第2話 R-2 キャラクター作成
金曜日、バイトから帰宅すると、私の居場所がわかっているのだろうか・・ルーちゃんから、メールの着信音がなった。ちょっと怖い。
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『今からログインできる? 夏樹。まさかダウンロードしてないって事はないよね?』
『え? 黒い眼鏡をつけたらできるんじゃないの?』
『Σ(・□・;)。ゲームデーターはPCにダウンロートしてからでないと使えないよ? BCIGはコンピューターを介して使うBMIだから。キャラとか作ってからつけてね。──って説明書をよんでないでしょ?』
『うっ……よんでない。ダウンロードがてら風呂とか先に入ってていい?』
『了解! 後でさそうよ。終わったら携帯に電話して。紹介アイテムのフレンドコード入力をわすれないでよ!』
『うん。わかった』
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ルーちゃんってば、楽しみにしてたんだなぁ‥‥。
私はルーちゃんが置いて行った、机上の黒い機器をみてため息をつく。
BCIGを無償で借りる事が出来たとはいえ、高価なものを置いていくなんて庶民思考の私からみたら考えられない。
まぁ、一度このグラス使ってみたいと思っていたので、その点は楽しみではあるけど。
科学知識なんて皆無の私からみると、唯のごついサングラスにしか見えないけど、正式名はブレイン・コンピュータ・インタフェース・グラス(Brain-computer Interface glasses : BCIG)という長たらしい名前のグラスだ。グラスから流れる微弱な電流が、人間の脳にコンピュータが作り出した世界を見せたり感じさせたりする事が出来るという、なんかそんなやつらしい。視力の影響から13歳以下はプレイできないらしいが、これを使ってVRMMOが出来ちゃうような時代になったというのだから、頭のいい人って本当にすごいと思う。
近年これを応用して脳梗塞などの後遺症の回復機器や、視力のない人にも、物を見せる事に成功した事例も出ていて、医療などにも応用が検討されている。今、日本で最も話題になっているアイテムだ。
そしてこのBCIGをVRMMO用に開発したのが音宮さんらしい。
科学者たちの間では、音宮さんは博士と言われて尊敬の対象となっているとか。(BYルーちゃん)
ルーちゃんが崇拝する、音宮さんは本当にすごいと思う。
貴方のせいで私は巻き込まれたけれど、こんな近代的なアイテムの開発やら、イラストまで上手に描くのだもの。
でもね・・・世の中って本当不公平だと思うのよ。才能を一人の人に与え過ぎだ。
私は世の中の不平等に嘆きながらもパソコン前の椅子に座った。
確か、ゲーム名は幻想科学世界だっけ?──名前だけだと、ファンタジーなのか科学世界なのか謎だ。
そう心の中で突っ込みながら、パソコンのスイッチをいれ、ダウンロードを開始する。ついでに、ゲームの世界観などを調べようと、検索もかけてみた。
『幻想科学世界』と入力すると、公式のホームページらしき題名の下にプレイヤーのブログや画像なども一緒に検索欄にでてくる。流石というべきか、可愛いキャラクターが作れるとあって、自分キャラを掲載したブログが多い。
大抵はゲームの面白さについて語るような内容ばかりなのだが、奇妙な書き込みが目にはいった。
ロボット型? らしきNPCへの批判の書き込みだ。
『幻想科学世界ってNPCに1体だけロボットがいるけれどさ、あいつって何なの? 世界観も合わないし』
『だよなー。プレイヤーも、ロボのキャラデザで使えるならわかるけれど、一体だけそういうNPCが存在する意味がわからん。ゲーム側が用意してる物語にもかかわってこないし。絆の札もくれるキャラでもないし』
『お前ら知らないの? あいつの役割ってPK(Player killingの略)らしいよ。しかも一度キルられたらキャラごとデリートされるって噂だ』
『Σ(・□・;)まじかよ! そいつ、本当にNPCなわけ? 運営は公式に認めてるのかよ?』
──う~ん。昨日のルーちゃんに見せてもらった絵の中にロボットとかいたかなぁ~。でもPKしてくるのが、本当だったら、怖いな。何故そんなキャラクターを作ったんだろう。
私があれこれとパソコンでネットサーフィンしていると、足元に置いてあるパソコンがガリガリとへんな不協和音を奏でだした。
ああ‥‥検索しながらダウンロードしたからかな。
ゲームを始める際に、懸念していたのがパソコンのスペック。ルーちゃんによると最低ラインはギリギリクリアーしてるらしいけれど、無事ダウンロードされるか不安だ。
駄目だったら、無理だった~といえばいいや・・という軽い気持ちでパソコンの電源はそのままにして先に入浴を済ませる事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
入浴後、無事ダウンロードがすんでいてほっとした私は、そのままインストールを開始した。
ファイル数がものすごい数だ。しまった‥‥これだといつ開始できるだろう。
