第2話 後輩で遊んじゃだめですか?
チャイムが鳴り響き、生徒は解放される。
俺はリュックを背負い、部室に向かう。
「ふう」
着いた。ここが学校の憩いの場「
ガラガラと音を立てて俺はドアを開ける。
教室と同じ広さの部室は今日も変わらない。
面積の半分はソファ二つとその間に焦げ茶のテーブル、その下に置かれるカーペット、ここだけ見たら応接室みたいだ。
しかし、残りの面積に置かれるものを見たらそうは思えない。
本棚には小説、参考書、漫画、ライトノベルなどの本とゲームソフトが大量に入っている。テレビにはゲームハードが付けられ、スピーカーが両側のセットされている。
そして、ぬいぐるみの山が部屋の端に存在する。
「なんだ、蒼はまだ来てないのか?」
いつもならソファで赤点課題か少女漫画ではぁはぁ言ってんのに。
他の部員は基本兼部している部員で、基本的には三人で活動している。
俺が部長そしてこのぬいぐるみに埋まっているのが副部長の
「・・・・・」
「あっせっセンパ、イ」
俺は無言で蒼を埋め直す。蒼は「ふぎゅっ」と声を漏らすが、気にせずに続ける。
「ちょっ、なんで埋めるんですか?」
逆になんで埋まってるんですか?ここは副部長の橘先輩の特等席だよ?
なのに違う人がいたらびっくりして埋めたくなっちゃうだろ。
「もうっ先輩のそうゆう所苦手です」
「何でお前そこいんの?」
「よっほっ、えっと橘先輩今日来られないって聞いて一人で寂しかったので」
蒼は抜け出そうと試みるが、諦めたようで赤面しながら答えた。
何でそうなった。と言うか友達いないのに寂しがり屋って・・・。
「はぁ、分かったから早く出て来い」
「・・・結構良い感じにはまって出られません」
俺は無言で蒼を埋め直す。
「だから何で埋めるんですか?」
「いや、なんか哀れで・・・」
「早く出して下さい!」
おお、怒ってる怒ってる。さすがにこれ以上は可哀想だけど、もうちょっと様子を見よう。
「なに黙ってるんですか!」
それにしても珍しいな。蒼がこんなに怒るなんて。
「セ、センパ~イィ」
おっ涙目。あと一分、いや三分は見ていたい。
「あの・・・先輩・・・」
「ん?」
すっごく顔が赤いな。なぜか楽しくなってきたからもう少しこうしていたいんだけど。
「・・・トッ・・・トイ」
「よし!今すぐ出してやる!手ぇ出せ!」
俺は蒼の台詞をぶった切り、蒼の手を引く。
「行ってこい!」
おお!あいつがあんな速く走れているの初めて見た。
数分後、蒼は無事帰ってきた。
「先輩最低です!」
「最低?どうしてかな?」
顔真っ赤で手をブンブン振って、面白いなぁ。
さすがに俺でも最低な行動をしたという事は理解している。でも
「どうしてって決まってます!動けない私を面白いからって放って置いて、先輩はいつもそうです!いつも私をいいおもちゃにして!今日なんてあんなこと言わされそうだったんですよ!」
「・・・確かに俺は面白いからいつもそうしているけど、その大体の原因はお前自身のミスじゃないか。今回だってそうだろ?」
元はと言えばぬいぐるみの山に埋まって動けなくなった蒼自身の責任なのは一目瞭然だ。
でも、さすがにこれは俺の良心が痛む。
「うっ・・・でもっ・・・でもぉ」
あっ泣いちゃった。これだからいじめたくなっちゃうんだよなぁ。
これなら最低と言われても仕方が無いかな?
「ふふっ、嘘だぞ。悪かった!許してくれ!何でもするから!」
いつもかなり酷いことしてるし、何されても文句はいえないしな。
「・・・何でも・・・・じゃあ先輩!」
「なんだ?何でも言ってみろ」
「じゃあ先輩、明日だけ私の執事になって下さい!」
「は?なんて?」
「し・つ・じ!明日の先輩は私だけの執事です!」
「あっはい」
俺の返事はふぬけていた。
ここは「個部」。部員の個性を伸ばす場所。
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