レベル180 スーパースター・ラピス!

「やってられるかよ!」


 オレはパワードスーツを解除する。ついでに鉱石Mをカードに戻す。

 そして壁の近くにあった木刀を剣聖に投げつけた。

 真剣でなんてやりあえるか!


 万が一、なんかあったら取り返しがつかないだろ!


「ほう……装備を放棄して、剣、のみで戦うか」


 中々見所のある男だな。と言ってくる。

 冗談じゃないッスよ。なんで真剣でやりあおうとするの? どっちか死ぬだろ。

 えっ、それが剣聖の儀だって?


 だからオレは剣聖に……えっ、コレ、次代の剣聖を決める儀式なの?


 ラピスがグッと親指を立てた拳をつきだしてくる。

 いやおめえ……

 やんねえつっただろ!


 勝っても罰ゲームが続くだけだろ!


「そこに立った時点で勝負はもう始まっています。諦めてください」

「おめえ、嵌めやがったな」

「良い機会ではないか、剣術とは、強い相手と切磋琢磨してこそ、更なる向上が見込めるものだ」


 くっそあのハラグロラビット、後で覚えとけよ!


(しかし不味いですね、さすがにリミブレなしでは勝てませんよね?)

(まあ良い経験となるであろう。これを切っ掛けに剣の道に目覚めてくれるやもしれん)


 聞こえているぞ、そこの二人。

 そんな道なんて絶対に目覚める事は無い。

 オレは将来、エクサリーさんといちゃいちゃして過ごすんだ!


 そんなオレの抵抗も空しく、剣聖との一騎打ちが始まってしまう。


 目にも留まらぬ速さで斬りかかってくる剣聖に、オレは背中を向けて一目散に逃げ出す。

 会場の全員が、えっ、て感じで目が点になる。

 そしてオレは壁際まで来ると剣を構えて剣聖の方を向く。


 強敵を前にして戦うなら、壁を背にして戦うのは鉄則だろ。


 えっ、そんなの剣士の戦いじゃない?

 バカ言ってもらっちゃあ困る。

 剣士? オレは冒険者だぜ、これが冒険者の戦いだ!


 ダンジョンでは自分の実力以上のモンスターに出会うことはしょっちゅうだ。

 そういった時、どうするか。

 もちろん逃げる。


 だが、時と場合によっては逃げ切れないこともある。


 そんな場合はどうする?

 出来るだけ自分に有利な場所へ誘導するんだよ。

 数が多いなら狭い通路へ、巨大な獲物を持っている奴なら、障害物の多い場所へ。


 相手の装備が木刀や棍棒なら壁を背にするのも有効だ。

 それで突きや、大振りな攻撃は出来なくなる。

 なにせ壁に当たるからな!


 無理して攻撃したら壁に凸って手を故障したりもする。


「お坊ちゃま……」

「………………」


 ペンテグラムの奴が額に手を当てて空を仰いでいるが、知ったこっちゃない。

 勝てばいいんだろ、勝てば!

 冒険者にとっちゃ、名誉の戦死なんてクソの役にも立たないんだぞ!


 と、なにやらヒラヒラとタオルが投げ込まれる。


「はい、お坊ちゃまの不戦敗です。まったく、ちょっとは空気を読んでくださいよ」


 えっ、観客の人達がドン引きだって?

 だったらおめえが戦えよ!


「仕方ありませんね」


 そう言うと、なにやら運営委員の人が居るらしき場所へ向かうラピス。


『え~と、只今の件ですが、挑戦者は剣士ではなく冒険者だとの事。なので剣聖の儀は取り止めになります』


 そうアナウンスがされる。

 会場の皆さんからブーイングが飛び交う。


『代わって、その冒険者と剣聖、どちらが上かの模擬戦を行う事になりました』


 ん? 会場の皆さんからも頭に? が浮かんでいるかのようだ。


『竜王ホウオウを倒したという、冒険者クイーズ! その彼が、その力を持って剣聖ゴウキへ挑みます!』


 さあ皆さん、見てみたくはありませんか? かの竜王を倒したその手札を!

 何時の間にか、ラピスがアナウンサーに成り代わっている。


「さあお坊ちゃま、舞台は整いましたよ」


 えっ、一旦戻してカード召喚から行う?

 なんで?

 いいからやれって?


 オレは再び、剣聖と相対する。


 ただし、今回戦うのはラピスだ。

 竜王を葬ったオレのスキル、モンスターカード。

 そのモンスターカードから生まれたラピス。


 その力がどこまで通用するか。これはそういった戦いということらしい。


『モンスターカード!』


 そう言ってラピスのカードを呼び出す。

 会場の皆さんから、おおっ、という驚きの声が上がる。

 ふむ……よし!


 オレはそのラピスのカードを、観客に良く見えるように片手で高々と掲げ叫ぶ。


『出でよ! スーパースター・ラピス!』


 そのカードが光の欠片となって弾け飛ぶ!

 その光が前方少し上方に向かって集っていき、バニーな美女のシルエットを形どっていく。

 そのシルエットが回転するたびに、足元から光が弾け、艶めかしい美女の体が現れてきた!


 最後に虹色のフラッシュと共にキメポーズをとるラピス。


 どこの魔法少女もんだよ? おめえ、そんな登場の仕方が出来たんだな……

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