第11話
自分の周囲に何かの変化があったのは事実だが、蒼風(あおかぜ)ハルトはゲーム画面の方へ集中する。
チュートリアルの文章を見る限り、やはり何か引っかかるものがあったが――まもなく操作説明に移行するようだ。
《それでは、演奏方法に関して説明します――》
目の前のチュートリアル文章の後にはターゲットと思わしき的が出現する。
リズムゲームの場合、ノーツと言う単語が存在し――それに該当するのだが、見た目は明らかにガンシューティング系の的にしか見えない。
《貴方が所持しているのはソード系ですね。それに従う形で説明いたします》
持っているガジェットがソードなので、ソードのチュートリアルが自動的に流れるようだ。
的の形状も、正方形のラインが三つ見えるような物へと変更される。おそらく――。
《これがノーツになります。単純に振り回すだけではスコアは上昇しません。判定も重要な要素となります》
説明後、三つの正方形が外側から順番に色つきで説明された。
《外側、中央、中心部と点灯していきますが――中心部が点灯した時にヒットさせた時にはスコアが最も上昇します》
《では――早速やってみましょう》
早速のトライである。出現した正方形のノーツは接近しているようにも見えるが――。
《駄目ですね。プレイヤーが指定のラインをオーバーすると自動的に失敗となります》
まさかの判定ミスだった。原因は――既に目の前のメッセージで指摘されている通りである。
接近してくるならば、こちらから接近して命中させれば――。これではFPSの戦術であり、リズムゲームで取るような戦法ではない。
自分がプレイしているのはリズムゲームのはずなのに、ゲーム画面や様々な要素から別ゲームと考えてしまいがちだ。
(知識だけでは――対応できない、と言う事か)
ここでハルトは思い知った。いくら動画で研究しても、実際にプレイするのでは話が別となる。
リズムゲームの知識でさえ、このリズムドライバーでは無力に等しい状態なのは――使用しているコントローラーに該当するガジェットを見れば明らかだろう。
このゲームをプレイするには――他ジャンルの知識は邪魔にはならないだろうが、知識があるからと言って圧倒的なアドバンテージにはならない。
《では――早速やってみましょう》
改めて、仕切り直しである。今度は、バイザー経由で見える赤いラインから外に出てはいけない事を覚えた。
そのラインをオーバーしなければ下がるのも横に移動するのも自由――。ライフル等で細かく移動するプレイをしていたプレイヤーがいたのは、そう言う事のようだ。
ソードを横に軽く振ると、今度はノーツに命中した。ただし、判定は――外側の点灯時なので、当たったのみであるが。
《早く動き過ぎているようです。もう少し判定を見極めて、剣を――》
縦でも、横でも、斜めでも――回転斬りでも判定には変わりがないようである。
突きでも問題はないかもしれないが、一種の裏ワザかもしれないので、あえて実践しない事にした。
五分後、チュートリアルを一通りプレイして、ハルトはプレイ感覚を身体にしみこませる。
剣の振り方は自由だが、ノートが中心で点灯した際に攻撃を命中させる事――それがスコア上昇の近道らしい。
やはりというかリズムゲームでも必要だった接続の要素はあるようだ。名称はコンボではなく、チェーンだったが――。
単純にフルコンボを決めるのであれば、目の前に迫ってくるノーツを斬りまくればいいだけの話だ。銃の場合も乱射で済む話だろう。
「演奏失敗のルールが緩いように見えるのは――」
説明でも演奏失敗に関しても言及されたが、スコアがノルマ以下で失敗扱いとなる。
失敗をしてもこのゲームではゲームオーバーとはならない。さすがに捨てゲーのようにプレイを放棄した場合にはペナルティがあるようだったが――。
「とりあえず――これで一通りの操作方法は分かったが」
この声はARメットを装着した状態なので、声が外に漏れていたりはしない。
どうやら、標準設定でスピーカーオフになっているようだ。設定によってはスピーカーのオン設定が出来るのだが――あえて現状は放置する。
《プレイする楽曲を選んでください》
気がつくと楽曲セレクト画面である。
リズムゲームでもよく見るようなCDジャケットが表示される形式が採用されており、そのジャケットをタッチする事で決定となるようだ。
厳密に言えばジャケットを選んだだけでは決定とならず、難易度を設定後に決定となるらしい。譜面難易度は――リズムゲームにはよくある設定だが。
《イージー:☆》
《ノーマル:☆☆》
《ハード:☆☆☆》
難易度は簡単(イージー)、普通(ノーマル)、難しい(ハード)の三種類、ゲームによってはアナザーの様な裏譜面もある。
星の数が多ければ難易度が上昇し、最大で十個――。しかし、ざっと見た限りでは星の数は六個が最大にしか見えない。
実際は難易度が全てイージー計算で判定されているだけで、中には最初から星が九個と言う譜面もあるだろう。
それを踏まえても、難しい譜面もなさそうに見えるので――それを考える必要性はなかった。
逆に初めてプレイするプレイヤーが裏譜面の事を考えるのは――あまりにも問題があり過ぎるだろう。
いきなり裏譜面を選び、ゲームを放棄してリズムゲームにトラウマを持ち、リズムゲームを引退する様なプレイヤーもゼロではないのだから。
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