タイトル回収は忘れずに

「すみません、報告が遅れてしまいました。先ほど桃太郎が出発、既にこちらへたどり着こうとしているとのことです。偵察班にはあとで――」


「いや、いい。そのまま続けさせておいてくれ。で、規模は? あとどのくらいで着く?」


「それが、配下は犬、猿、雉だそうで」


「…………は?」


「いえ、こちらでも更に調べているところです。道中に他の仲間がいるのかもしれません。浜で合流する可能性もあたっています。けれど、周囲の村や都まで触手を伸ばしてもその動きは見つけられておりません」


「どういう、いや、本当にわからないな。移動手段は?」


「徒歩です」


「武器は?」


「先日の報告の通り、一揃えの鎧と刀のみです」


「犬、猿、雉に何か特別な仕掛けなりなんなりあるとか?」


「今のところ見当たりません。本当にただの動物です。桃太郎の言うことを聞くようにしつけられているようですが、それ以上のものは見当たりません」


「一応聞くけれど、君たち総出で俺を騙しているという可能性は?」


「聞かれるまでもないかと」


「後は……鬼除けの道具を持ってたりとか、何か俺たちの想像もつかないような武器を隠していたりとか」


「確認できるのは、動物たちを従えたきび団子のみです。桃太郎、という名前の通り、万が一桃から生まれ出たのだとしたら、桃は邪気を払うとされていますのでこちらに効果があるのかもしれません」


「本当にそんな事があるの?」


「いえ、私達も未確認です。何せ、桃から人が生まれると言うこと自体聞いたことがありません。ですが、本当にそうでなければ――」


「人間一人が鬼ヶ島になんてやってこない……か。とは言っても確認する方法がないからなあ。まさか誰か彼と殴り合ってきて、普段と比べてどのくらい痛かったか試してきてとも言えないし」


「もし本当だった場合のリスクが大きすぎます」


「そうだね。で、その桃太郎は今どこに?」


「はい、彼は既に海岸を出発。船でこちらへ向かっているとのことです」


「その四……一人と三匹で?」


「ええ、それは変わらず」


「よし、女子供はここに避難させよう。正門から堂々入ってくる事はまあ無いだろう。奇襲にあってこちらに被害が出るのはなんとしても避けたい。残った男達も三人以上で固まって行動するように伝えて」


「かしこまりました。長、あなたはどうされるのですか?」


「うん。俺は何とか話し合いで解決しようと思う。何せ、向こうの脅威は計り知れない。意図もわからない。なんなら、桃太郎が両親二人に利用されてここへ来ている可能性だってある。ならお互いに怪我をしないのが一番いい解決法だと思うんだ」


「ええ、ですがあなた一人で行かれるのは少々危険過ぎるかと」


「自分も連れて行けと言うことかな? だとしたらそれは許可できない。もし俺がダメだった時、俺の代わりに指揮をる優秀な人間が必要だからね。君は残れ」


「は、ですが」


「残れ」


「……はい。ですが、私には荷が重すぎます。あなたでなければ」


「まあ、その辺は尽力するよ」


「では、すみません。お先に失礼します。また後でお会いしましょう」


「はいはい、っとさて、こちらも真剣に考えようか。どうしたら彼にお帰りいただけるかを」





「さあ、鬼ヶ島会談といこうか」

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