第2話
駅から出るとすっかり日も高くなり、ギラギラとした日差しが容赦なく降り注ぐ。
「今日も暑くなりそうだねぇ。」
「うーん、私暑いのは嫌だなぁ……。」
天気予報によると今日も30度を超える真夏日との事。
僕達は日差しを避けるように緑に囲まれた公園を歩いていく。
風がサラサラと葉を鳴らし、遠くからはセミの鳴き声が聞こえる。
「そうなの? 僕は結構好きだけどなぁ。」
「暑いと女の子が薄着になるからでしょ? 祐希君、意外とHだからなぁ。」
「そ、そういう事じゃないよ!?」
僕が大げさにリアクションすると彼女はケラケラと笑う。
その笑顔に少し見惚れながら、彼女に気付かれないように歩みは止めない。
周りを確認しながら彼女の顔を見ていると、少しその表情に影が落ちる。
「私さ、目が見えないでしょ。暑いとね、自分の輪郭がよくわからなくなるんだ。 そのうちこの世界の中に溶けていっちゃいそう。」
と彼女は呟く。カチャカチャと杖を突く音がやけに大きく聞こえる。
僕は自分の腕にかけている彼女の手にそっと手を重ねる。
「大丈夫だよ。優希ちゃんはここに居るよ。……僕もね。」
彼女の手と重ねた手が熱い。
「またすぐそうやって触ろうとするんだから、やっぱり祐希君はえっちだね~。」
「えぇ?! ご、ごめん……。」
「ふふ、冗談だよ。ありがとうね。」
しょぼくれる僕に優しい笑顔を向けてくれる彼女。
僕はそんな彼女の笑顔をいつまでも見ていたいと、そう思った。
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