第51話 『天守』
わたくしは、もう一回、さきほどまでは、天高くそびえていた天守閣で、いまは、平屋のお家になってしまった、最上階部の玄関をくぐりました。
見た目よりも広く、両側に部屋のドアらしきものが4つあります。
さらに、一番奥側に、彫刻を施された、格段にりっぱなドアがどかんと鎮座しています。
「どうぞ。」
そちらから、声がしました。
わたくし、慎重に銃を構え、ドアを開けたのです。
満面笑みを浮かべたおじいさんが、真正面に一人。
そのとなりには、・・・・なんと、あの会長さんが、照れくさそうに、頭をかきながら、立っています。
まったく、無傷と言う感じです。
わたくしは、『騙された~~~~!』
という感情が込みあがってきましたが、職業柄、ぐっと抑えたままにしました。
「わははははははははああああ! よく、来ましたね。りっぱ、りっぱ。」
その老人が、おお笑いしながら言いました。
わたくしは、それでも、少しはむっとしたように言いかえしましたのです。
「あなたがたは、最初から、あたくしをバカにしていたのですか?」
会長さんが、言い訳がましく答えましたのです。
「いやあ、バカになんかしてないです。むしろ、恐れていたんです。あなたをね。政府隠密と見るのが普通でしょう? 確認に、手間取りましたが、まあ、あなたが、ごたごたを起こして脱出したのは間違いがなく、しかも、連中に掴まったら、危ない身だと言う事は間違いがないと、分かりましたよ。」
ぞろぞろと、忍者たちが、奥のドアから現れました。
「みな、名優ばかりですよ。ま、それに・・・」
老人が言います。
「それに、みな、人間とは言えないからな。」
「は? なんですか、それ。人間とは言えない?」
「そ。まあ、古くに言われた、ゾンビーとか、キョンシーとか、化け物とか、そういう類ですな。あんたがたの政府が、ひた隠しにしてきていたんだ。しかも、知ってるのは、ごく少数の『カンダナラムン結社』のメンバーだけ。たとえば・・・」
「た、たとえば?」
「あんたがたの首相さん。あれも、まあ、人間ではないがね。」
「え~~!? ありえないわよ。あれだけ、就任時にはいわゆる身体検査をしているのに。」
「だって、簡単じゃないか。主任医師が味方ならば、問題ないさ。」
「ぶ!」
「あんたのご主人は、第10資源惑星だろう?」
「え? なんで?」
「いい、いい。秘密なんだろ。まあ、筒抜けってやつさ。でも、あんたのご主人は、いまはもう、別人だよ。」
「はあ??? どいう意味ですか?」
「完全性転換と洗脳とをされて、ハレムの女になってるからさ。あんたのことは、覚えてないよ。あんた、助ける気があるかな? もうすぐ、子供も産むだろう。元に戻すのは至難の業だがね。あれだって、考え出したのは・・・」
会長さんが首を横に振った。
「あはははは。いやあ、失礼。しゃべり過ぎたかなあ。まあ、刺激的でいいじゃないか。」
「助けるには、どうしろと?」
わたくしは、しろとではありません。
冷静沈着が信念ですから。
夫が、ほかの男に抱かれて、子供を産む?
くそ。ありえないことはない。
そういう技術が、すでにあったことは知ってる。
ただ、違法である。
そうして、その秘術は、とうに、捨てられたはずだ。
「まあ、あんたが行こうとしてる王国には、その技術を覆す技術があるらしい。教えてあげよう。行き方は簡単さ。古典的な方法だからね。」
「でも、ボス、それって、動くのかい? 永い間、封印されていたような。あなたが、その鍵を持ってることは知っていたが。整備もしてないんだろう?」
「そうさね。まあ、途中で埋没してるかもしれないなあ。なら、そこでお陀仏さんだよな。どうする?危険はあるが、行ってみるかい? 連中は、どうやら食人の習慣もあるとかいう伝説も、あるある。あるる、だけどね。」
「時間が、どっちにしてもないんです。なんだよく、からくりが、まだ、わからないけど、それ以上は教える気はないんでしょう?」
「まあね。それに、我々もすべて知ってるわけじゃあない。まあ、あんたは、ここまで来た、その報酬だよ。あんたが初めてだ。さあ、きたまえ。」
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