第60話


 チュートリアルモードを見た限りでは、特にリズムドライバーと似たような要素があるようには見えない。

ARアーマー、ARメットも使用されておらず――見ようによっては本当に普通の体感ゲームに見えるだろう。

(このガジェットは―ー二刀流にも出来るという事か)

 彼女はさすがに実践はしないが、アニメ本編では二刀流のプレイヤーも存在した。ゲームの方でも二刀流は可能であり、それを想定した譜面もあるらしい。

このゲームはプレイを始める所なので、さすがにそこまでの上級者プレイはしない。動画を見ただけで実戦しようとして、炎上する事例が存在する為だ。

二丁拳銃は、このゲームでは出来ないようだが――過去にはシューティングゲーム風のリズムゲームもあったので、いずれは出来るようになるだろう。

このゲームではあくまでも剣を使用するのは間違いない。チュートリアルも、それを前提で説明されていたのがその証拠だ。

(しかし、本来のプレイでは――)

 画面を見る限りでは、二本置かれていた理由は二人同時プレイとも考えたが、足場となるスペースを考えると二人同時プレイではないのが分かる。

やはり、二刀流を前提にしているのだろうか? もしくは片方が故障した時用の予備という気配もするかもしれない。

この後で一番台にもプレイヤーがやってきて、プレイを始める。その様子を彼女は確認をしていないが、都市伝説にも満たないようなフェイクニュースに踊らされるようでは――と思う。

(これが――リズムゲームか)

 デモムービーを含めて、第一印象はリズムゲームには見えない。明らかに別のジャンルと考えている時期もあった。

実際、リズムドライバーの様なリズムゲームもフィクションの世界にはある。それを踏まえるとありなのではないか――そう感じるようになるだろう。

見た目のインターフェイスは明らかにリズムゲームのそれを連想させるが、その雰囲気は日本に上陸して要素を付けたした洋ゲーにも見えなくもなかった。

それを踏まえると、これをリズムゲームとちゃんと認識できるのは、リズムゲームのシステムを理解したプレイヤーのみとなる。実際、アクションゲームと勘違いしてプレイしていたプレイヤーもいた訳だが。

「あのプレイヤーも凄いな」

「まさかの二刀流を使うとは」

「ネタプレイでは?」

「違うな。あのプレイスタイルだとネタではない」

「ガチで二刀流のプレイヤーなのか」

「ターンテーブルを使うリズムゲームでは、ダブルテーブルと言うモードが最初からある。それと似たようなモードと言うべきだな」

 一番台のプレイヤーを見ていたギャラリーからの声が若干聞こえた。そちらの情報が気になる訳ではないのだが、彼女は少しだけ手が止まる。

現在は楽曲のセレクト中なので、特に止まっていてはあっという間にゲームオーバーになるような場面ではない。

(他人のプレイに、今は興味がない)

 彼女は隣の話題が気になりつつも、自分のプレイに集中する事にした。楽曲を選んでいる途中で振り向いたが、まだ選ぶ時間は残っている。

難易度は十二段階になっているのはリズムドライバーと一緒だ。他のリズムゲームでも十二段階になっている機種もあるので、そこだけを指摘してパクリと言うのもおかしな話だろう。

それこそ、一だけを見てネット炎上をしようと考える無知の勢力やエアプレイ勢力と同じだ。これに関してはアニメ本編でも指摘されている。


 

『リズムゲームで世界征服や意思統一、唯一神構想等を考えるような連中こそがコンテンツ流通を駄目にしようとしていた』

 本編の終盤でアイオワの言っていたセリフである。無知のままにネット上で適当に情報を偽造して拡散し、炎上させてコンテンツをオワコンにするような人物こそ彼女の台詞に該当するだろう。

