第12話 家にいるのはダメですか?
少年少女が心を躍らせ、友人や恋人と遊びに行く夏休みの初日。
昼頃になり昼食を作り始めた。
「今日の昼ご飯なに~?」
「明太子スパゲッティ。もうすぐ出来るから皿出して置いてくれ」
「はーい」
元気良く返事をしてくれて嬉しいな。あいつが中一の去年までは反抗期だったのか全然言う事を聞かなかったけど、今年になり急に素直になった。
なにか裏がありそうだけど、今はこの平和な日常を謳歌しよう。
妹の
「お兄ちゃん。他に手伝う事ある?」
「んー。特にないから休んでていいよ」
「分かった」
紗雪はリビングの方へ向かう。
良く出来た妹だよ、紗雪は。言わなくても手伝ってくれるし、最近はよく代わりに家事してくれるし。
「うわっ!」
「どうした?」
紗雪の視線の先を見ると、そこには眼鏡を掛けた細身の短い黒髪男がリビングのカーペットの上で横になっていた。
「なんだ、兄貴か」
「びっくりさせないでよ!」
週に三回はあるんだよな、こうゆうこと。
別に妹が鈍感で気付かない訳じゃ無い。うちの兄貴が特殊なだけだ。
兄貴の
今みたいに気付かれずに部屋に入ってきたりして、いつの間にかそこにいるということが多い。元々口数が少ないから存在感がない。
兄貴も無意識だと勝手にこうなってしまうらしく悪気はないらしい。
だから、紗雪はつねるのやめてあげて。
「毎回毎回脅かさないでよ!」
「別に脅かしてる訳じゃ」
始まったか。兄妹喧嘩。もう俺に出来る事は昼飯を早く作る事だけだ。
紗雪はなぜか拓矢だけを嫌ってるんだよな。
俺は喧嘩を見ながら黙々と料理をする。
完成したスパゲティをテーブルに置き二人を呼ぶ。
「出来たぞ。早く来い」
二人は喧嘩をやめてテーブルの前に来て、椅子に座る。
「いただきます」
三人で手を合わせ、食事を始める。
拓矢は無言で黙々と食事を口に運ぶ。
紗雪は笑顔で俺に話しかけながら食事を楽しむ。
見慣れた光景だ。
食事が終わり、食器をかたづけていると紗雪が俺に話しかける。
「お兄ちゃん。これから一緒にどこか遊びに行こ!」
「これが終わったらね」
「やった!」
皿洗いする俺の横で紗雪はストレートロングの黒髪を揺らし、両手を挙げて喜ぶ。
今日は部活休んで良かったな。
今頃、部室では氷室先生の勉強地獄が行われてるんだろうな。
蒼には悪いけど、俺はあんな地獄は耐えきれない。
俺なら五分でノックアウトだ。
皿洗いも終わり、出かける準備を始めた頃にインターホンが鳴らされる。
玄関まで行きドアを開けると
「せ、先輩こんにちは」
「・・・お前もしかして、逃げてきたのか?」
制服姿で汗をかく蒼は小さくうなずく。
「まあ、暑いしとにかく入れよ。麦茶ぐらいならだすから」
「すいません」
焼ける程暑い夏の日、予想外の人物が我が家に訪れた。
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