第3話

窓の外では夕立が降っている。

ザーザーとした雨音を聞きながら、僕と彼女はテーブルを挟んで向かい合わせの椅子に腰かけている。

「ありがとう……。本当に嬉しい、でもダメだよ……。」

彼女は目に涙を浮かべながらそう言う。

「祐希君の事、好きだよ。優しい声も、私と一緒に歩いている時の楽しそうな足音も、手を繋いだ時の温かさも。」

僕はただ、黙って彼女の言葉に耳を傾ける。

両肘をテーブルにつき、祈るように両手を合わせその手にもたれかかるように額を当てる。

涙を堪える。僕が自分の気持ちを伝えたら、彼女がこう言う事は容易に想像できたから。

「でも……、私と一緒になったら、祐希君の負担になっちゃうよ……。」

彼女は涙ぐみながら、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。

僕は、テーブルの上に置かれた彼女の両手にそっと手を重ねる。

彼女の暖かさが、身体に、心に染みていく。

窓の外では夕立が止んでいた。

雨上がりの空にはオレンジ色の太陽がキラキラと輝いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る