第61話 『トウキョウ』その4


 電車は、『トウキョウ駅』の地下ホームに滑り込みました。(どのくらいの地下なんだか、わかるはずもなし。)


 しかし、止まる寸前に、地震に襲われたように、ガタガタと揺れました。


 クッピー・バーストがしゃべりました。


 『次元が変わりました。戦争のまっただなかです。今、核爆発が地上で起こりました。』


 『え~~~~~!』


 『このうえの階は、避難者で溢れています。ここは、遮断されているので、人間は入れないですが、まもなく、幽霊であふれます。降りてくダサい。』


 『なんで?』


 『降りないと、この電車は、この先、次元の狭間に突入して、永遠の旅にでます。それがよければ、どうぞ。〇。北極にも、どこにも、行ける保証はないですけど。お供しますよ。楽しくないとも言えません。』


 『よくないわ。降りましょう。幽霊には、慣れたわ。』


 『おそらく、30分くらいで、ここに、もとの次元が帰ってきます。その時に来た電車に乗れば、OKです。ただ、まぎらわしいのも来ます。多分ね。ぼくにも、判断がつきかねるかも。』


 『じゃあ、どうするの。』


 『うんです。うん。よのなか、うんが90%。実力はせいぜい、10%です。』


 『あそ。』


 私は、電車を降りました。


 し~~~~~ん、としたホームには、誰もいません。


 『もし、勇気があれば、ひとつ上にあがりませんか。』


 『なんのために?』


 『幽霊の誘惑から、あなたを守るため。幽霊さんたちは、こここから電車に乗って、あちこちに去ってゆきます。あなたは、ここでたった一人の生きた人。彼らにとっては、お守りになります。』


 『はあ~~~~~?』


 『彼らにとって、生きた人と同行するのは、幸運のお守りです。』


 『でも、でも、さっきまでは、そういうことではなかったじゃない。』


 『あなたがこの列車に乗ったあとで、出会った幽霊たちは、すでに、生きた人間を虜にしていました。気が付きませんでしたか?まあ、長い間、幽霊にとりつかれていると、幽霊と見た目の差がなくなりますからね。やがて、実際に、幽霊になる。』


 そう言われれば、なんとなく、みんな、ペアみたいな感じがしたことは事実です。


 『ぞ-----。いやあ~~~~~~~。ぜんぜん。あの、キョウトおじさんは?それに、あの、不思議な女性は?』


 『あのおじさんは、単なる変わり種です。あなたは、うんが良かった。ただ、その、女性という人は、わかりません。もしかしたら、あなたを他の幽霊さんから守ったのかもしれません。この空間には、しばしば、変わった方が現れます。たとえば、この空間を作った『女王様』とかね。ならば、あなたは、千載一遇のチャンスを逃したか、得たか、その、どちらかでしょう。彼女は、万能です。それから、あと、その、女王様の双子の妹様とか。そっくりなんですよ。区別は付きません。また、女王様の、しもべたちです。そういう方は、特別です。自由に、この『空間トンネル』が続く限りの、あらゆる空間を行き来できます。ただし、もとの居場所に帰ることは、女王様のお許しがなければ、帰れない。』


 『はあ・・・・・もう、わけわからないわ。もう。むうちゃくちゃ。』


 『まあ、そうです。ここでは、すべての物語や事実が交錯します。ただ、あなたが、目的をはっきりと維持していれば、そう簡単には外れない。ぶれない。しばらく、様子を見てみよう。』


 『はあ。なんだそれは? あなたは、裏切らない?』


 『ぼくは、いつも、裏切らない。ただ、見切りをつけるだけ。』


 『あそ。いいわ、私の目的は、はっきりしている。』


 『ふうん・・・・。あ、きました。核爆発で、突然に命を絶たれた多くの人たちです。被害者さんたちですよ。人によっては、見方が変わって、加害者でもあるけど。かれらには、あなたは、光明に見えます。どうしますか? このままだと、次の電車に連れ込まれます。それが、幸運につながらないとは、言えないですが。上への非常階段は、ここです。』


 ぱかっと、ドアが開きました。


 当然、上がるしかありません。


 私には、やらなければ、ならないことがあるのですから。


 怖いものが見たくないのではない。


 そう、自分に、言い聞かせました。



 ***************   *************** 


                             つづく  







 



 

 





 

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