第13話
蒼風(あおかぜ)ハルトがプレイ終了し、筺体を離れた辺りで若干の動きはあった。
彼のプレイは確かに衝撃が大きい物だったのだが、それでも――上位プレイヤーに迫るかどうかと言われると疑問が浮かぶ。
【彼のプレイはまだまだ未熟だが――見込みはあると思う】
【初見プレイであのスコアならば、相当上を狙えるだろうな】
【果たしてそうだろうか?】
【リズムドライバーはソロプレイだけが全てじゃない。問題なのは、これからだ】
【問題なのはこれからじゃない。今だろう――】
【しかし、あのモードはロケテストでも充分な成果が得られていないと言う事で実装延期が告知されていたはず】
【確かにそうだ。これが実装されれば――別の意味でもゲーム初心者が近づけないようなマニアックな作品になる】
つぶやきサイト上では、様々な声があった。動画サイトで彼のプレイ動画がアップされた辺りで――。
彼の動画だけ何故か再生数が急激に伸び始め、気がつけば十万再生を超えている。
「この再生数の伸び方――あの時のスノードロップと一緒だ」
オケアノス内のゲームセンターにおかれたARゲーム用のセンターモニターでハルトの動画をチェックし、何かの違和感を持ったのはアイオワだった。
彼女はハルトのプレイ終了後、何度かプレイをしたのだが――彼の様には上手くいかなかったのである。
誰でも
唐突にあれだけのスコアが出せない事が分かっていても、彼女の悔しさは――人一倍強い物であった。
アイオワは過去にFPSのプレイ経験があり――無敵を誇っているゲーマーだった人物。何故に過去系なのかは、とある事情が存在している。
それは――彼女が無敵を誇っていたゲームは既にサービスを終了して数年が経過しているのだ。
つまり、彼女の武勇伝は過去形に加えて――知っているゲーマーも少ない都市伝説と化していたと言ってもいい。
(一体、ネット上の彼らは――何を狙っているのか?)
若干の心当たりは存在する。しかし、今更ネット炎上やネガキャンを展開して何の得になるのか?
過去にあった超有名アイドル商法を巡る動きやそれらを題材としたWEB小説が大量に出回った事――。
(危険なのは、ここからなのか――デスゲームは世界的にも禁止されている以上、過激な手段に出ない事を祈るばかりか)
デスゲームの様な事が起こらなければ――と手に持ったタンブラーの中に入っているコーヒーを口にしながら、思う箇所があった。
世界は過去の事例を繰り返してしまうのか? それを知っている人間は――少ない。
(そう言うネット誘導をしているのは――どのまとめサイトなのか)
スマホを何処からか取り出し、今回の元凶であるサイトを発見しようとしたが――圏外表示でサイトを閲覧できなかった。
ゲーセン内ではスマホ禁止と言う訳ではないが、ネットの閲覧や撮影等の機能が制限されている事も――入口の段階でで告知済。
これに関してはアイオワのチェックミスだろうが――。
それから月日は流れて、二月末日――普段通りにオケアノスを訪れたハルトは、ある物を目撃した。
《リズムドライバー、三月にバージョンアップ予定》
「リズムドライバー、バージョンアップか――」
入口に貼られていたポスター、それはバージョンアップ告知を知らせる物だったのだが――そのビジュアルを見て衝撃を受ける。
それは、今までプレイしていたのがリズムゲームではなかった――に等しい衝撃だった。
(リズムドライバーは――リズムゲームではなかった?)
ジャンル記載はリズムゲームとは書かれているが、そこに別の単語も加わっているのだ。
何故、そこに気付かなかったのか? あの段階――スノードロップの動画を見ていた時には全く自覚していなかったのである。
《リズムアクションバトル》
シューティングでもなければ、対戦格闘でもない。FPSとも少し違うジャンルが一緒に記載されている。
このゲームにはバトル要素も含まれていた――。厳密には対戦アクションのような物ではなく、使用するガジェットでバトルをするという意味でのアクションバトルなのだろう。
(これは、リズムゲームではなかった? まさか――?)
自分がプレイしていたゲームがリズムゲームではなかった事――これは彼にとっても衝撃だった。大事な事なので――二度以上は言わなくてはいけない。
厳密にはリズムゲームの要素はあるのだが、見せ方としてはFPS等のシューティングに近いだろうか? つまり――そう言う事だったのである。
(リズムゲームと思ってプレイしたら、実際には――)
リズムゲームと思いこんでいた訳ではないが、これには衝撃が隠せないでいる。
一体、自分は何をプレイしていたのか――ある意味でもジャンルが迷子になっているゲームをプレイしていたのかもしれない。
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