第63話 『トウキョウ』 その6

 わたしたちは、『トウキョウ駅』の構内の壁に現れたようでした。


 『おねえさん、・・・』


 「お、おねえさん? なれなれしい。まあ、いいですけど。この際は。」


 『そりゃ、どうも。じゃあ、おねえさん、ここは、八重洲口と呼ばれます。』


 「はあ・・・あの、なんだか、警報が鳴ってますね。みんな、大急ぎで走ってる。これは、もしかして。」


 ~~『ミサイルが到達します。あと、1分45秒です。ただちに、地下シェルターもしくは、地下鉄構内に避難してください。くりかえします。・・・・』


 『はい~。これが、いわゆる、第1次終末戦争の開始ですね。上手い具合に、その直前に来たみたいです。』


 『うまくないでしょ。あたしたちは、安全?』


 『いえいえ、今は、この次元にハマってますから、まあ、落ちる場所にもよりますが、確か、トウキョウ駅は、直撃されたはずです。迎撃はしくじったことになっております。』


 『じゃあ、逃げなきゃ。』


 『了解。じゃあ、せっかくなので、残念ですが、戻りましょう。この景色は、これでもって、この世から消滅しました。』


 今出てきた壁に、穴が開きはじめましたが・・・。


 身体が入るスキがないくらいで、止まってしまいました。


 『あと、30秒で着弾します。すぐに、避難! 命を守る行動を、各自とりましょう。』


 大きな声が響きわたりります。


 『あららら、とまっちゃった。不調です。先に、近くに落ちた核弾頭の影響がありますな。繊細なもので。よいしょ、おわ。開かない。』


 「あけなさい。巻き込んどいて、お終い、は、ないわよ。」


 『へいへい。ああ、これで、体をねじ込んでください。おねえさん、スリムなんだから。余り、でっぱってもないし。』


 「む。禁句だわ。くそ。ぎわ~~~~~~。なんとか入る・・・」


 『あと、10秒です。非難をしましょう。』


 「あ、はいった。よっしゃ。」


 『移動します。』


 すこしだけ空いていた壁の空間に、何かが転がり込んできました。


 なにやら、衝撃がありました。


 『やはり。直撃ですな。ぎりぎりセーフですが。どこに出るかは、まだ分かりません。』


 「はああ~~~~~?」


 『おおきなエネルギーが作用したので、ほんの少しですが、空間がゆがみましたあ。ほんの少しですよ。宇宙のエネルギーに比べたら、人間が作れるゆがみは、微々たるものですから。それでも、微小なゆがみでも、この空間では、誤差が大きくなります。さっきとは、ちがう時間に出ると思います。あとは、運です。』


 「て、いいますが、・・・この子は、なに?」


 小さな男の子が、紛れ込んでおりましたのです。


 わたくしを、おおきな眼で、見上げておりました。




   ************     ************


                            🚀




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る