第11話 『保護者』その1
ぼくの保護者は、相方の出発を見送り、さらにいくらかの準備をしたのである。
そうして、相方(つまり、ぼく。)とは全く関係がない、アンドロイド労働者として、ミス・カンプの持つ別会社の求人に応募し、まあ、問題なく合格した。
ここらあたりは、人間よりアンドロイドの方が、ずっと融通が利く。
彼が応募したのは、鉱山の最深部で活動するロボット労働者の補助作業だった。
アンドロイドは、ロボットと違って、人間の感情とか、勘とか、疑いとか、悲しみとか、喜びとか、そうした感情面の理解が良く出来る。
まあ、ロボットと人間の間の橋渡しみたいなものだ。
危険が伴う作業現場では、必要性が高いと言われる。
なので、労働法規でも、ロボット20体に対して、アンドロイドひとりの配置が義務づけられている。
もっとも、当然ながら今回の彼の主任務は、ぼくの保護と監視、また危機に陥った場合の救出、その他、である。
その他というのは、あまりあって欲しくない事柄で、要するに、ぼく自身を廃棄することであるけれど。
準備完了した彼は、ぼくよりも3日ほど遅れて、地球を飛び立ったのである。
***** *****
見学の続きは、なかなか興味深く面白いものだった。
人間労働者が詰めている『詰所』は、この星の鉱山内に多数設置されている。
後から確認したところで、45か所もあるのだ。
ひとつの『詰所』には、大まかに言って、人間が100人から150人は入っているらしい。
なので、これだけで、けっこう5000人以上の人間がいるわけだ。
しかし、どうやら、それだけではないらしい。
これは、会計処理をやり始めると、いろいろと分かってくるところがあり、どうもばらばらの情報を総合すると、こうした『現場』ではない、他の『現場』があるらしいことは、間違いが無いと思われてきたのだ。
そこのところは、おいおい話をしたいと思う。
この、レアメタルの採掘現場では、先端部に最新鋭の採掘ロボットが投入されている。巨大な生きた機械と言ってよい。
先端部は深く地中に入り込んでいるが、反対のしっぽ側には大きな顔があって、人間やアンドロイドと自由に会話ができる。
まあ、チェシヤ猫みたいな感じである。
『新しい鉱脈に到達しました。推定埋蔵量データ表示します。
と、採掘ロボットが普通にしゃべった。
「ああ、了解。じゃあ、試しにちょっと掘ってみよう。ええと、深さ50センチメートルで、周囲5メートルを掘って。」
これは、アンドロイド技師なのだそうだ。
人間たちは、その10メートルくらい後方で、壁面の観測や、地盤の調査、データの確認、その他、いろいろやってるんだそうである。
しかし、これも、だんだんわかってきたのだが、最先端部の先に入っている人間たちがいたのだ。彼らは、先進抗を掘る。ロボットと人間とアンドロイドが、相乗りで作業しているのだ。
ここは、実は一番危険な作業で、しかも、即座の判断が必要でもあり、人間はどうしても必要なものらしい。
早く言えば、人間が一番、危険に対して敏感なんだそうである。
もちろん、ぼくは、そこまで入ることは出来ないが。
*** *** ***
とにもかくにも、この日の見学は無事に終了し、ぼくは出発地点にまで、引き返していた。
彼女は最後まで案内してくれた。
工場長は、要所要所で、口をはさむ程度だったが、要領は抜群によかったのである。
ときに、ぼくには、いささか疑問が沸いていた。難しいことではない。
ここには、何人女性が働いているのだろうか?
作業服だと、ちょっと判断がしにくいけれど。
しかし、労働法規から言えば、男女平等の原則の範囲内において、集中管理室以外の現場作業には一定の規制がある。
「あの、工場長さん、この現場にも女性はどのくらい入っているのですか?」
「集中作業室に、5人程度だな。あとは、構内作業には規制があるし、まあ、なんせ辺境の小惑星だしねぇ。希望者もあまりないし、実際、現場にはほとんど出てないよ。」
「ふうん・・・・会社全体ではどうなのでしょうか?」
「まあ、あとで、パンフとか渡すと思うが、事務系職員が10人ほどだね。」
「あと残りは・・・」
「みんな男だよね。当然。」
「なるほど・・・」
それはしかし、つまり、会社側はどのように社員の精神的安定を図っているのかは、いささか興味のあるところだった。
これは、実のところ、どの資源惑星も同じような問題を抱えているのだ。
「ま、君は経理担当だから、あまり関わらないだろうけど、総務の手伝いとかはあるかもしれない。十分注意しながらやってくださいよ。ぼくには、そうとしか言えないけども・・・」
「はあ・・・・」
工場長は、明らかに、何かについて、ぼくに慎重に対応するように促したいらしかった。
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