第11話 F-4 ルーフェス
にかっと笑う姿は、何となくちょっと意地悪っぽい。
でも中の人がルーちゃんのせいか頼れるお兄ちゃんって感じがする。
褐色の肌に猫のような金のつり眼、猫っ毛気質のはねた銀髪に黒い猫の耳としっぽ。しっぽは感情によって動くのか垂直にピーンと立っている。うん、間違いない。裕孝君の憧れているルーフェスはルーちゃんの事だ。暗くて耳としっぽまでは見えなかったけれど顔つきと髪の色が一緒だし。
「ははっ、ナツキの外見は、いつもそれだな。しかも今回はリアルと同じでちっこい! 可愛い~」
「むぐっ……るっ、ルーちゃん!!」
突然抱きしめられ息が止まりそうになる。 しかも抱擁されてる感触に加え、体温まで。
どうなってるの! すごすぎるでしょ、BCIG。中の人がルーちゃんとわかっていても、男性の姿だし、なんかドキドキしちゃうよ。
「タローの奴が急用でこれなくなって良かったよ。嫁をハグするのは俺の役目だよな~」
と、調子にのったルーちゃんは抱擁の手を全く緩めてくれない。
完全にセクハラだ。
「もうっ、嫁とセクハラ発言は禁止っ」
「えーーきこえなーい」
「ぐぅぅ。はーなーれーてーー」
「マスターから離れて!! 迷惑行為を続けるのなら通報するよ!」
ノエルは敵意をむき出しにして、ルーちゃんを睨み付ける。
「待ってノエル! この人は私の友達!」
「……ともだち?」
「うん、私の友人のルーフェス」
慌ててルーちゃんの腕から抜け出しながら言う。
「うぇっ、なんだこれ? いつの間にいたんだ?」
これ? あぁ、ノエルの事か。傍にいたから気が付いていると思ったのに。
「ノエルだよ。私のアシストNPCになってくれたんだ」
「…………」
ふふ‥‥ルーちゃん、分るよ。ノエルは綺麗だもんね。私も初めて見たとき見とれたもの。
「ナツキ……どこで拾った?」
「え? 拾っ? ここで会って仲間になってくれたんだよ」
あれ? アシストNPCのチュートリアルって同じじゃないの? キャラクターによって違うのかな? たしか初期位置も私とルーちゃんは違ったみたいだし。
「Oβ時に即座に消されたんじゃなかったんだ」
え……消された?
「ルーちゃん、それってどういう
「ナぁーーツキーー! どうやって出現させたの! 初期アシストNPCはランダムだけど、もしかして出現条件があるのかしら!? 初期位置が変だからおかしいなぁとは思っていたんだけど、あぁ! ねぇ! ナツキ! この子、私に売ってちょうだい! お願い。ナツキの成長用にNPCを一体、あげようと思ってたんだけど、私がもってるの全部あげてもいい! それともレア武器と交換する? どうする? ねぇねぇ!」
「だだだっ、ダメ! ノエルは売り物じゃないよ! そういう言葉をノエルに使うの禁止!」
怒鳴ると、ルーちゃんはションボリとしっぽをたらした。
「ナツキが‥‥タローみたいなことを。いや、私もナツキの立場だったらレアNPCをそうそう簡単に手放さないわよね。ごめんね」
「……うん」
というか、さっきから口調がオネェみたいで、なんか怖い。
「でも、一つお願いがあるんだけど」
「何?」
どうしたんだろう? かなり真面目な顔だ。深刻なお願いなのだろうか。
「ノエルと絡みながらスクショ(スクリーンショットの略)を撮りたい」
「は!?」
絡むって、健全な青年になにを?
「ナツキのスクショとったついでに、ね?」
「なっ、なに勝手に撮ってんの?!」
「ダメ?」
「絶対にダメ!」
「そ‥‥そんな‥‥親友のささやかな望みを」
いや‥‥なにそれ、私が悪いみたいな言い方。
「駄目っ。ノエルは無垢なんだから」
「ぇ~。ナツキーわかってないなぁ。無垢な感じを汚すのがいいんだろ?」
妙に色のある声でニヤリとルーちゃんは笑う。
うっ、やめて。その顔と声でその台詞をいわないで。なんか変な気分になるっ。
「マスター、僕はかまわないよ」
「え、いやそうじゃなくって」
そんな助け船は駄目。逆効果だ。
「やったー! ノエルのお許しがでたんなら、いいよな! ナツキ! じゃ、まず肩とか組んで写真とろう!」
「ちょっ、まっ──
「わかった。撮るなら光の当り具合からこの位置がいいかな。でも肩を組むというなら、身長差があるからかがんでもらう必要があるけど」
「…………」
「?? ルーフェスさん? 聞いてる?」
ノエルは淡々と写真を撮る為の話を進める横で、先程までやる気満々だったルーちゃんが固まっている。
「レアNPCだから? 会話知能の伸が異常にはやい気が‥‥タローのアシストNPCといい勝負だぞ」
「気のせいだよ。それよりもさっさと済ませよう」
「えっ!! ちょっとノエル! 本当にとるの?」
絶対に絡むの意味わかってないよね?
「大丈夫だよ。マスター。彼が僕に危害を加える様子はないし」
「いや、そういう意味じゃなくて!!」
私の制止の言葉も空しく、二人は軽く肩を組み始める。
まってと、二人の傍に行こうとしたら、何故か足元がフラフラして真っすぐに歩けない。
どうなってんのっ。
「マスター?……あぁそうか」
見かねたのか、ノエルが私の手をとり、ぐっと自分のほうに引き寄せてくれる。
ほ……よかった。こけるかとおも
「ルーフェスさん、マスターも加わりたいらしい」
え?!!!
「なんだよ。だったら言えばいいのにっ」
「いや、ちが
「身長差から考えて、マスターを真ん中に、三人肩を組んで撮るとバランスがとれていいのかな」
「ほぅ。逆ハーレム! いいなっ、それはそれで萌える。二人で抱きしめる感じでとるぞ! ノエル! ナツキに微笑みかける感じで頼むぞ!」
「? うん。いいよ。はやく終わらせよう」
「ちょっ」
どうしてそういう方向に?!
その後、二人に抱きしめられる形で写真を撮られた私は、しばらく遠い世界にいってしまった。
免疫ない自分が悲しい。
そして私が固まっている事をいいことに、その後ルーちゃんはノエルと二人で仲良く写真をとっていた。
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