テンプレその4「適性検査するってよ〜パート2〜」

あ〜、なんかこの先に行きたくねーな。めんどくせぇ〜。

日本人しかいないんだから気が休めるだろうと思ったんだがなぁ。

沈黙、読み違ったか。

見張らせておいた、穀潰し使い魔もいつの間にかこっちに来ているから問題はないんだろうが、それが問題だな。


彼の心の声に反応したのだろうか、彼のそばで今まで見えなかった人影がうっすらと現れた。人影と言っても子供くらいの大きさである。

『ちょっ、ひどくない!?しかもいま字、違ったよね!』

などと、文句をたれながら彼の足をゲシゲシと蹴っていた。

薄っすらとしか見えない割に蹴れているようなので実体はあるのだろう。

それでも蹴られた本人はびくともしないどころか、存在を華麗にスルーして歩を進めていた。うっすらといるのは言葉のあやではなく、影が薄いだけなのかもしれない。


ちなみに使い魔という存在について話しておこう。

後々語られるかもしれないが、使い魔も多種多様におり、使い魔という定義も、関係も様々で、使役者の数だけあるだろう。

そして、彼のちょっとウザめな口調の使い魔、正式名称は本人からの自己紹介で明かされる方がいいし、特段重要なことでもないので飛ばすので今回は使い魔とよばせて頂く。この使い魔はそう、すでに登場していたのだ。前回誰かが実況、心の覗き見をしていたのは便利な三人称一視点天の声でもなんでもない。本当に透明になって普通に観察していた人物がその場にいただけの話である。それが彼の使い魔だったのだ。透明になって堂々と侵入し、心の中を覗き見、勝手に批評。まったくプライバシーのあったものではない。

と、長々と説明していたがどうやら入る決心がついたらしい。

え?今説明している私は誰だって?ふふ、それはまだ知るべきことではないさ。ただ、私はプライバシーの侵害などは絶対にしない紳士だとでも思ってくれたまえ。

では、話を進めるとしよう。アシュリー君にバトンタッチだ。






ん?誰かに出番を奪われた気が、まあいい。出番というのもよくわからんしな。

いつまでも突っ立てる場合じゃないし、仕方ない。覚悟決めて行くか。


コンコンッ


「失礼」


扉を開けて中を見ると立っている者、座っている者それぞれだが皆一様に静かだ。

はあ、改めて見るとめんどそうな人員だな。


「気は休めただろうか。これから説明をするので楽な体制をとるといい」


さて、まずはなにを話そうか。


「まずこちらの都合で呼んでしまったことを申し訳ない。先に言っておくがあなた方を還す術をも含め我々は知らない。あなた方の住まう世界がどこにあるか判らないからな」


「えっ!」


「うそっ」


「・・・・・」


反応はそれぞれだが、やはり驚くか。しかし言うならば早めがいいしな。

まあ、一人は驚いててもここに来れたことに喜んでるしいいだろう。


「さて、あなた方のこれからについて説明しよう。あなた方の今後の生活についてはこちらの話を守っていただければ、まず問題はないといっていいだろう。そして目的だが、あなた方にはこの国の戦力として戦ってもらいたい」


「ど、どういうことですか!」


理解のし難い言葉に対していち早く冷静になった金髪の少女が反論した。


「我々はあなた方に強制したくはない。国王も子供に戦わせはしないだろう。しかし、あなた方を同じ扱いにするとは言い切れないのが現状だ。まあ、」


ん?話しているとノックの音が聞こえた。

ああ、もう終わったのか。ここからは彼女に話してもらおう。説明が面倒だ。


「入ってくれ」


「失礼しますね。……あら?アシュリー、この雰囲気どうしましたの?」


入って来た彼女は周囲を見渡してから何か想像と違ったのか首をかしげていた。


「ああ、これから自己紹介でもしようかと思っていたところだ。それよりももういいのか?」


「ええ、平気ですわ。では、わたくしから。私はこの国の聖女という立場におります、ソフィア・クレスウェルと申しますわ」


ソフィアがきれいにお辞儀をしながら言った。


さて、次は俺だな。というか自己紹介を普通に忘れていた。

と、妙に誤魔化しきれない内心を華麗にスルーして進めはじめた。

「俺は聖女の護衛、及び統括国防軍の責任者を務めているアシュリー・ローゼンクランツだ」


次に召喚された少年少女も自己紹介をすることになった。


「お、俺の名前は上野 惠介けいすけです」

ここでようやく男子1から正式名称が判明。

これからは男子1改め、惠介と呼ぼっか!


「藤崎カノンです。よろしくお願いします」

金髪少女1改め、カノンさんね。フムフム。


「八雲 剣だ」

先程堂々と眠っていた男子2。見事に誤魔化しがきいてるね〜もうだまされないぞ!寝起きとは思えない表情、寝起きに左右されない顔が羨ましい〜。あれならアシュリーちゃんにもバレないかな?


「宇田川幽々子」

あやや?内心に反して口数が極端に少ないんだね。

少女2、見事にこちらも猫を被ってるのかな?いや、たしかにあの内心のまま喋られたらそれはそれで困惑するんだけどさ。あ〜怖かった。ヒヤヒヤした〜


「俺はこれから準備をしなくてはならないのでそれまでの間は彼女に任せる。頼んだぞ」


アシュリーはソフィアが頷くのを見ると後ろを向き、準備のために部屋を後にした。


(さて、俺は準備でもしますかね)


一見、厳しそうな印象を受けてたけど、今じゃあもうあのギャップにも慣れたね。


それを見送ると、ソフィアは改めて説明の続きを行うことにした。


(全く、私に押し付けて。面倒くさがりも程々にしてほしいですわ)

ソフィアは内心呆れながらも、長年の付き合いが故かいつものことだと流しました。

「お待たせしました。これからのためにまずは検査をいたしましょう」


その言葉を聞き、召喚されたものたちが首をかしげた。


「検査、とは一体何をするん、ですか」


思ったことを口に出しただけなのか取ってつけたかのような敬語がなんとも言えないあれだがその疑問はあながち間違っていないだろう。


「そうですね、そこから説明いたしましょう。皆様方は次元も何もかも違った世界からおこしいただいております。その際に此方に来るのに多大な負荷がかかります。皆様方は此方で生活しても平気かどうかが最重要です。あとは何に向いているかなどの適性検査ですかね」


ソフィアの適性検査という言葉に反応した人がいた。


「それってつまり、転移のテンプレ!俺の最強な力ってなにかな〜」


ボソッと言ったつもりが結構な音量で聴こえていたが問題ない。

なんせ聞いているのは同じ境遇である少年少女たちと全てを受け入れてくれる心優しい聖女様しかいないからだ。

まあ、おまけ若干一名覗き魔改め密告者がいるかも知れないが見えないのであればいないのだろう。


「テンプレ?説明は難しく、人によって異なるのでその都度説明させていただきますわ」


少し困惑しながらもしっかり神対応してくれるソフィアに惠介の表情筋が働かなくなっているがどんな顔かは聖女様のみ知る世界でしょう。

そうこうしているうちに準備が整ったようです。いつの間にかアシュリーが入口付近の壁際に立っていました。音も気配もない、それはまるでSHINOBIのよう。


「では、まずは魔術の適性を見よう」

そう言いながらアシュリーは部屋の四隅に小さく黒い箱を置いていった。


「それはなんですか?」

疑問に思ったカノンは早速質問をしていた。


「結界を張る道具ですわ。これを使えば人が離れていても常時強度を保つことができますの」


ソフィアは丁寧にものを説明していきながら準備された道具をもとに結界を張っていく。ちなみに人によるが彼女は詠唱が必要ないようだ。

え?なぜそんなことを言うのかって?これは惠介が魔術と言われた瞬間に期待していたものだから答えたのだ。まあ、口に出していないので通じていないかもしれないがな。はっはっはー。

