第55話 『電車』

 私も、電車というものに、入ったのは、初めてです。


 首都の移動は、だいたい、個別可変通行システムですから、なにか、乗り物に乗るのは、空中自動車が主なものです。


 もし、道路を、古風な自動車とかで走ろうとするならば、当局の許可が必要ですし、利用料が掛かります。


 個別可変通行システムといいますものは、自分の足元だけが、独立して移動するシステムです。


 コンピューターが精密に管理するので、他人様とぶつかることは、まず、ありません。


 重力管理システムのおかげで、転ぶこともありません。


 しかも、移動する速度は、平均時速30キロメートルにあたります。


 都心ならば、十分な速度です。


 それにしても、この電車は、もっと早そうです。


 地下鉄なので、風景がわからないのが、残念ですが。


 最大の問題は、どこに、向かって走っているかです。


 私は、がらがらの座席に座りました。


 深呼吸をして、落ち着こうとしました。


 すると、前の座席の背中に、つまり、私の目の前に、スクリーンがひらいたのです。


 『稼働中路線図』


 『なわ、なんと、トウキョウとな‼️』


 核戦争で、壊滅したはずです。


 第一、千キロ以上、離れていますよ‼️


 さらに、『サポロ』、『ナホトカ』、『アンカレジ』『サンフランシスコ』⁉️……………


 うそだろう。


 たしかに、地下ならば、行けたとしても、おかしくは、ないかもしれません。


 ただし、なにも、ないはずです。


 手付かずの、巨大クレーターがあるくらいでしょう。



 ただ…………


 そうなのです。


 これらの路線の、全てが交わる『点』。


 『なんだ、ここは?』



    『空間中央』



 『空間中央』⁉️

 

 

 聞いたこともないです!


 私は、ためしに、そこを、タッチしてみました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 



 


 

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