第19話 『探索』 その2

 いよいよ、『森』に入る当日、ぼくは、寮母さんにお願いして、日本流のおにぎりとお漬物の入った、『お弁当』を作ってもらった。


 なんと、水筒には飲料水と、お味噌汁を一緒に入れてくれたのである。


 一本の水筒に、両方たっぷりと入る優れモノである。


「いてきます。」


 ぼくは、朝9時には出発した。


 『森』の近くまでは、例の『動く歩道』で行くことが可能だった。


 まず、森の近隣の「ステーション」を出る時に、パスの提示を要求された。


 落としておいたデータの入った『社員証』をかざすと、通路がふわっと空いた。


 それから、なかなかよい雰囲気の歩行通路を500メートほど歩く。


 透き通った天井の向こうの空は、宇宙空間で、完璧に真っ暗である。


 通路自体は、淡い光で足元から軽く照らされている。


 つまり、決まりとしては、いま午前9時すぎだが、事実上は、夜なのである。


 やがて、『森』の入口が見えてきた。


 巨大なドームに囲まれた人口の森である。


  **   **   **


 しかし、ぼくはそこに、ひとりの人物がたたずんでいるのを見た。


「あらら・・・・・あれは、もしかして、社長さんかな・・・・・」


 そうなのだ。


 それは、紛れもない、社長ご自身の、お姿であった。



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