第10話

近づいてみると、野ねずみのおうちは、遠くから見たときには想像もつかないほど、りっぱな御殿でした。

2人が御殿の前に来ると、門番の野ねずみが言いました。

「お帰りなさいませ、王子様」

野ねずみは、この、穴の国の王子でした。

中から別の野ねずみが迎えに来て言いました。

「女王様がお待ちですよ」

御殿の中は、広々として、とても明るく、天井にはキラキラする素敵なシャンデリアが見えました。

床にはふかふかのじゅうたんがひいてあり、入ってすぐの壁にはむかしの王様や女王様の絵がかけられています。

また、ずっとむこうには金色の房がついた、赤いびろうどのカーテンが幾重にもかけられており、そこから案内の野ネズミが数ひきでてきて、うやうやしくお辞儀をしました。

2人が案内の野ねずみについていくと、白いレースがかかった小さなテーブルの上に、お茶の支度がされてありました。

2人が静かに席につくと、案内のねずみは、金のふちどりのある水色のティーセットに熱い紅茶を注いでくれました。横にはふかふかのマフィンもあります。

「おさとう、いれる?」

野ねずみの王子は、小さな道具で角砂糖をつまみながらみーちゃんにききました。

「うん、2つ入れてくれる?ありがとう」

紅茶を飲むと、水色のティーカップの底には、パンジーの花の模様があるのが見えました。

「ぼく、ママにも、探しもののことをきいてみるよ。」

と野ねずみの王子が黒い目をきらきらさせて言いました。

そうでした。もともとは、指輪を、探していたんです。

「女王様の、おなり!」

案内の声が響くと、カーテンがスルスルと開いて、金色の立派なレースの襟がついた、深緑色のドレスの女王様がやってきました。

「おや、かわいらしいお嬢ちゃん、おなまえは?」

女王様は気さくにみーちゃんの隣に座ると、にこにこしながら言いました。

「わたし、『みずほ』です。みーちゃんってよばれてます。」

「へー!お嬢ちゃん、みーちゃんっていうんだね。あのね、あのね、僕は、フィーだよ。フィーって呼んで。僕、みーちゃんってよぶよ。」

「うん。わたしも、フィーってよぶね。」

「あら、フィー、あなたはお友達のなまえもきいてなかったの?うふふふ」

「僕、すっかりきくのわすれてたよ。…ねえ、ママ、みーちゃんは、失くしものを探してるの。まるくて、まんなかに穴があいていて、赤くて、ぴかぴかしてるんだ」

「おやまあ、そうなの」

女王様は、ちょっと考えて、言いました

「そういうものなら、もしかしたらわたしの宝物の中にもあるかもしれないわね。ちょっと、見てみましょう。」



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