第13話 こんな妹じゃダメなの?

暑さの増していく夏の昼頃。

前触れもなく蒼が我が家に訪問してきた訳だが、リビングは散らかっているから俺の部屋に招いた。

蒼はその事を伝えると少し戸惑ったがすぐに落ち着き、家に入ってきた。

「で、何で紗雪いんの?」

俺の部屋で正方形テーブルを囲み座布団に座る三人。

蒼は正座をしてこちらをチラチラ見てくる。

俺は氷室以外の女子を部屋に入れた事が無い事により緊張していた。

妹の紗雪は俺の腕にしがみついている。

「えっと、その女の子は・・・」

蒼はぎこちない笑顔で質問をする。

「ああ、こいつは妹の紗雪だ」

「どうも」

「紗雪。この人が俺の後輩の風見 蒼だ」

「どうも」

二人は俺の言葉に合わせて礼をする。

「で、紗雪そろそろ放れてくれ、暑い」

「良いじゃん。エアコンついてるしそんなに暑くないでしょ?」

「いや、確かにそこまで暑くないけどさ。お客さんの前だからさ。な?」

「えー、はーい」

渋々紗雪は俺の腕を解放すると立ち上がり、部屋から出て行く。

蒼は苦笑いでこちらをガン見していた。

「妹さんと仲良いんですね」

「最近、急にあんなになったんだよ。まあ、家族だし嫌われるよりはかなりいいと思ってる」

「そ、そうですね」

「所で逃げてきたって言ってたけど、ここなら勉強しなくてもいいと思っていたのか?」

「・・・」

笑顔でごまかそうとするな。

「勉強しなさい」

「そんなぁ」

いろいろ説得して勉強をするようにうながした。

待ってる間、部屋着のTシャツと短パンで座り、「主人公志望 俺氏」という本を読んでいた。

「先輩の部屋って綺麗ですね」

「なんだ、唐突に?」

「急に私来ちゃったのにすぐに部屋に上げて貰えたので」

蒼は手を休めず疑問を投げかける。

お前あれか?部屋で二人共無言だったりすると気まずくなってしゃべらずにいられない奴か?

そんな事じゃ高レベルの陰キャになれないぞ。

高レベルの陰キャならそんな状況でも一人でスマホや本などを使い、雰囲気関係なく時間を潰そうとするぞ。

完全に俺じゃん。

「基本、整理整頓してるからな。本当はリビングの方が良かったんだけど、今はこっちの方が綺麗だからな」

「そうなんですか。すごいですね」

「すごかねぇよ。俺の家両親が共働きだから自然とこうなったんだよ」

「へぇ」

ポケットのスマホが震え通知を知らせる音楽が流れる。

俺はスマホを取り出して画面を見る。

氷室からだ。

「あなたの所に風見さんが行ってないかしら?」

予測されてんじゃん。ていうか、よく見たら一時に来たメールからこれで三件目だ。

見なかったことにして、時間を確認をすると三時頃だった。

「そろそろ休憩にするか。俺お菓子でも持ってくるから待ってろ」

「はーい」

蒼はテーブルの勉強道具をかたづけ返事する。

部屋から出てドアをしめてすぐにスマホを置いてきた事を思い出しドアを開く。

「・・・えっ」

蒼はベットの下の隙間に手を突っ込んでいた。

俺は無言でドアをしめ、キッチンに向かう。

勉強で疲れているのだろう、甘い物を中心に選んでいこう。

一つの大皿にお菓子をのせ、蒼の待つ部屋に向かう。

ドアを開き中の様子を確認する。

蒼は険悪な雰囲気で紗雪と見つめ合っていた。

ええ?何この状況。

背景に龍と虎が見える。

俺の脳裏にどうしてこうなったという疑問が浮かび、蝉の声にかき消される。

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