『ルーちゃん、ファイルのインストールが終わらなくて。ログインは無理かも。キャラクターだけは作っておくから』
取りあえず、メールを送ったが返事がない。
きっと、ゲームをしてるんだろうな。
私は朝ごはんの下ごしらえなどをして、風呂上りに回しておいた洗濯機から洗濯物を回収しながら、パソコンの画面をたまに見てインストールが終了されるのを待った。
1時間・・1時間かかりました。
ゲームを起動すると、会員登録画面が出現する。事細かい個人情報を聞かれ、携帯番号まで必須となっていて入力だけで辟易してしまった。ゲームがR13というのもあるが、さらに18歳以上しか入れないフィールドがある為らしい。そのフィールドは混雑の為もあって新規加入者は、1か月程プレイできないらしいけれど。
年齢制限って事は、恐らくPVPとか? VRMMOとなると、対人プレイには年齢制限があってもおかしくないだろう。まぁ、私は参戦しないから関係ないけれど。
一通りプロフィール的な事を聞かれて、やっと次にいける! と思ったら、今度は病歴だ。
心臓や痙攣経験のある人はプレイが出来ないらしい。色んなチェック項目に「はい」「いいえ」とチェックをつけないといけない。
まぁ、私は問題なかったみたいで、病歴云々は引っかかることもなかったけれど。
最先端機器ってのも、なかなかに面倒なものだ。ルーちゃん‥‥私はキャラ作成に行くまでに力尽きそうです。ホントウ。
最後にワンタイムパスワードなども可能であれば入るように誘導されたが、そこまで行くと本当に面倒になってきた。
うん! 今後も続けるようなら後日設定しよう。飛ばそう‥‥。
会員登録が終了し、設定したIDとパスそして、ルーちゃんに言われたフレンドコードを入力すると、キャラクターの作成画面が出現した。性別はいつも通り女の子だ。
名前・・名前は‥‥もう、『ナツキ』 でいいかな。
あまりにも面倒だったので、カタカナで『ナツキ』と入力した。何処にでもあるような名前だし。
私は大抵、ゲームの主人公名は自分の名前、ナツキでプレイしている。
ルーちゃんには、オンラインだと、それは良くないって言われたけど毎回考えるのは面倒だからだ。
キャラクターメイキングは細かく設定できるようで、つり目やたれ眼にしたり、瞳や髪の色も色々と変えられ、身長や声の高さまで設定できる細かさだ。個人的には平均的な身長にしたかったんだけど、私の事だ、身長差があるとバーチャルゲームだと上手く動けない気がする。ここは自分の低い身長に合わせておこう。私だけが小さいキャラだと目立つかもと思ったけれど、過去にやっていたMMOでは、背の低い少女でプレイしている人は多かったし、VRMMOでも背の低いキャラでプレイしている人は多いはず──147cmのリアル18歳は少ないけど、2次元だと多くて素敵! とタローさんは言ってたからきっと大丈夫。ダイジョウブダ……。
体型は細身の妖精っぽいキャラを選ぶと、髪は私の好きな、ほぼ白に近い銀のストレートロング、瞳は深紫色を選んだ。キャラを作る時は大抵髪型と目の色は同じにしている。私の場合、コロコロキャラの色を変えるとどうも違和感を感じてしまうからだ。
ちょっと弱そうだけど、どうせ後衛職をやる予定なのでそのほうがイメージにあっている。プレイスキル低いし、皆の前にたって攻撃するなんて職は、多分やらないからいいだろう。
そしてこれ、必要なの? と思われるのが胸の設定。いや、大きさはわかるんだけど、形とか別にどうでもいいんじゃ。完全に男性ユーザの為に設けられてる気がする。うん男性用の夢設定だと思っておこう。
胸の大きさかぁ……。
ココハ……巨、巨乳に───うん。わかってる。胸が大きいと実際と違うから、プレイで邪魔になるのは間違いない。
で、でも、自分の胸よりちょっと大きいぐらいは……ごにょごにょ。
よし、これで完成だ! と思って次へを押す。
すると次は【声の設定を行ってください】という指示がきた。
うわ‥‥面倒だ。もう元からある設定でいいんじゃないの。もういい! そのままで。
それに声の設定は課金(有料)だと説明があった為、詳しい説明をすっ飛ばして[そのままを選ぶ(無料)]を選択した。というかもう面倒だ。
うーうー唸りながら私は何とかしてキャラクターを作り上げた。うん。まぁまぁじゃないかな。
初期服はルーちゃんのフレンド登録プレゼントの限定服をえらんだ。何着か選べるみたいでどれも可愛かったけれど、白を基調とした丈の短いワンピースを選んだ。妖精がきているような透明感のある生地で作られており、裾は濃いめの青色がアクセントとなっていてかわいらしい。背中には蝶のようなリボンまでついている。
やっとのことで、キャラ作成が終わったと思ったらすでに0時前になっていた。
──やばい、ルーちゃんおきてるかな。
携帯を鳴らしたけれど、反応がない。もしかするとボス討伐中か、ねちゃったかも。流石に何度も鳴らすのは迷惑だと思いコールを短めに、私は携帯を切った。
ちょっと町とか散策してみるかなと、[ゲームを始める]というボタンを押すと「BCIGをおかけください」というアナウンスが流れ、それに従いグラスをかけた。
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