第11話 点数悪いのダメですか?

夏休み前日、成績表の見せ合いの途中。

ソファに面接を受けていると思える程に堅くなって座る蒼とその正面でソファに座る俺と仁王立ちで腕組みをしている氷室。

その全員は真顔でお通夜みたいな暗い雰囲気をかもしだしている。

「酷い結果ね」

氷室の言葉は冷え切っていた。

氷室は昔から成績優秀者で他人がなぜ出来無いか理解出来無い天才タイプだ。

俺も数学、科学だけでは同じ感じだ。

何でみんな出来無いんだろう?

まあ国語、英語とかはテスト前日まで半泣き気味で勉強してるから、あんま人の事言えないんだけどな。

国語の能力は小さい頃どれだけ本を読んだとかで決まるらしいけど、俺は昔から友人がなぜか出来無くて本ばっかり読んでいた覚えがあるのに・・・・・・・何で?

「おいおい、ちょっと言い過ぎだぞ」

「あら、そうかしら?あなたはあれを見てそう思わなかったの?」

「まっまあちょっとは思ったけど・・・」

「そう・・・で本音は?」

「正直、一年でこれは無いと思った」

「やっぱりね」

納得してうなずく氷室は左手に持つ蒼の成績表を見つめる。

蒼自身はさっきから暗い顔で床を見つめている。

どうにかしてあげたいがこれは蒼の自業自得だ。

助けようがない。

「風見さん。あなたはこのままで良いと思っているの?」

「・・・・いいえ」

や、やめてぇ。蒼のライフはマイナスまで来てる!オーバーキル過ぎだ。

こっちにまで被害が来てるからやめて。早く俺に「君の強さは風当たり」

の第四章「教室に吹き荒れる君への轟風」の続きを読ませろ。

「再試まであと三日よ。勉強は進んでるのかしら?」

テスト返しから数日経った今日、成績表が渡された。

さすがに蒼のようなダメな子でも勉強はするだろう。

蒼を横目で見ると冷や汗をかき、遠い目で微笑している。

あっこれは

「やってないのね」

「お前な・・・・」

俺と氷室はまるで箱の中で潰れたケーキを見た時のような悲しい顔になった。

「先輩お願いですぅ!勉強教えてください!」

蒼は俺の腰にしがみつく。

しがみつくな!位置的にダメだから!氷室の方行け!

蒼を引き剥がそうとしていると氷室が呆れてため息をこぼす。

「仕方ないわね、私が教えてあげましょうか?」

「良いんですか!?」

おお、ナイス!

「その代わりびしびしいくから覚悟しなさい」

ああ、覚悟しろよ蒼。こいつのレクチャーはハッキリ言って地獄だ。

「ほら、氷室もこう言ってるし早く離れて勉強しろ」

「えっ?あ、すみません!」

蒼はびっくりしてすごい勢いで手を離す。

今気づいたのかよ。

「まぁ勉強頑張れ。俺は本読んでるから」

「あら?あなたも手伝うのよ。クラス七位さん」

氷室は可愛く小首をかしげる。

「えっ?俺も?」

「えっ先輩頭良いんですか?」

えっバカにしてるんですか?してますよね?というか俺の成績表見たよね。

「あなたが手伝えば私の負担も減るじゃない?」

「俺に拒否権は?」

「ないわ」

だよなー。

その日の部室は雰囲気が最悪だった。

俺はとにかく帰りたかった。

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