第12話 『詰所』
それから、ぼくは、地下の『詰所』に回った。
たしかに、ここは大きい。
三交代で、現場に出る。
次番の人たちは、いささか早めにやって来て、ここで待機休憩している。
体調が悪くなった時の、救護所もある。
地球との公衆電話も用意されている。
アンドロイドやロボットには、別室が割り当てられているのだそうだ。
これは、余計なトラブルを避ける意味もあった。
と、いうことなので、現在も30人ばかりの人が、寝そべったりテレビを見たり、ゲームをしたり、音楽を聴いたり、思い思いの事をしている。
テレビと言っても、中継はないので、ちょっと古い番組が地球から送られてくる。
それでも、一週間遅れ位なので、ニュース以外は結構実用的である。
重要な臨時ニュースの時だけは、特別な回線を通して、早めに配信されるのだと言う。
滅多にはない、とのことだが。
ぼくは、そこに、いまいる人だけに挨拶した。
そうして、いよいよ採掘の最前線を見学するために、さらに深く降りて行った。
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これも、ぼくには、今は見えていない場所。
三交代の、勤務明けの人は地上に上がる。
寮の自室に戻ることもできるが、ひとまず、歓楽街に赴く者も多いのだ。ふ
だから、ここには、それなりの飲み屋街などもある。
高級クラブから、場末の酒場、映画館、演奏会場、公認とばく場、など、いろいろあるのだ。
ここの従業員も、ミス・カンプの会社の社員である。
ただし、別会社であることが多い。
うれしい事に、お代は一切払わなくてよい。
すべて、会社持ちである。
もっとも、不公平が出ては良くない事から、最高額は決められていて、使わなかった人には返還される。
位が高い人ほど、使える金額が大きくなるのは、理の当然と言うものである。
問題は、歓楽街には、ある種秘密の場所があることだ。
そこは、一定の成績を上げた(といっても、ハードルはそう高くない。皆勤賞でも合格となるし、皆勤じゃなくても、一定の成績以上なら合格になる。このあたりの設定は、重要な事柄だった。時には、条件がぐっと下がる期間もあるらしい。)人だけに利用許可が出る。
その場所は『星の館』と言われる場所である。
ぼくは、入社初日の見学後の個人ミーティングで、その存在を告げられていた。
しかし、何が実際にあるのかは、しばらくは、『お楽しみ』ということにされたのである。
まあ、想像は出来るような気がした。
それこそが、作業員たち最大の息抜きの場であることは、明らかだったからである。
また、そこに、ぼくが突き止めたい問題が隠されているのだろうことも、直感していた。
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