レベル240

 レバーは飛行機の操縦桿のようになっており、回すと左右にサークルが動き、レバーを倒したり起こしたりすることで上下に動く。

 さらに、左右のレバーを開くように引っ張ればサークルも大きくなる。

 なんだか楽しいなコレ。


 お試しで何も無い所へ向けてトリガーを引いてみる。


 なにやら外が騒がしい。

 扉を開けて外に出てみると、興奮したサヤラさんたちが。

 空から光の柱が落ちてきたかと思うと、当たった地面が一瞬にして蒸発する。


 あとに残るは黒く焦げた大地のみ。


 というか、黒焦げどころかボコボコ泡だってるよあの地面……危ねえ、ちょっと迂闊に使えないな。

 なんでティニーの癖にこんなにレアリティが高いんだ。

 やっぱ二枚重ねが良かったのだろうか?


『癖にって失礼っすね!』


 なお、カシュアと同じようにこの状態でも会話は可能みたいだ。


「しかしコレ……単純に防御力上げれば核シェルターみたいになりそうだな」


 現時点でこんだけ威力あったら攻撃力に振る意味もないし。

 このシェルターの防御力を上げて、中に閉じこもって攻撃し放題。

 というのもアリかもしれない。


『さすがクイーズさん、毎回えげつない事考えつきますね』

「おいっ、オレをラピスみたいに言うのは止めろ!」


 あとあれだな(3)って数字があるってことは、今後レベルアップしたらもっと種類が増える可能性もあるのではないだろうか。

 そのうち、コロニーレーザーとかなりそうで怖いな。

 いや、サテライトの時点で十分脅威ではあるが。


 ただ一点問題があるとすれば、重いってことだな。


 サテライトキャノンやスナイパーライフルはまあ、地面に設置して使う場合がほとんどだから関係ないにしても、リボルバーは少々使いづらい。

 モンスターカードの性質として、姿が変わっても重量は変わらない、というのがある。

 小さなリボルバーの癖に人一人分の重量、くそ重いんですよ。


『クイーズさん、うちになんか含みでもあるんスかねえ』


 いや悪口じゃないんだよ?

 まあ重い分、ブレないんで狙いをつけやすくはあるんだがな。

 パワードスーツをオンにしていればどうにか扱えるか?


 なお、アポロは聖痕という実体をもたない存在になった所為か、別段重く感じる事は無い。


 リミットブレイク状態なら、右手にカシュア、左手にティニーという持ち方も可能かも知れない。

 そして、胸には聖痕・アポロ。

 剣と銃と魔法、これに鉱石Mの盾が加われば無敵だよな!


 うむ、鉱石Mの復活が待ち遠しい。


「キミも人間辞めるの?」

「辞めねえよ!」

「……別にパワードスーツに頼る必要もない。私が重力軽減の魔法を使う」


 なるほど、その手もあるわけですね!

 さすがアポロさん!

 冴えてらっしゃる!


「……もっと褒めて」

「でもその場合、アポロは他の魔法が使えないんじゃ?」

「………………きっとなんとかなる」


 ほんとですか?


「とりあえず一段落終わったようだから聞くけど、ベル姉はどうなったの?」

「………………」


 そうですね、そっちが残っていましたよね。

 いや、決して忘れていた訳じゃないんですよ?

 意識は戻っていたようだけど、あのまま放置はまずいよなあ。


 すぐにでも戻って、ローゼマリアかエフィールさんに、あの剣について聞いてみないと。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 なにか懐かしい夢をみていた気がする。

 うっすらと目を開けるベルスティア。

 バッと慌てて身を起こす。


「体が……動く?」


 周りを見渡すと、そこは王城にあるベルスティアの自室だった。


「もしかして、さっきまでのは全部夢……」

『目が覚めたかい、セニョリータ』


 その時、頭の中に何者かの声が響く。

 慌てて、さらに辺りを見渡す。

 そしてそこに、この部屋には存在しえない物を見つけてしまう。


「邪王剣ネクロマンサー……」


 部屋の片隅に立てかけられている抜き身の黒い剣。


 それは、代々のファンハートの王が腰に差している王家の魔剣。

 それとまったく同じ見た目。

 しかし王家の剣はレプリカであって本物ではない。


 本物は……


 先ほどまでの事は全部、現実……私はあの剣に操られて……

 そういえば、あの魔法銃を構えていた少女はどうなったのだろう?

 手に突き刺さった針のような何かの所為で、致命傷は免れたはずだけど。


『ああ、どうやら助かったようだぜ。ゾンビウィルスを大量に仕込ませたってのによぉ、いったいどんな手品を使った事やらなぁ』


 それを聞いてホッとした表情を見せるベルスティア。

 そんなベルスティアは自分の体を確かめる。

 あの時のように体の自由が利かない場所はないようだ。


 ベルスティアはベッドから立ち上がると、できるだけ邪王剣ネクロマンサーに近づかないよう迂回して出口を目指す。


『どこに行こうとしているんだいセニョリータ』

「あなたにセニョリータなどと言われる所以はありません!」

『つれないこというなよぉ、俺達はコレから、一心同体で生きて行くんだからなぁ』


 誰があなたなどと。と、呟いて後ずさる。


『お前様の記憶は全て見させてもらった。どうだい、俺様を使っちゃみねえか? 理想の世界、作れるかも知れねえぜぇ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る