第11-1 FL-1 ルーフェスとの約束 (ルーフェス視点)

「あわわわわ・・・・ノエル・・とルーちゃんが。あわわっ」


 夏樹が遠い方向を見て、現実逃避しているのをいいことに、ルーフェスはノエルに、「スクリーンショット、撮ってもいいでしょ?」と声を掛け、ナツキの傍から引き離した。

 

 ルーフェスは、夏樹の様子を窺いながら、ノエルと軽く肩をくむ。本当は二人でスクリーンショットを撮ろうと声を掛けたときにこっそり聞くつもりだったが、ノエルがルーフェスの提案に乗ってくれたおかげで、夏樹の意識がそれて、かえって好都合になった。


 もしかしたら同性と肩を組む行為にノエルが嫌がる素振りをみせるのでは? と一瞬懸念したが、NPCに性的概念があるはずもない。案の定、ノエルは動じる事もなく、ただ、されるがままに肩を組んでくれる。


「なぁ、ノエル、スクリーンショットを撮るついでに聞きたい事があるんだが‥‥」

「なに?」

「──お前、本当にNPCなの?」


 ルーフェスは、すごんだ目でノエルの瞳をのぞき込んだが、彼の瞳は何ら感情がうごめくような素振りはない。


「僕は、NPCだよ。なんなら、マスターに頼んで僕のステータスを見せてもらう?」


「いや……今はいい。変な勘繰りをいれてナツキを不安にさせたくない。にしてもお前、話し方が初期から流暢すぎないか?」


「そうなの? よくわからないけれど。不審に思うのなら、運営に報告すればいい」


 ノエルの言葉に、ルーフェスはしばらく考え混むかのように黙っていたが、軽くため息をつくと、首を横に振った。


「いや、報告してお前が消されたりしたら、ナツキが悲しむからな。だが、監視はさせてもらう」

「別に構わないよ。僕はマスターが困るような事は絶対にしない」

「その言葉、わすれんなよ」


 ノエルはルーフェスの言葉を聞くと首肯する。


 彼の反応に満足すると、「それじゃ、お話は終わり、本番行こうか?」と、ノエルを自分のほうに引き寄せた。


「あぁ。そういえば、スクリーンショット撮るんだった。」


 ルーフェスに引き寄せられたノエルは、無表情のまま、そう呟く。


「お前・・ナツキの前では、変に、にこにこしていたくせに、俺の前だと無表情だな」

「マスターは僕が笑うと、嬉しそうにする‥‥でも君は僕のマスターでないからどうでもいい」

「こわっ」

「怖い? 君にわざわざ表情を変化させるなんて無駄では? ───表情といえば、写真を撮った時のマスターの顔は凄く興味深かった。たしか……初めて会った時もあんなふうに」

「……いや、お前まじ引くからそれ」

「ひく? 何を?」

「まぁいいや……。取りあえず俺をナツキだ! って思って一緒に撮ってくれ。その写真を後でナツキにも見せるから。きっと喜ぶぞ……たぶん」

「ふぅん。まぁ、マスターが喜ぶならいい。さっさと終わらせてよ」


 ノエルはよく分からないという顔をしながらもすんなり頷いた。


「ふふふ、色々と創作意欲がわいてくるわ。それにあの噂が本当なら‥‥」


 ルーフェスは、ニヤリと口角を釣り上げると、夏樹が正気に戻るまで、欲望の赴くまま自由にスクリーンショットを撮ったのだった。

















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