第54話 『地下鉄』から『異空間鉄道』

 現在、地球上には5つの大ドーム都市があります。


 アジア大陸のド真ん中の、かつてチベット高原と呼ばれていた地域にまず、一つ。


 ここには、大戦争と大自然的破壊を生き抜いたアジアの人たちが、多く集まっています。


 次に、オキナワと呼ばれていた島しょ群と、海洋部に作られた巨大ドーム都市です。


 私の活動拠点は、ここです。


 太平洋地域の人たちが、多く集まります。


 次が、南アメリカのアマゾン地帯に作られたドーム都市です。


 北アメリカの大半は、イエローストーンの巨大破滅的噴火の影響で、生活が非常に͡困難になっていたため、南北アメリカ大陸の人たちの生き残りの人たちは、多くここにあつまっています。


 それから、アフリカ大陸のヴィクトリア湖の沿岸地域に大ドーム都市があります。


 ヨーロッパ・中東・アフリカ地域の人たちは、ここに集結したのです。


 最後が、南極大陸にあります。


 規模は、それほど大きくはありません。


 5大都市の総括をする、世界政府の首都があり、大統領がいます。


 不要な争いが起こらない場所は、ここしかなかったのです。


 このほかに、いくつかの衛星都市が、北欧地域や、ロシアなどにあります。


 地球上の多くの場所は、まだ戦争による放射能汚染がひどい場所もあり、北アメリカの巨大カルデラ噴火の影響もあり、廃墟のままです。


 しかし、これ以外に、謎の都市があるとされているのです。


 その所在地は不明です。


 衛星からの探索でも、まったくつかめない。


 通信も傍受できず、そもそも一切の連絡手段もなく、存在をうかがわせるような具体的な情報は、ないのです。


 ここには、失われた人類の『至宝』や、最高度に達した時代の、たくさんの文化的・科学的情報が残っていると言われていました。


 それは、『新時代』を、ひっくりかえすほどのものかもしれないと。


 しかし、われわれの情報機関は、その存在を確信していました。


 いささか、旧時代のオカルト学派みたいな感じにはなりますが、ごくわずかな、証拠があるからです。


 それは、大壊滅時代に、伝説の科学者である『ウルサ・ゴラス』、本名『アンドレア・ネス』博士が、一団の人々や財宝とともに、いずこにか、消え去ったと言う確かな証拠があること。博士が計画していた『真の都』移住計画の断片データが現存していること。


 協力者が実在した証拠があること。


 そのほか、いくつかの状況証拠から、そうした都市があることは、確実とみられていました。


 しかし、その探索は、現在の地球大統領により、中止されました。


 『あほらし!』


 と、いうのが、その理由です。


 『探して発見したとして、何の役に立つのだろう? 彼らの持っているという技術や情報は、我々の足元にも及ばないだろう。財宝と言って͡も、その多くは失われたのであり、もし、ダヴィンチやピカソを持っていたとして͡も、今の我々には意味がない。また、向こうが援助も求めていないのであるから、我々には、あえて、そこを探す意味はない。』


 彼は、芸術や文化にはあまり興味がない人です。


 これは、膨大な放射性物質や、環境の変化などにより、人類の脳の構造にある種の変化があることが分かっていて、旧時代の芸術や文化には、あまり関心を示さない人類が多くなった結果でもありました。


 彼は、新人類の代表者です。


 しかし、我が都市のボスは、探索賛成派でした。


 彼は、いささか、悪く言えば、古い時代の、夢見る指導者でしたから。


 あえて、世界大統領の選挙演説の言葉を借りて言えば、『大きな戦乱を起こした、妄想的人類の生き残り』、なのです。


 まあ、私は、どちらと言えば、あの、彼の、アンドロイド補助者なんかとは違う、妄想派人類なのです。


 ですから、大々的な予算は、もちろん取れず、大きな動きも不可能です。

 

 それは、スパイの活動領域です。


 私は、『機会が来たら』、いつでも、『ひとり』で、旅立つように、わがボスからの、秘密指示をもらっていたのです。


 個人的には、『モナ・リザ』よりは、『死の島』の本物を見てみたいと思っております。



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