第17話 『もうひとつの到着』

 私は、他のアンドロイドやロボット数人とともに、目標である『第十資源小惑星』に到着しました。


 データインプット端子から、必要なデータや指示はもらうので、とくに説明とか見学とかという、面倒くさいものは一切ありません。


 まあ、私の『被保護者』は、そうしたことがらに時間を取られているに違いありませんが。


 そうは言っても、脳に人間の部分がある私は、無神経なロボットたちよりは、ずっと繊細で、感受性が高いのです。


 実を言うと、私の体は、ここに赴任するに当たって、女性形態に入れ替えられましたのですが、脳自体、もともと女性の脳でした。


 もちろん、不要な記憶は削除され、個別の思考形態や、さまざまな嗜好などについては、中性化されてはいるのですが、多少昔の人間時代の面影が、まあ、まったくないとは言えないのです。


 それは、『技術』というものは、まだ完全に脳を解明しているわけではないということでもありますが。


 人類が滅亡しかける前は、倫理的な面から、私のような存在は認められなかったでしょうが、人類存続のためにも、各種非常に危険な作業現場において、ロボットとと、人間をつなぐ、こうしたアンドロイドの存在は貴重なものとなったのです。


 しかし、私が持つ人間の面影というものは、それは、まるでかけらのようなもので、とくに作戦行動に、影響はないはずでした。


 ただ、たとえば、あまりに雑然とした不衛生な環境には身を置きたくはない、と言うようなとこととか、好きなお酒の銘柄とか、いくらかロボットには無い意識が残ってはいたのです。



  ***   ***   ***



 で、到着してすぐ、私は、鉱山の最深部に配属されたのです。


 おかげさまで、『被保護者』と直接接触する機会は、まだ当分は得られません。


 それはそれで、良い訳です。


 私は、気にしませんが、相手が必要以上に意識してしまう危険性もあるのです。


 特に彼は、少しお人好しですから。



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