

勿論、ディスクタイプの場合は普通しない。

これは、俺自身も理解出来ていない、無意識の謎行動だ。

無事に、ゲームハードに繋がっているテレビにスタート画面が表示される。

『オンリーラビット』

画面の奥まで続いている草原と雲一つ無い晴天、草原の中で飛び跳ねている一匹のクリーム色のウサギ。

画面真ん中で堂々と存在感をあらわにしている、カラフルかつコミカルなタイトル。

予想外の完成度で思わず、「うわぁ」という呟きをこぼしてしまう。

隣の蒼も「すごい」と目を大きく見開いている。

「どうですか?」

近からず遠からずの場所で座る田辺はにやにやしながら聞いてくる。

何でそんな距離感かと言うと、蒼いわく

「男性が近くにいるのは拒絶する程じゃないだけで苦手は苦手です」

らしい。

今日また、俺は男とも思われていない事が確認出来た。

ここまで、したくない確認はなかなか無い。

例えるなら、授業時間なのに先生が来ない時に代表が教務室に向かう様なものだ。

こんな時はクラスによって、クラス委員長かみんなに指名された一人が生け贄にされるが、幸運なことに俺は一度も選ばれていない。

なぜなら、

「お前行けよー」

「そーだ」

「いやだよ。あいつに行かせたら良いじゃん」

俺を指さす。

「あいつってだれの事かな?」

「あいつだよ。あの・・・ま、まぁ、松田?いや違うか」

「早く行けよ」

「あーもう、分かったよ」

という感じで、俺は一言も発言すること無く回避出来るからだ。

あ、脱線した後に脱線を重ねてしまった。

話を戻そう。

俺は田辺の方へ向き、口をゆっくり開く。

「すごいな。こんなにグラフィックが綺麗だとは思って無かったから正直驚いた」

「感想ありがとうございます」

田辺は真顔で無機質と思える声で返す。

何だこいつ。なんて言うか全然心ない感じが違和感。

「このオンリーラビットって、どのジャンルなんだ?」

「ギャルゲーですね」

「ギャルゲー!?俺やったことないけど」

まさかのジャンルチョイス!ちょっと前から分かっていたけど、こいつは俺が嫌いなタイプだ。

これは早急にご退場して貰わなければ。

「多分、めっちゃ時間掛かるから帰って良いよ。終わったら呼ぶから」

俺はきっと今年一番の作り笑いでそう言った。

田辺は「分かりました」とだけ返して、立ち上がり部室から出て行く。

疲れが顔に出てる気がする。まあ、いいや。

後はゲームをするだけで、おしまいだ。

「さあ、やるぞ」と蒼に言おうと右側に顔を向ける。

向けた先には、女の子座りで抱きかかえている猫のヒスイに満面の笑みで頬ずりしていた。

「は!?」

蒼は俺の視線に気づき、ゆっくりとヒスイを降ろし、赤に染め上がった顔で目をそらして下手な口笛を吹く。

はぁー。・・・・何なのこいつ?

可愛すぎていじめる暇無いんだけどぉぉぉぉぉぉぉ!!

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