『友情ごっこをリズムゲームで行う気は全くない。しかし、たった一人だけでプレイする様なジャンルとも違う』

 どの辺りなのかは忘れたが、このセリフはジャック・ザ・リッパーが言及していたと思う。

リズムゲームは一人プレイの機種が多いが、中には対戦やマッチングといった要素で複数人プレイをする事もある。

それを踏まえれば、一人でプレイするジャンルでもないと言っているような気配がした。

『様々なジャンルの中でも、リズムゲームは発展途上と言えるだろう。だからこそ、炎上勢力の様な連中は放置できない』

 ユニコーンとのやり取りで夕立(ゆうだち)が放ったのが、この台詞だったと思う。ある意味でも特徴的なシーンで使われた事も、印象を強めているだろうか。

この発言があったからこそ、ネットで特製勢力等による炎上行為等が事件として取り上げられるようになったのかもしれない。

『このジャンルもあの時と同じような事にしてはいけない。だからこそ、あなたはここにやって来た』

 ファフニールがレーヴァテインと遭遇した際のセリフかもしれないが、別のシーンだった可能性もある。はっきりとはどの場面かは思いだせない。

しかし、直接対決をする前の物とは覚えている。そうでなければ、矛盾する可能性もあるから。

『真実を知りたかった。まとめサイト連中の記事が真実ではないと!』

 これはアガートラームが蒼風(あおかぜ)ハルトと再戦した辺りか? その後に彼女の出番が減った事を考えると――そうかもしれない。

彼女はまとめサイト等に依存しているSNS情勢を変えたいと思っていたのだろうか。だからこそ、自分の足で真実にたどり着こうとして――実現できなかった。

『お前は自分の発言が様々な場所に影響を与えているのが分からないのか?』

 これは運営スタッフがレーヴァテインに対して言ったセリフだろう。運営はあくまでも髪運営を目指し、炎上するであろう要素を完全排除するようなシステムを生み出した。

しかし、それでもSNS上では炎上すると考えていたレーヴァテインによって、案の定というか炎上したのである。

『SNSが炎上しないは理想だろう。フィクションではない限り、そんな事は起きる事はない!』

 レーヴァテインが運営に対して放った一言、これにはSNS上でも話題になった。ある意味でもメタ発言と言われたかもしれない。

『リズムゲームは本当にリズムゲームを愛するプレイヤーが演奏をしていく物。目先の金だけを目的としているあなた方は、芸能事務所と変わらない』

 スノードロップのこの発言も、一種のメタ発言だろう。運営が目指したリズムドライバーとは全く違う道を歩もうとしていた時に、芸能事務所との密約がまとめサイトに暴かれた時の物だ。

『運営よ、お前達の負けだ。今のお前達ではリズムゲームを純粋に愛しているプレイヤーは離れていく。リズムドライバーは他のリズムゲームとは違う。コピペのように運営をしていくのは不可能に近い』

 ユニコーンの言うコピペ運営とは、リズムドライバーとは違うリズムゲーム運営を指すのだろう。劇中でも言及されていたが、その機種でプレイしているシーン等はない。

テレビCMでコラボに関する話はあったが、それとは別だろう。リズムドライバーはフィクションなのだから。



 自分のプレイする事にした楽曲は、ゲーム中でも楽曲名の出てきたあの曲である。

《アルストロメリア》

 ただし、アーティスト名はアニメ版とは異なり、曲名が同じだけの別曲だという事も攻略サイトに書かれていた。

『リズムゲームは――十人十色とも言える。だからこそ、他のゲームよりも楽しめるものじゃないのか?』

 このセリフはハルトが自分の目的を見失いかけた時の台詞である。レーヴァテインに敗北し、更にはスランプに突入した時には他のゲームには手が伸びてもリズムゲームはプレイしていないように見えた。

だからこそ、ハルトはリズムゲームが好きだったのだろうか。あのジャンル程に好き嫌いが沸かれそうなジャンルはない。嫌いな音楽があれば、それを聞くだけでも鳥肌が立つというプレイヤーもいれば、耳をふさぎたくなるプレイヤーもいる。

『自分はリズムゲームをプレイしていく過程で、様々な事を学んでいた。それを何かのはずみで勘違いしていたのかもしれない』

 ハルトの技術はリズムドライバーの前に無力だったのではない。おそらくはその技術を無理矢理にでも活用しようとして迷走したのだろう。

だからこそ、ハルトと言うプレイヤーは最終的に上位ランカーには到達できたが、課題の残るような結果となったのかもしれない。



 リズムドライバーを題材とした二次創作は様々あるが、大体がリズムゲームに言及しないような物ばかりで一種の夢小説やメアリー・スー的な物が多かったという。

本当に、これがリズムゲームを広める為のアニメだったのだろうか? それは賛否両論あるかもしれない。

それからしばらくして、リズムゲームを題材としたアニメや漫画、実際のゲーム等もリリースされていくのだが、それは西暦二〇一七年位の事である。

リズムゲームとARゲームが融合したようなゲームが現実に姿を見せたのは西暦二〇一九年なので、ある意味でもリズムドライバーは未来に生きていたのかもしれない。

その一年後、西暦二〇二〇年にはリズムゲームを題材としたライトノベルが出版された。リズムゲーム物はいくつか出版されているが、この作品は元々が一次創作小説サイトの作品だ。

それが商業化するというのは別の意味でも衝撃だったし、彼女もその内容を見て驚かされる部分もあったのは言うまでもない。

(私は、新たなリズムゲームの道を自分で作る!)

 彼女は、いつかこの作者の様なリズムゲーマーになりたいと考える。しかし、それでは後追いになってしまうだろう。

自分は誰かのコピペではなく、自分の意思でリズムゲームを始めたのは間違いない。きっかけがあのアニメだっただけである。

(自分が彼とは違う新たなリズムゲームの可能性を掴んで見せる)

 プレイ終了後、彼女は心の中で今の想いを叫んでいた。その想いは間違いなく、今のSNS至上主義なコンテンツ流通を変えたいという強い意思の表れだったのかもしれない。

そして、自宅に戻って一次創作小説サイトをチェックし、そこで作品タイトルを発見した。

【レッツプレイ! リズムゲーム】

 このタイトルを見て、もしかして――と思う彼女だったが、それをこのタイミングで言及するのも水を差す行為になると考えた。

全ては、まだ始まったばかりなのだから。

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