レベル267

「えっ、何? ロゥリと勝負しろだって?」


 ある日突然、オレの元にやってきたニースとウィルマが、ロゥリと勝負をしろと言ってきた。


「やだよ、今のオレにはカードモンスターに対する弱体化つきなんだぜ」

「ガウガウ、オソレヲ、ナシタカ」


 えっ、いつもオレの方からばっかでずるい?

 偶にはロゥリからの勝負も受けろって?

 そんな事、言われても、負けると決まっている戦いをするのは……そもそも、このカードモンスターに対する弱体化ってなんなんだろな。


 ラピスが持っているオレのカードには『天敵・カードモンスター』と表示されている。

 創造神のくせに、自分が生み出したカードモンスターに弱体化があるとか。

 あっ、そういえば前世の神話では、神様っ奴は大概が、自分が生み出した存在によって滅ぼされてるよな。


 そんなとこまで再現しなくてもいいのに。


「そうだな……よし、装備品以外で誰か一人、助っ人を認めてくれるなら勝負をしてやろう」

「それはさすがにロゥリでも厳しいのではないか? 私やウィルマ、ラピスと同時では勝ち目が薄いだろう」

「ガウッ! タトエ、ダレガアイテデモ、ロゥリハ、カツッ!」


 まあまあ焦るな、助っ人といっても助っ人本人は戦わない。

 そもそもその助っ人は、攻撃力は皆無に等しいからな。


「ガウッ!?」


 そしていざ戦闘が始まったとき、オレの助っ人を見て驚愕の表情を見せるロゥリ。

 そう、オレが選んだ助っ人は、ダークエルフのサウ、であった。


「ヒキョウダゾ!」

「フッ、お前が、助っ人は誰でもいいって言ったんだぜ?」


 そして今のオレの姿は、サウの幻惑のスキルによって、ロゥリが一番懐いている、エクサリーの姿をとっているのだった。


 常にサウと共に変装していてスキルの熟練度が上がったせいか、気配まで本人と遜色がない。

 そんなエクサリーの姿をしたオレを、お前は攻撃できるかな?

 ロゥリが拳を振り上げてオレに向かってくる、しかし、その拳はオレの眼前でピタリと止まる。


 オラオラどうした、プルプル震えてるぜ。


 そしてさらに、


『パワードスーツ・ドラゴニックモード!』


 こないだパワードスーツが40レベルに達したのだった。

 そして現れた選択肢2つ。


 ・ドラゴニックモード


 と、


 ・フェンリルモード


 何やら鎧部分のモード変換が可能になったようだ。


 ドラゴニックモードはドラゴンのような形に変形して空が飛べるようになる。

 逆にフェンリルモードは、狼のような姿になり、地面を高速で駆ける。と思う。こっちは選択していないから予想だ。

 空を高速で駆け回りながら、聖銃ティニーの機関銃モードでロゥリを追い立てる。


 さあどうしたロゥリ、手も足も出まい。


「本当に勝ってしまいそうじゃのう……」


 良いのか? と少し離れて観戦している、本物のエクサリーを見ながらウィルマに問いかける。


「子種を貰うぐらい構わないでしょう。新たな竜王種の誕生は、何よりも優先されるべき事ですわ」

「うむむむ……まあ、ロゥリと主の関係は今更じゃしな。知らなかった事にしておけば問題はあるまい」

「何を知らなかった事にするのです」


 そこに、ひょっこりラピスが登場。

 飛び上がって驚くニース。


「ななな、なんでもないぞぉおお!」

「そんなに慌てなくても全部知ってますよ」

「えっ」


「ロゥリがそうなると、なし崩し的にも私にも……」


 そう言って考え込むラピス。


「お主、何を考えておる? 嫌な予感はどんどん上がるのぉ」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 その夜の事だった。

 なにやら下半身が涼しい。

 ふと目を覚ましてみてみると、ロゥリがオレのズボンをずらしてジッと見つめている。


「…………何やってるのお前」


 ガシッと掴む。


「イダダダ! やめんか! 突然何しだすんだよ!?」

「どうしたのクイーズ?」


 隣で寝ていたエクサリーが目を覚ましてそう言ってくる。

 そんなエクサリーに、とんでもないことを問いかけるロゥリ。


「ガウッ、ドウヤッタラ、コダネデル」

「えっ……?」

「クイーズトノ、コドモ、コサエル」


「誰が……?」


 自分を指さすロゥリ。

 うん、意味が分からん。

 えっ、俺より強いやつの子種がいる? さらに分からん。


「アダダダ、だからやめろ、そこはもっとナイーブに扱え!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「昨日の晩、えらい目にあったんだが――お前、何か知らねえか?」


 翌日、ラピスに問いかけてみる。


「ああ、なんでもお坊ちゃまは竜王種のお眼鏡にかなったようですよ」

「なんのだよ?」


 えっ、昨日ロゥリに勝ったから子供を作らないといけなくなった。

 だから意味が分からねえよ!


「なんでもロゥリは、自分の伴侶を探して、あちこちを飛び回っていたらしいですよ」

「ほうほう……あいつもお年頃なのかねえ。で、それとこれと何が繋がるんだ」

「察しが悪いですね、その伴侶にお坊ちゃまが選ばれた訳ですよ」


「オレ、竜種じゃねえんだが」


 あら、昨日ドラゴンに変身してたじゃありませんか。などと言うラピス。

 あれはただの変形だろ! しかも鎧が!


「まあ、ニースも人間の子供、狙っているようですし、竜種がどうとかは拘ってないんでしょ」

「いやそこは拘れよ」


 というかロゥリに狙われたら、ものすごくやばいんだが。

 万有引力で重力操作されたら身動きもできないし。

 昨日はそのあたりの知識がなかったから助かったものの。


「ならお坊ちゃまは何としてでも、ロゥリから逃げおおせないとダメですね。じゃないと浮気になってしまいますよ」


 万が一、ロゥリと浮気なんて事になったら……もちろん私とも浮気してくれますよね。などと耳元でささやく。


「なんでだよ?」

「一人も二人も一緒でしょ。そんな観念は一度崩れてしまえば……」

「おおい! お前なんて事言うの!? オレはエクサリーさん一筋だからな!」


「エロい方のロゥリに迫られても、同じ事、言えますかねぇ」


 ……ラピスさんお願いします、変なことをロゥリに吹き込まないでください。

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