第52話 『移動』

 その瞬間、くびが落ちたのです。


 ぽろと。


「うあ!」


 そりゃあ、びっくりして、普通でしょう。


 しかし、その落ちた首を、会長さんがキャッチしたのです。


「もう、お年なんで、体の方は動かないんですよ。それで、移動するときは、くびだけをこうして抱えてゆくのです。」


「どう考えても、普通ではないと思いますが。」


「まあ、でも、ここでは、これで普通です。だって、アンドロイドのようなものですよ。」


「まあ、そういわれたら、たしかに、普通ですけど。」


「そうでしょうとも。じゃあ、行きましょう。ええと、大将、どうしたらいいの?」


「あ~~~。あ~~~~。うん。大丈夫だ。ああ、そこのデスクの上のコンピューター端末に行ってください。ないしょのおまじないをするから、耳もとに首を持って行ってくだされ。ごしょごしょ・・・・・・・」


 会長さんは、大きなデスクに寄り掛かりながら、パソコンのキーを不慣れな感じでいじったのです。


 すると、床下の一部が、す=っと平行移動しました。


 その下には、古典的な階段があったのです。


「そこから、降りてください。あとは、地下駅まで続いている。地下鉄ですよ。おお昔に作られたもんだ。ロボットが管理していてね、まだ、ちゃんと動くんはずなんだ。首都の駅はすべて閉鎖され、入口もなくなっている。立ち入り禁止地区のことは、よくわからん。でも、すごいだろう。じゃあ、行きましょう。ただし、いいですか、行く先は、非常に危険だ。私も乗ったことはないんだ。生きて帰れるとは思えなかったんでね。まあ、きっと、よほど気をつけないと、無事には帰れないでしょうなあ。ほほ、はははははは。」


 気持ち悪い笑い声を抱えながら、私と、会長さんは、そのくびと共に、地下に降りて行きました。



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