第6話 『出発』 その4

 なかなか、複雑な会計データだったが、それでも、ぼくにとっては朝飯前というところである。


「あの、できました。」


「は? もう? できたの? 1時間も経ってない。」


 社長は、うれしそうに呆れた。


 それから、データをチェックに掛けた。


「ううん・・・すごいな。よく出来ました。合格! 送り返しなし!」


「送り返し?ですか?」


「そうそう、あっちの空港に着いたら送り返すの。地球にね。まあ、楽しい旅行の思い出と共にね。でも、あなたは、それはなし。1時間以内で解いた人は初めてだし。よかったわね。お給料、10%アップね。」


「はあ?????」


 そりゃあ、もとから10%ダウンで言ってたんだろう、とも思ったが。


 しかし、まあ、良い事には違いがない。


 これで、不適正事例が何もなければ、言うことなしなんだがな。


 まあ、そう、うまくはゆくまい。


 と、思うぼくであった。


 その後の飛行は順調だった。


 コースの都合上、火星はスルーとなったが、幸いにして、木星と土星のドアップを目にしながら、ぼくらは太陽系辺境の小惑星に向かったのだ。



 ************   ************





 

 










 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る