第15話
「と、いうことで、ここが、ギルドエリアにある我らがフォルス冒険者ギルドだ!!」
いつの間にか羽織っていた紺色に白い紋様が書かれたマントを羽織った大男ヅグはただでなくてもでかい動きをさらに大げさに、御者台から飛び降り着地と共に開口一番、腕を広げ自慢げにその建物を紹介した。
南門を潜ってから30分ほど馬車に揺られたどり着いた。中央南寄りにあるこの一帯はギルド街と呼ばれているらしい。フォルスに存在するギルドはすべてこの辺りに居を構えているそうで、この無駄に広い……そう、東京で言えば渋谷駅近くの青山通り、大阪で言えば御堂筋くらいかの大通りに面しているその歩道には人の往来が激しい。歩道自体も相当場所を取られている。これまで通ってきた道では最も栄えている。それに話によるとここから先は内門と呼ばれるエリアのようで今行く必要性がないらしい。
「なんか……異質なほど豪勢だな……」
そうとしか言えなかった。まず、サイズ感が周りとまるで違う。隣にあるギルドがちょっと大きめの一軒家サイズなのに対して、何が一番想像しやすいだろうか……中学とか高校の体育館?そのレベルの違いがあった。その見た目も大きく異なる。西洋風の平和な街並みの中に一つ常に臨戦態勢と言わんばかりに、入り口前にフルプレートアーマーを着て、一方はアーミングソードいわゆるロングブレードを地に突き立て、もう一方はアックスを持った石像が立ち、こちらを威圧している。その後ろの建物もギリシャにある神殿を復元した姿に近いものがある。なんというか……うん。入りずらい……
「そりゃ、三大ギルドの一つだからな」
「三大ギルド?」
「ああ、商業者ギルドと農業者ギルド。そして、冒険者ギルド。これが、どこの街に行こうとも不動の三大ギルドだ」
「……なるほど、理にかなってるな。農業は勿論、商業は街そのものの構造上必須。それらを守る冒険者ギルドって感じ?」
「おうとも、どれもなくちゃ、街が傾くからな」
「で、その商業と農業のギルドさんは?」
「見えるだろ?御向かいさん。あれが商業者ギルドと農業者ギルド、食料生産者連合の島。こっちが冒険者ギルドと各、職業(クラス)ギルド、武器生産者連合の島だ」
確かに道路を挟んで反対側に二つこちらとどっこいどっこいの大きさの建造物が二つある。しかし、そのインパクトは冒険者ギルドには到底及ばない。というよりは必要以上に目立つ気がないのか、必要だから大きくなっただけという感じで街並みにあった建造物だった。
「なんだろう。この目に見えた対立構造……」
「そこはまあよくあるだろ?戦うものは戦わないものを臆病者と謗り、必死に生きようとするものは、命を奪いに行くような者たちを蛮族と呼ぶ。みたいな?ちょっと数世紀前の名残が残ってるけど、今はそんなことほぼないから大丈夫だ!!」
「ほぼ?」
「ちょっと、この建物が『死にクエ選びの神殿』とか、『最期の祈り場』とか、揶揄されてるだけだから」
「それ今でも若干仲悪いだろ……」
俺がそう返したところで、横から声が割って入った。
「そ、そのあたりは大丈夫」
いつの間にそこにいたのか、背後から声をかけられ、後ろを振り返りつつ答えて
「そうなんです……か……」
止まった。そこに立っていたのはアルシアだった。若干、目が泳ぎ、頬が紅潮しているように見えるがそれは多分、西日のせい。陽はとっくに沈んだけど。出なければ、街を照らす街頭ランプのせいだ。
「アルシア……その……」
朝はごめん。そう口にする前にアルシアが勢いよく口を開いて
「気にしてないので!!あなたも気にしないでください」
そうまくしたてる様にいった。
「あ、ああ、わかったよ。アルシア」
「ヅグさん、彼を案内してくれてありがとうございました。おかげで、準備が
整ったので、案内は私が引き継ぎますね?」
「ああ、そうだなアルシア、坊主は任せたぞ?」
「はい、勿論です。これもギルドマスターとしての責務ですから。あとのことは私に任せてください」
「じゃ、俺はお言葉に甘えて、地下で酒でもあおってるわ。おい、坊主、用事が終わって困ったことがあったら俺のところに来い。大抵はギルドのどっかにいるから。誰かに俺を見なかったか聞けば誰かしら知ってるはずだから尋ねてこい」
「ああ、そのうち頼らせてもらうよ、じゃそのうちどこかで」
「おう、頼んだぞ。いろいろ」
俺たちはヅグを残して、冒険者ギルドに足を踏み入れた。
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