レベル181
そんな光と共に現れた、露出度の高い美女に会場は大興奮。
剣聖の儀ってことで、お客は野郎比率が高い。
そりゃもう盛り上がるのなんのって。
そんなラピス、片手を高々と上げて叫ぶ!
『来たれ! 聖剣ホーリークラウン!』
すると目の前に、光の柱と共にグラマラスな美女を形どった虹色の輝きが天から降りてくる。
その輝きは、ラピスの前まで来ると一本の剣へと姿を変える。
ラピスがその光の柱の中に手を入れ剣を掴む。その瞬間! 虹色の光の奔流が剣から放たれる!
カシュア、おめえまで……
と、いつの間にか地面に刺さっていた、一本の剣を剣聖に向けて投げるラピス。
「まあ私達からすれば、ローゼマリアが貴方達を雇って竜王ホウオウを倒したことになりますし、これはその報酬と言うことでどうでしょうか」
なんでも、今朝ようやく呪いが解けたそうだ。
「この妖刀ムラサメを私にくれると言うのか……」
「それだけじゃ不満ですか?」
「いやいや何をいう! 十分過ぎるほどだ!」
ラピスがこそっと、これで竜王の所有権は私達にあるという事に。と呟いている。
どんな話し合いがあったか知らないが、剣聖さん、嵌められていますよ?
「ガウガウッ!」
えっ、おめえも登場シーンが欲しい?
ふむ、ドラゴン(大)になって会場の隅で睨みを聞かせてろ。
たぶんそれだけでもワーキャー言われるわ。
突然現れたドラゴンに、会場はパニック状態に。
さすがの剣聖さんも冷や汗を流している。
「ご心配なく、戦うのは私だけですから」
そう言って、虹色の軌跡を伴いながら剣をひと振りする。
ついでにパワードスーツも使うか?
えっ、見た目が悪くなるからやめときます。だって?
コイツ、完全にこの戦いをエンターテイメントにするつもりだな。
剣聖さんもそこの辺りは心得たらしく、未来予見のあるラピスに対し、亀の様に動かない戦法はとらない。
次々と神速の斬激を繰り返す。
ラピスは時にスピードを生かして避け、避けきれない場合は、テンカウントで消える。
テンカウントについては剣聖も竜王戦で目にしているので、ソレを見るとすぐにその場所を離れる。
ラピスがホーリークラウンで敵の攻撃を受け止めるたびに、虹色の光の飛沫が発生する。
ただ受け止めているだけなのに、もの凄く派手に見える。
あんなエフェクトあったっけかなあ……
そんな戦いが、10分、20分と続く。
少しずつ、ラピスも攻撃を加え始める。
……やはり、剣聖の弱点は、スタミナか。
剣士の戦いなど、たいがい一瞬だ。
あんなに激しく打ち会うことは、まずない。
普通の武器なら一瞬で刃こぼれしてしまう。
しかし、伝説級の武器ならば話は違う。
剣聖だって、あの武器じゃなければもっと違った戦闘方法をとっただろう。
ラピスの奴が、態々戦いの直前に渡したのはこれを見越してかもしれない。
対して冒険者の戦いは、下手をすると一日中かかるときもある。
敵のタフさが、文字通り人並みはずれているからな。
戦闘方法すら変わってしまうぐらい扱い馴れない武器を渡し、豊富なスキルでじっくりと追い詰めていく。
それは、自分の土俵に敵を引きずり込む戦法……アイツも人の事、言えねえじゃねえか。
とはいえ、エンターテイメントとして見れば良く出来ている。
あちらさんから仕向けてくるように雰囲気を作り出し、地味に見えがちな持久戦を派手なエフェクトでごまかしている。
まったく、オレが冒険者対剣士なら、アイツはエンターテイナー対剣士だな。
そんな圧倒的に不利な持久戦、とうとうラピスの一撃に片膝を付く剣聖さん。
そしてそんなスキをラピスが見逃すわけも無く。
ラピスの剣が剣聖の首を刎ねる! 瞬間に剣が光と成って散らばった。
あわや剣が当たるかといった時に、装備を解除した模様。
「私の勝ち、でよろしいですよね」
「……うむ」
静まり返っていた会場が一瞬にして沸く。
会場の皆さんは、なにやら大興奮だ。
こんなハイパフォーマンスな娯楽は見た事が無いだろう。
その所為か、だいぶハイになっている。
あれほど恐れていたホワイトドラゴンによじ登っている人まで見受けられる。
ロゥリが迷惑そうな顔をしているが、振りほどいたりはしていない。
えっ、体を這い上がってくる蟻のようで気持ち悪い?
おめえが登場したいって言ったんだろ。我慢しとけ。
「ふう、しかし、こうも立て続けに敗れるとは、剣聖の名折れだな」
「そんな事ありませんよ。戦っていて、もしあなたがお坊ちゃまの敵に回ったらと冷や汗がでたほどです」
「うむ、確かに素晴らしい戦いだった。私にも参考になる点がいくつもあったほどだ」
ええ、ほんとうに、この世界には、まだまだ私の及ばない領域があるのですね。と、なにやら陰のある表情で呟くラピスであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ちょっとラピス君、あの時、本気で首を刎ねるつもりだった?」
あの剣聖の首を刎ねる瞬間、装備を解除したのはラピスではなくカシュアであった。
「そんな訳ないでしょ。私にはあなたの考えも読めるのですよ、ああなるのは分かっていました」
「それにしてはなんか本気度が違ったような……」
私も45レベルになったからといって、少々天狗に成っていたようです。
もし土俵が同じなら、いえ、今後、もう一度戦う事があるのなら、私はきっと負けてしまうでしょうね。
ふと戦闘中に、もし、この男がお坊ちゃまの敵となったら……今なら、と思ったかどうかは内緒です。
などと怖い事を言う。
「うん、聞かなきゃ良かったね!」
「ですから私もあなたも、もっと戦ってレベルを上げる必要があるという事です」
「本当に聞かなきゃ良かったよ!」(泣)
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