第15話 俺が和んじゃダメですか?

無事に蒼の再試が終わり、個部こぶの活動も本格化してきた。

個部は基本、個性を伸ばすと称してぐーたらして、それらしい活動なんてほとんどしない。

しかし、そのせいで他の部活や委員会、時には先生から頼まれ事をされる。

去年の秋は部活のスケットに呼ばれたり、体育祭や文化祭の仕事をさせられたり大変だったなぁ。

今は俺以外まだ来ていないから静かではある。

今日もそんな感じで先生から手伝いを頼まれたんだけど・・・。

「ミャァ」

可愛いなこいつ。何だこの異常なまでの愛らしさは!?

自称犬好きの俺でもお持ち帰りしたくなってしまう。

子猫はカーペットの上にちょこんと座っている。

「うわ!ちっちゃ!すげぇちっちぇ!」

手に乗りそうなぐらい小っちゃい!なんでだろう?テンションが上がる!

俺は子猫の横に定規を立てようとしていた。

「おっと、驚かせちゃ悪いな」

子猫の近くでしゃがんでいた俺は少し距離を取る。

あまり慣れてない人間が近づきすぎるとストレス与えちゃうしな。

数歩進み、子猫のいる方へ振り向くとさっきまでいたはずの場所に子猫の姿は無かった。

「ミャー」

足下からする鳴き声で子猫の居場所を確認する。

「!?」

子猫はそこで俺の足に頭をこすりつけていた。

こいつ人懐っこいな。じゃあちょっと意地悪しちゃおう。

「うりうりうり。ここか?ここがええんか?」

子猫の頭や顎を可能な限りソフトになで回す。

撫でて貰えて嬉しいのかな?目を細めて気持ちよさそうだ。

撫でてるこっちも気持ちいいから良い気分だ。

先生の家で飼っていた猫が産んだ子供の中の一匹で貰い手が来てないって聞いてるけどこんなに可愛いんだからうちに来て貰おうかな?

でも、うち既に猫一匹飼ってるし難しそうだな。結構残念だ。

見た感じ、耳折れだからスコティッシュ・フォールドっぽいな。

スコティッシュ・フォールドほんとすこ。

はっ!すこティッシュ・フォールド!

・・・・くだらねぇ。

毛は薄橙々色うすだいだいいろと茶色の虎柄だ。

毛並みを堪能していると、子猫は撫でている手の人差し指を両前足で捕まえ、噛みつく。

甘噛みなのか、痛みはほとんど無い。

「おう、噛め噛め。本気で噛んでも大丈夫だぞ」

昔、ハムスターに噛まれたときもノーリアクションで放れるまで耐え続け、トマトジュースを出した俺だ。滅多な事じゃ動物相手には怒んねえ。

そんな事を考えていると、手首に子猫がしがみついてきた。

「おう。どうしたどうした?」

どうしたんだろ?エサかな?とにかく歩き回って踏んづけたらダメだし、こうしとくか。

俺は子を抱き上げる。あったけぇ。

「よし。じゃあ行くか・・・・」

こいつの名前聞いて無かったな。うーん、仮でも良いか。

五、六月辺りに生まれたらしいから、誕生石はエメラルド、翡翠ひすい、パールとかだっけ。

安直だけど、ヒスイでいいか。

「よし、お前はヒスイだ。分かったか?」

この顔は分かって無いな。まぁ、可愛いから許す。

一人と一匹の心安らぐ時間はあっという間に流れ、蒼と氷室が入室し、

ぬいぐるみ山から橘先輩が登場していつものメンバーがそろった。

謎多き橘先輩は絶対ぬいぐるみ山から登場することへの疑問が日に日に増してる部長の俺だった。

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