第14話
三月にリズムドライバーのバージョンアップがされる話は、ポスターが貼られる数日前から公式リリースがあった。
さらに細かく言えば、蒼風(あおかぜ)ハルトが初プレイした日には予告が行われており、その数日後にプレスリリース、今回のポスター配布に至る。
手際が良すぎると思いがちだが、これでもARゲームでは遅い方と言えるかもしれない。
ARゲームの場合は安全性テストや様々な要素もVRゲームや他のジャンルとは大きく異なるので――簡単に比較できない訳だが。
【危険性を伴う不具合であれば手際良く修正されるが――】
【今回のアップデートは、どちらかと言うとゲームシステム的な部分だ】
【一体、何がどうなっているのか?】
【不正チート対策――と言えば聞こえがいいかもしれないが、本当は違う何かが原因だろうな】
【チートと言うよりは、別ゲームのガジェット持ち込みを防ぐ方がメインだろう。物によっては、チートまがいの能力を持つ話もある】
【チートまがい? 公式が認めたガジェットなのに?】
ネット上では今回のバージョンアップで様々な意見が飛び交っている。
ARガジェットは特定メーカーのみで製造されている訳ではなく、様々なメーカーから作られていた。
それを踏まえると――今回のバージョンアップには何か裏がある。
ハルトがオケアノスに到着し、あの筺体のエリアに近づくと――ギャラリーが多かった。
しかし、ほとんどが観戦のみでプレイヤーではないようで――ハルトは特に問題ないと思っていたが、実は違うようである。
二番台でプレイしている赤いコートにフードを被った人物――彼なのか彼女なのか分からない人物のプレイに驚いているようだが。
身長は一八〇辺りと言う長身なのに、その動きは手慣れているように思える。もしくは、他のARゲーム出身者か?
ギャラリーからは小声が聞こえる事はない。他のリズムゲームで爆音設定にされている関係上、声が聞こえないのかもしれないが。
(ここまで爆音設定にして、不審者とか姿を見せたらどうするのか――)
ハルトは周囲に不審者がいた場合にどうするのか――その際に爆音設定だったら、都合良く逃げられてしまうのではないか?
しかし、オケアノスには犯罪者が下手に入りこまれないように様々な部分でセキュリティが万全の状態である。
これでも万が一がある為に警備員が私服パトロールをしていたり、監視カメラが動いていたりするのだが。
「これは予想外の人物が――」
「自分も驚いた。ネット上では失踪説もあったのに――」
「失踪説はフェイクニュースだ。数ヶ月前から目撃情報がある」
「それはおかしいだろう? 数ヶ月前って――リズムドライバーの正式稼働と時期が合わない」
「それこそ尚更だ」
「なりすましでは?」
「あの名前を好き好んで騙るプレイヤーはいないだろう――レ―バテインを」
あるプレイヤー達のやりとりから、あのプレイしている人物はレ―バテインと判明する。
実際、センターモニターのプレイヤーデータにもはっきりとレ―バテインの名前があったので、間違いはないだろう。
しかし、彼がプレイしていたとされているあのゲームは三年以上も前にサービスが終了しているはずだ。
プレイ人口の衰退でサービス終了するのは、ソシャゲ等でもよくある事であり――珍しくはない。
彼のプレイ終了後、フードで素顔が見えない状態だったのだが――それでも、彼のオーラが相当な物であるのは分かる。
(あのゲームは、やはり――)
彼は小声でつぶやいたようにも――思えるのだが、気のせいなのかもしれない。
しかし、自分の目の前を通り過ぎて行ったハルトには何故かレ―バテインのつぶやきの内容が――何を意味していたのか分かっていた。
リズムドライバーに何らかの感情を持っている可能性が高いのは間違いないだろう。それがどのような感情なのかは別として。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます