第11話ある女

 私はその女が嫌いです。最初からでなく、途中からですけどね。

 シングルマザー、子沢山、仕事がガテン系。頑張ってる女。

 全部見せかけです。


 よう~く聞けば、最初に結婚した男との間に、男の子が二人。

 出会いとか経過は知りません。幾つで知り合ったとか、相手がどんな人かも知りません。結婚に家族が反対したとか、賛成だったかとかも知りません。

 一番最初に聞いた話が、

「うちの旦那さん、兄嫁と駆け落ちした。」

 ですよ。

 誰でも、

「え~!!」ですよ。

 その次が、捜索願を出していたから、阪神大震災の時に警察から問い合わせが来て、相手の家族と、死体を見に行ったら、別人で、そのあとに本人が見つかったよって。

 もお一回「え~。」

 その次が、

「兄嫁に誘惑された。」

 兄嫁は、

「義弟に誘惑された。」

 こっちはどっちでもいいけど、その次が、

「結局離婚の話し合いが上手くいかなくて、調停になったけど、慰謝料200万で、おしまい。」

「もらったの?」

「もらったよ。即金で。」

と。

「よかったじゃん、貰えて。」

「それがさ、帰りに一緒になって、『お前に払ったから、一文無しになった。』っていうから、貰ったお金から、一万貸してやった。」

こんなのありかよ、そう思いながら、三番目の子供の時は、

「周りから、付き合うのに幾ら使った?って聞かれるの。ジャニーズ事務所にいるのって言われた。」って。

あとから知ったんだけど、私の知り合いの息子、当時まだ未成年だった。

お母さんのお店でバイトしてて、知り合ったらしい。本人曰く、

「彼の周りは、お母さん筆頭にお姉さんとか、従業員とか、奇麗な人が多くて、不細工に免疫がなっかたみたいで。」と。

ちょっとイケメンの年下ににモテた自慢?

結局九州に駆け落ち。それで幸せならいいんだけどね、一緒に暮らすとやっぱり大変だったみたいで、なんせ生活能力がないから、彼女が長距離トラック乗って生活費を稼いで、子供とも年が近いから子供に焼き餅焼くし、近所の男性と喋っても焼き餅焼くし、稼げないくせに浪費癖。結局、母親にお金を送ってもらって、実家に帰って、離婚。まさか子供ができるなんて、神様、意地悪だね。まあ、彼氏のほうは、生まれてるのを知らないかも。

ちなみにその子は女の子で、高校生で子供ができて、結婚したけど、多分孫がいるのを知らないし、お母さんもひ孫なんて知らないと思うよ。第一本当に彼の子なのかしら。

その後の子供は、いわゆる婚外子。同じ人の子供だっていうけど、二人。

団地に、母子家庭ということで住んでいて、だから当然破格に家賃は安い。

そこに男を引き込んで、一緒に暮らしていた。そして生まれた子供たち。

世の中は母子家庭に甘くて、たとえ婚外子でも、三人までは補助が出る。彼女の場合は、上三人は結婚してできた子、下の二人は婚外子、補助の対象となる。

彼女が夜遊びをするときは、成長した上の兄弟たちが、面倒を見る。

この間にも、最初の夫からは、養育費をもらい、母子家庭でもらえる補助金をもらい、下の子供の父親からも養育費をもらい、何も知らない飲んで知り合った男からは、可哀そうだからとお小遣いをもらい、と。

何も知らなかったから、黙ってたけど。

彼女が働いていたのは、いわゆるガテン系の派遣。それだけじゃ食えないから、夜のバイト。お客さんをひっかけては、よその店に運ぶ。連れて行くと、歩合がもらえる。彼女にしたら、アフターして、歩合貰って、ただで飲み食い。上手くいけば、帰りのタクシー代を貰える。その気になれば、ラブホテルへも。まあ、立たないくらい飲ませるから、何にもできずに朝になるけど。

そのうちに連絡が取れなくなり、ある日路上で見かけたときは、臨月。

思わず、え~。

あとで、連絡するからと、あわててタクシーを止めて立ち去った。

もう目が点を通り越した、誰の子供?

数か月後呼び出されて、会うと、

「あの頃に、私、ハーフの男の子とよく一緒にいたでしょ?」

「確か、前科のある人たちと働いてた植木屋?」

「そう、そこでしりあったんだ。」

「やくざじゃないよね。」

「違うよ。付き合ってるうちに、その人が病気になって、もう助からないって言われて。」

涙を浮かべながら、

「妊娠したって言ったら、彼のお姉さんから、産んでくれて言われったんだ。」って。

どこまでホントやら。

彼女のことは書き出すと、長編小説になるから、このあとは、別作品にします。





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