第7話 俺が休んじゃダメですか?
夏休み前最後の定期テストも終わり、本格的な夏の暑さが訪れた。
私は今日も部室で先輩を待つ。
ドアが開かれた音に気付いた私はソファからひょっこり顔を出す。
「あら、風見さんこんにちは」
「あ、氷室先輩!」
珍しいな。氷室先輩が部室に来たのなんてパーティー以来だ。
今日は生徒会の仕事は無いのかな?
「久し振りですね。どうぞソファでくつろいで下さい。今お茶入れますから」
「気を遣わなくても良いわよ。もう私もここの部員なんだから」
「気を遣ってる訳じゃありません。先輩の方から氷室先輩は気を遣われるのがあまり好きじゃないって聞いてますし、私がただやりたいだけです」
「そう、ならありがたくいただくわ」
私は氷室先輩の前のテーブルに紅茶とクッキーを置く。
私の方にも同じ物を置き氷室先輩の正面のソファに座る。
「今日は珍しく生徒会の仕事が無くて、よってみたの」
「そうなんですか。いつもお疲れ様です」
最初はどうしていいか分かんなかったけど、パーティーが終わる頃には普通に話せるようになっていて良かった。
「ああ、そういえば今日は悠斗は来られないらしいわ」
「えっ」
「どうやら家の事情で早く帰らなければいけないそうよ」
「そうですか・・」
なんだ・・・。今日先輩来ないんだ・・・。
氷室先輩の言葉を聞き、残念がっていると氷室先輩はちょっと笑って私に話しかける。
「あなた、ずいぶん悠斗を気に入ってるようね」
「ふぇ!?」
「悠斗は幸せ者ね。こんな可愛い後輩に好かれているのだもの」
「あ、あの私は別にせっ先輩の事なんて・・・」
びっくりした!いきなりすぎて、もうっ顔が熱い。
「ふふっ驚かせてしまってごめんなさい。あの悠斗が後輩にしたわれているのが珍しくってつい」
「は、はあ、そうですか」
そういえば先輩、氷川先輩と幼馴染みなんだっけ・・・。
べっ別にうらやましくなんてないし!私には後輩っていうポジションあるし!
「性格の悪い悠斗だけどこれからも仲良くしてあげてね」
「はっはい!」
なんていうか、幼馴染みというよりお母さんみたいだなぁ。
「所で、風見さん。この部活は何をするのかしら?」
「え!?」
知らないで入ってきたの!?
「この部活は個性を伸ばすという活動をしているんです」
「個性を伸ばす?具体的には何をするの?」
「具体的には・・・」
あれ?それらしい事全然してない気がする。ただただ毎日少女漫画を読むか、先輩に遊ばれてるだけで何もしてない。
「何ですかね」
「分からないのね」
「はい」
ああ、質問されたのに質問で返しちゃった。
でも、部長の先輩はいつも本を読んで、副部長の橘先輩はぬいぐるみの山に埋まってて、他の部員が全然来ない謎の部活の説明なんて出来るわけないじゃないですか。
「そういえば、あなたに渡そうと思っていた物があるの」
渡すもの?忘れちゃった課題かな?
氷室先輩は封筒をバックから取り出し、私に渡す。
封筒の口を開いて中身を取り出してみる。
中身は執事服を着てソファに座る先輩とその座っている先輩に膝枕をして貰っている私の写真だった。
また私の顔が熱くなる。
「初めてここに来たとき面白かったから撮って置いたの」
「なっ!何でこれを私に?」
見られてたの!ほんとに!?もう、恥ずかしくて死んじゃいそう。
更に私の顔が熱くなる。
「いつも、あなたはいたずらされてそうだから、仕返しするときの材料にって思って」
こんなの出したら、まず私が恥ずかしさで爆発しちゃうよ!
「いえ・・・べつに・・・・だいじょうぶです」
「そう?でも私が持っていても仕方がないし、一応渡して置くわね」
た・・大切にしよう。
「じゃあ、私は先に帰るわ」
氷室先輩はバックを持って立ち上がり、ドアを開く。
「さようなら。また好きなときに来て下さい」
氷室先輩は柔らかな笑顔でうなずき、部室を去る。
私だけの部室に静寂がやってくる。
先輩のいない部室はどこか寂しげです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます