幕間、あるいは終演のお時間

 それにしても、なんで君の仲間に、犬、猿、雉なんだろうね? 他にももっと強い動物はいただろうに。

 

 雉はどうだか知らないけれど、犬や猿なんて群れる動物だ。例えその三種類を選ぶしかなくても、もっと何匹も連れてくれば良かったのに。

 

 いてっ。

 

 なあ、桃太郎。君、中に鬼がいること忘れてないかい?

 

 いくら上手く這入はいり込んだからって、宝の山の中にいるんだ。

 

 こう、よくわからないものが脇腹とかに刺さっていたいんだけれども。

 

 なんたって人間はとがらせたがるんだろうね、本当。丸くていいものはたくさんあるだろうに。

 

 君もなんか―― 


 いたっ。

 

 わざとやってない?

 

 島で散々君を傷つけたのをまさか根に持っているのか?

 

 あれは事実を伝える上で仕方なかったんだ、痛いって。

 

 そう、傷ついてない。君は傷ついてない、随分面倒な性格をしているな君は。

 

 ――俺には計り知れないけども、育ての親を殺しに行くのはどんな気持ちなんだろうね。

 

 一人称が違う?

 

 ああ、あれはあの場が公式な場だと思っていたからだよ。

 

 一応、俺は鬼ヶ島の代表として行っていたわけだし、言葉遣いは丁寧じゃないと。

 

 で、桃太郎。もし君が少しでも躊躇してしまいそうなら俺がやるけれどどうする?

 

 ああ、大丈夫? ならいい。

 

 前言撤回しよう。君は弱くない。

 

 過去の自分と向き合い、自分の行く道を決められる。君は充分に強いよ。今度のはお世辞やごまかしなんかじゃない。

 



「おじいさん! 桃太郎が帰ってきましたよ!」


「なに! それは本当か!」


「ええ、ええ、随分大きな宝を引いて、やってきましたとも」


「ほう、ならばわしの思惑通り――」


「とはいかないんだよね。どうも、鬼です」


「何? 桃太郎、お前まさか」


「いやいや、何を仰る。先に桃太郎を裏切ったのはそっちだろうに」


「ん……ぐっ」


「反論無し。桃太郎、やっぱり俺の言ったとおりだろう? ささ、遠慮はいらない。存分にやるといい。俺はここで見ているから」


「やめっ、桃太郎!」




「やっぱり、鬼じゃなくても金棒の方が強いよねえ」


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