第25話 F-15 ルーちゃんのお説教

「ナツキ~? 一緒に行こうって私いったよね? フレンドサーチかけたら、この場所ってどういうことなのかなぁー」


 ルーちゃんはにこ~~っと笑ってるけれど、目が笑っていない。


「え………えと、先に洗礼済ませておいたほうがいいかと思って。戦闘は一緒にいくつもりだったよ!!」

「一緒にいこうってのは、そういう意味じゃなかったんだけど、まぁいいや。それよりもなんだ? つながるって。この間ノエルに聞いたら、プライバシーがどうのこうのって教えてくれないしさ」

「………それは」

「ん~~??」


 ううっ、ルーちゃんの視線が痛い。思わず目が泳いでしまう。素直に、言って信じてくれる事だろうか。


「繋がるというのは──心の中がみえるっていうか」

 と説明すると案の定、ルーちゃんは目を点にして固まった。


 だよね。やっぱり信じられないよね。


「わかる? 一体どうやって」

 

 それは、頭部を接触させて……なんて恥ずかしくて言えない。



「さぁ?? なんかノエルの能力みたいなの。BCIGをつかうみたいなんだけど」


 私の具体性に欠ける説明に、ルーちゃんはますます困惑した顔をしながら、視線をノエルのほうに向ける。


「ノエル……一体どういう事なんだ。まさか、ナツキ以外のプレイヤーの心の声とかも聞こうと思えばできる? のか?」


 ルーちゃんはそういうとゴクリとつばを飲み込み、ノエルから数歩距離をとった。


「やれたとしても断る。精神を繋げるには、波長を合わせないとダメだし、相性も高くないといけない。疲れる上に、マスター以外となんて吐き気がするし苦痛だよ」

 

 ノエルが真顔説明する横で、ルーちゃんの顔がさらに引きつる。


「ノエル……お前ってそういう設定? ヤンデルかんじの」


「設定? 僕は病気ではないよ」


「いやそういう意味ではなくてだな。はぁ……なんか違う意味でぶっとんでるなお前…………」


 ルーちゃんはため息をつくと眉間に皺をよせる。


「まぁ、ノエル、本当かどうかはさておき、ナツキの心の中を見る行為はやめろ。絶対にだ」

 

 ルーちゃんのドスのきいた声に、ノエルは無言のまま返事をしない。暫く二人は無言のままにらみ合っていたが、途中からゴニョゴニョと何やら二人で話しだした。しかも妙にコソコソした感じだ。


 ……お~い。


 と若干ボッチにされて私がいじけ始めた頃、ノエルが何やら渋々、納得したかのようにルーちゃんを見て頷いた。


「という事で、ナツキ。ノエルに心の中を見ないと確約させたから、安心しろ」と言って、ルーちゃんはにっこり笑う。何だかわからないが二人の間で何かが、解決したらしい。ノエルとルーちゃんって、仲があまり良くないように見えて本当は仲良しなのかな。


「うん……でもどうやって確約させたの?」

「男同士の友情で、それは秘密だ! なぁ~ノエル」


 そういってルーちゃんは、ぎこちなく私から視線を外すと「じゃあなぁ~」とログアウトしてしまった。

 

 ──怪しい。


 ノエルに聞いても「ギブ&テイクってやつだよマスター。友情なんてものは全く存在しない」と答えるだけで詳細について、話してくれない。めげずに聞いても「もう寝る時間だよ」と話をそらされ、強制的にその話題は終了されてしまった。ルーちゃんも逃げるように慌てて、ログアウトしてしまったし……怪しい。




「ね、ノエル、さっきのは一体どうい

「マスター、そろそろ寝ないとダメだよ。1時には寝ると言ってたよね?」


 と、やや強引にノエルはログアウトさせようとする。


「でも、ピエロの事が……」

「その事はちゃんと考えているっていったよ?」

「でも、一体どうするつもりなの?」

「任せてくれればいいって、言ったよね?」


 そう言われても……。


 私だって何か力になりたいのに。何もできないって思われるのは仕方ないとしても詳細ぐらい言ってくれたって。


「では、マスター、初動位置セーブポイントはここに訂正されるから覚えておいて。僕はこの村で待機してる。ログインするのを待ってるよ」


「ノエル、………でも、大丈夫? 一人で怖くない? 私がいない間にピエロがなにかしてきたら……」


 私の言葉にノエルは、とまどうような顔をしたが、首を横にふる。


「───僕は大丈夫。だからちゃんと寝るんだ」

「……わかった」


 私は未練がましくノエルを見つめながら、ログアウトするイメージをする。


 あぁ……なんだか心配だ。








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