レベル279

『原始人T』

 ☆8・レベル1

 スキル:主砲、ロケット砲


 さて、海に沈んだティラノもどきや、その他、新大陸に居た恐竜達をゲットしてみたのだが……

 TやらPやらの省略記号が付いた原始人ばかりになった。

 戦艦の時と言い、最近のモンスターカード、手、抜きすぎじゃね?


 そういや前世のゲームでも、バージョンアップしたはいいものの、追加キャラは小出しで、最初は同じようなものばっか出してたかなぁ。


 ところでこの原始人達、どうしたらいいのだろうか?

 なにやら目の前で、熱いバトル繰り広げている。

 原始人のくせに、レーザー砲やらロケットランチャーのようなものを出現させて戦っている。


 異世界の原始人、ハイテクすぎじゃね?


 なお、バトルの頂点に立ったのは、最初にゲットしたティラノもどきだったようで、そいつの号令の下、森の中に入っていく原始人達。

 暫くして、巨大な獲物を担いで帰って来たかと思ったら、オレの目の前でそれを置いて平伏してくる。

 お供え物かな?


「ふむ……よし!」『出でよ! お料理セット!』


 エクサリーも暫くは楽器店を留守にするというし、海の向こうでも新たな食材に出会えるだろうと思って持って来ていた。

 そのお料理セットを使って、原始人達に料理を振る舞う。

 そしたら大層、喜んでバクバク食い始める。


「うむむ、独特のお味だね! 今まで食べたこともない風味だけど、結構いけるよ!」

「ガツガツガウ! ウマ~~!」


 お前らいつの間に、よし、オレも混ぜてもらおう。


 おおっ、恐竜のお肉って、てっきり硬い物とばかり思っていたけど、若鳥のお肉みたいに柔らかいな。

 しかも、牛肉なみのジューシーさがある。

 そういや一説では、恐竜って鳥の仲間に近いとか聞いた覚えがあるな。


 それが、巨大な体を持つことにより筋力が発達し、牛肉に近づいた感じなのか。


 これは病みつきになりそうだな!

 これは新大陸の特産品になるに違いない!

 よし、今日からオレはお肉屋さんになるぞ!


 その内、ギターちゃんの伴奏に合わせて皆で踊り始める。


 いつの間にか作られていた焚き木を囲んでキャンプファイアーのようになってきた。

 よっしゃ、オレもいっちょ、名曲を披露しようじゃないか!

 原始人達と共に歌って踊る夜が更けていく。


 翌朝、すっかり仲良くなったオレ達は一緒に朝食を取る。

 昨日は向こうの獲物だったから、今日はオレ達が持ち込んだ食材を提供した。

 一口食べた原始人達は、その食べ物を崇める様にして持ち上げ喜ぶ。


 おいオメエら、喜ぶのはいいが、それ持って踊ると冷める上に落とすぞ。


 今のところ、この原始人達はオレの言う事ならよく聞く。

 なんでだろな?

 ラピスと、こいつ等と何が違うんだ。


「知能が低いので、本能で従っているのでしょう」

「そうか? しかしロゥリの奴はまったく言う事、聞かないぞ」

「ガウガウ!」


「イダダダ、別にお前の悪口は言ってねえだろ! えっ、知能が低いって言った? お前、低い割には悪口には敏感だな、イダダダ!」


 と言う事は、知能が上がれば上がるほど、取り扱いが難しくなるって事か。

 ラピスの知能ゲージ、もうカードの端ぐらいまであるんだが。

 元がウサギの癖に随分と賢いな。


 そういやウサギって何かと賢いキャラクターにされがちだったような気がする。


 まあその分、調子に乗りやすいキャラクターでもあった気がする。

 いつか、とんでもない大ポカをやらかさないといいが。

 まあ、すでに色々やらかしているか。


「もっと注意したほうがよろしいかも知れませんよ」


 そう言って、意味深げに笑うウィルマ。


「アイツが今、何やってんのか知っているのか?」

「知りませんよ。ただ、あのウサギさんは、マキャヴェリズム、でしょうから」

「難しい言葉を知っているな。そういやウィルマの知能ゲージも竜王の中では突出しているか」


 ラピスがマキャヴェリズムか……

 確か、国家の為にならどんな非道な行為であろうと行う人達の思想を指すのだったか。

 目的の為に手段を選ばない、という意味では合っているかも知れない。


「問題は、今、何を目的としているか、という事だな」

「もしかしたら、とんでもない事を考えているかも知れませんよ?」

「…………ならばその目的を、こちらで誘導してみるか」


「ふむ?」


 そう例えばだ、この新大陸を一つの国家として樹立させるとかな。

 そしてその王様をラピスとする。

 ならばアイツの目的は暫くはこの新大陸に向くだろう。


「ここをラピス王国としよう!」


 どちらにしろ、見つけた以上は何らかの統治は必要になる。

 メタル船が発達すれば、オレ以外の人達もここに来られる様になるだろう。

 途中の島々を経由させれば、時空魔法での行き来も可能になるかもしれない。


「いいのかね? ラピス君にそんな権力を持たせても」

「だったら代わりにカシュアがするか? そうすりゃピクサスレーンからの王様要請も跳ね返せるぞ」

「うむ! 良い名だねラピス王国! 素晴らしい考えじゃないか! ボクはやんないからね!!」


 変わり身、早いな。

 新大陸、発見したのはいいのだが、後の事を考えてなかった。

 原住民が居れば、新たな交易先として貿易でも始めりゃ良かっただろうが、人が住んでないんじゃなあ。


 大航海時代のその後のように、奪い合って戦争が始まっても嫌だし、ラピスに任せれば、まあ、なんとかするだろう?


「あの恐竜達はモンスターより凶悪じゃね? 人間達が住めるのかよ」

「住める人間が出来ちまったからなあ」

「じゃあ全部、お兄ちゃんの所為なの?」


 チガウヨ? チガウヨネ?


「まあアレ、ツレテ帰るワケにもイカンワナ、シッシッシ」


 そうだなあ、せめて意思の疎通が出来るくらい知能をあげないとなあ。

 カシュアと同じで上がりにくそうではあるが。

 ここで住んでりゃレベルも上がりやすそうだけど。


 そう思いながら、恐竜達とバトルを始めた原始人達を遠い目で見やる。


「さて、あのウサギさんが国を手中にしたとこで『目的』が変わるとも思えませんがね」


 そんなオレを横目に、ウィルマは誰にともなく小さく呟くのであった。

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『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら ぬこぬっくぬこ @nukonukkunuko

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