・・・・・おっと〜。ご主人様に睨まれてしまったよ。あ、はは。

おっかしいな〜。透過してるからいくら契約者でも見えないはずなんだけどな〜。

だってご主人様、魔術使えないし〜。ぷ〜クスクス。ぶべらっ!?、こ、今度は斬撃すっか!手加減はされてるっぽいけど、いつ動いたのかも分からなかったし、それでもダメージがと、とんでもない。ぐふっ。心の声も分かっちゃうんですか?聞こえないようにしてたはずなんだけどな〜。もうご主人様の原理がわからね〜。絶対ご主人様だけこの世界の法則通じてない。っていうか適応されてないでしょ!これ以上なんかやらかすと私の命も危ないし黙っておとなしくしてよ。


「さて、結界も張り終えましたわ」

ソフィアはアシュリーにそういえば心得たとばかりに頷いて説明をはじめた。


「そちらの世界に魔術、簡単に言えば先程の結界のようなものだが、見たことがないらしいので適性があってもすぐには使えないだろう」


その発言を聞いて、惠介はわかりやすく肩を落として落ち込み、初対面にもかかわらずそんな惠介をカノンが慰めていた。

剣さんは今どき珍しく魔術という言葉も知らないのだろうか、腕を組んで考え込んでいた。と見せかけて何もわからないのか頭の中では疑問符がぐるぐるしていた。幽々子はー、スルーでいいかな。うん。関わったら絶対ろくでもないことしか考えてなさそうだし。って、また介入してしまった。


(うるさいぞラーマ)


ごめんて!ご主人!


脳内実況の騒がしさにいい加減呆れたのだろうか。アシュリーは使い魔ラーマの独り言に介入して黙らせた。


「確認する方法は簡単だ。一番簡単な魔術を今ここでやってもらう。初めてだろうから俺が魔力を直接送り操作する。つまり魔術行使の疑似体験だ。それを体感で覚えてくれ」


それでも魔術が目の前で実行できなければ魔術を行使するための体の作りが違うというだけだ。使えなくてもいくらでもやりようはある。

この世界に喚んでしまった我々の責任があるからな。

自衛できるようになるまでは守りきらなければならないからな。


俺はまず惠介を部屋の中央に連れ出し、背中に手を軽く添える。


「いいか。一回しかやらないからな。利き手を前に出した体制で落ち着いて魔力を感じ取れ」


はあ、緊張する。ああは言ったが俺は魔術が苦手だ。

魔術も基本の一つしかまともに使えない。だが、戦うわけでもないし、いまのあいつらにはこれで十分だろう。


「うわっ」

感覚でどうやら伝わったようだ。拒否反応もないようだしこのまま続けよう。


「3つ数える。0のタイミングで打つ。手は下ろすなよ」

返事は知らん。

だが、わかりやすく工程をゆっくり再現する。

「3」

送った魔力を出した手に集める。

「2」

形にする。

「1」

そして・・・

「0」

穿て!


0の合図と同時に前に出した手のひらから魔力弾が放出され壁に勢い良くぶつかり、衝撃波のようなものが空間を震わせ、自分たちの服をはためかせた。


「うわっ、すげぇ!」

惠介は自分の手のひらを見つめながら驚きを露わにしていた。

「こんな感じだ。その感覚を忘れるなよ」


それから他の三人も同じように実践した。

魔力系統には問題がないようでよかった。使えることには惠介に魔力を流した時点でわかっていたからいいんだけど。この中には適正がないやつはいなかったようで、第一段階は突破できそうだ。魔力があるだけで王への発言力も高まれば、生存率も上がるからな。


さて、次は召喚による加護の確認だ。

俺は初めて使った魔術に浮足立っている四人を横目にため息をつきたくなった。
















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異世界ファンタジーだけど二次元じゃなくて現実だからな! 晞栂 @8901sakuya

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