この世界の攻略法を僕らは知っている

鬼嫁キドリ

コマーシャル

「この世界を救ってください」


僕たちは何度この声を見聞きしただろう。

それはスイッチを入れれば行ける世界で王様に可愛いぬいぐるみ、異世界の召喚士やはたまた謎の声からかけられる。そして、それら全てに僕たちは答えてコントローラーを握った。


しかし、その日はいつもと違っていた。


新しい年へ向かい忙しなさを増していく人々とより一層煌びやかに光る街に少女の声がこだました。


「助けてください!この世界を救って!」


それだけ。金髪の少女が訴えたのはたったそれだけでかき消されるように元の画面に戻った。

しかし、悲痛な声はあらゆるモニターから流れた。家庭用テレビはもちろん、スマホ、ゲーム機、PC、スクランブル交差点の街頭モニター。それだけでなく奇妙だったのは日本だけでなく、世界でも同時に、1分1秒の狂いもなく流れたということ。


その当時、誰もその状況を不審がるものはいなかった。そう、ゲーム機やスマホ等は除いてテレビで彼女を遮ったのは世界的大企業【サークルリンク】の新作ゲーム制作発表のCMだったからだ。誰も何も疑わず新たに生まれるゲームの世界を待ち望んだ。


平成最期のこの事件は過去最大の大規模な広告として残り、少女のことを人々は覚えてはいなかった。


おそらくそれが僕達の最初の遭遇だった。

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