第14話 こんな兄貴はダメなのか?(泣)

どうなってるか分からないが状況確認しよう。

まず、午前は家でまったりしていた。

そして、食事を終えて少ししたら蒼が現れた。

俺は蒼に勉強させて、休憩中のおやつを取りに行き部屋に帰ったら蒼と紗雪が見つめ合っていた。

うん!全然分かんない!

一体、俺の居ない間に何があったんだろう。どうしたら、両者笑顔で緊張感みたいなのが走る状況が生まれたの?

「お・・おーい。お菓子持ってきたぞ」

恐かったから思わず小声になってしまった。

「あっ先輩ありがとうございます」

よ、良かった。蒼はいつもに戻った。これで紗雪も

「・・・」

ダメか。

元の位置に座り直すと、紗雪が後ろから首に抱きついてくる。

「だから、何で抱きつくのかな?」

「良いじゃん別に」

俺の無防備な耳の横にある紗雪の口から可愛らしい声が聞こえる。

それやめろ、すっごいムズムズするから。

!?蒼、今お前やばい目してるぞ。

「はぁ、しょうがないな。蒼、勉強は進んだか?」

「はい、おかげさまで」

「あとで確認もするから頑張れよ」

蒼は普通の顔に戻り、目をそらす。

本当にこいつは来年二年生になれるのかな?

蒼の行く末を心配していると紗雪が俺の頬に指を押しつけてくる。

「何かな妹よ」

「あーん」

うーん。人前とか以前に中二の妹と高二の兄のする行動じゃ無いよ。

こういう時の紗雪は全然聞く耳持たないからなぁ。

適当にチョコを皿から取り、左肩に乗る紗雪の顔あたりに差し出す。

紗雪はパクッとチョコをかじりつく。

耳元から咀嚼音が聞こえ、俺の聴覚を刺激する。

音フェチなら喜ぶかもしれないけど、個人的に気持ちの良い物では無い。

でも、砂粘土を切った時のシャリシャリっていう音は好きだ。

咀嚼音が消えるまで、手元の「こんな時こそ自暴自棄」の第五章「かったい小豆アイスがやめられない!」に視線を合わせ、心を完全に無にしていた。

「本当に放れてくれ」

「いーや」

んー。どうしよう。さっきから暑いし、本読みづらいし、さっきから蒼が今まで見たことの無いような顔でお菓子を食べながら紗雪をにらみつけていて恐いし。

一回部屋から出て考えよう。

「俺ちょっとトイレ行って来るわ」

「あっはい」

「行ってらっしゃい」

二人に見送られ、退室し、閉めたドアに寄りかかる。

「ふぅ。これからどうしたらいいんだ?」

疲れて変な汗かいちゃったな。タオル取ってくるか・・・・。

視線を左に向けると

「よ、よう・・」

何やってんだこの兄貴。

「いつから見てた?」

「最初から」

こいつ、ぶん殴ってやろうかな。

しゃがんでいた拓矢が立ち上がり、右手を壁に付け格好つける。

格好つけてるけど、あんたさっきまで気配消失スキルを最大限に利用して弟の部屋をのぞき見してたダメ人間だぞ。

もう疲れたし、いいや。

「俺ちょっと休んでくるから監視してて、何かあったら俺のスマホに連絡入れて」

これで良いだろう。何かあの二人だけだと危険な感じがする。

俺は拓矢のみぞおちに手刀を入れ、リビングに向かう。

「さてと・・・」

戻ったらどうするか。まず、紗雪を放れさせるか部屋から出て行かせるかしないとやばい雰囲気のままで蒼の勉強どころじゃない。

でも、それをどうするかなんだよな~。

リビングで一人、頭を抱えているとスマホが知らせの音楽を鳴らす。

拓矢からだ。

件名やばい!

俺が部屋から出て行ってから十分しか経っていない。早いよ!

走って部屋に行きドアを開けるとそこには衝撃的な光景が広がっていた。

拓矢がそう思うのも、うなずける。

「ん~」

紗雪は蒼の膝の上に頭を乗せ、笑顔でおっとりとした声をもらす。

蒼は膝の上に乗っている紗雪の頭を優しく撫でている。

雰囲気はさっきとは打って変わり、とてもほのぼのとした和みを感じる。

何があったか知らないけど紗雪が懐いて良かったぁぁ。

この雰囲気を壊してしまうのは悪いし、もう少しだけ出ていよう。

廊下に出ると監視役を頼んでいた兄貴が体育座りでそこにいた。

「紗雪はなんで、俺にだけ懐かないんだ・・・」

拓矢の目には涙が浮かぶ。

その時の俺は、哀れな兄の肩を優しく叩く事しか出来無かった。

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