レベル150
「ふうむ……モンスターカードというスキルか……」
「これらの者を召喚して使役していると? どう見ても人間にしか見えぬ者が居るだが」
そこでは、前回の闘技大会の映像が魔道具より映し出されている。
「しかし見たところ、中立国であるそなたらが、危険視して我々に情報を伝えるほどではないと思うのだが」
ここに集っているのは、北の聖皇国に敵対する、南の国々の重鎮達であった。
「確かに才のある者共のようだが……アレぐらいなら、Sランクに足を突っ込んだ程度であろう」
「うむ、それよりも先に見せて貰った、オーガの砦爆破の方が大問題ではないか」
「フロワース、説明を」
「ハッ!」
部屋の隅で座っていたフロワースが立ち上がる。
まずはモンスターカードのスキルについての説明をする。
モンスターカードとは、過去に存在しない初出のスキルである。
モンスターをカードの様な紙切れに取り込み使役する、簡単に言えば、それだけのスキルである。
そう言って、机の上にラピス、カシュア、スラミィなどが描かれたカードを置いていく。
「これは実際に本人が持っていた物を模倣したものです」
小さく、軽い。
持ち運ぶには持ってこいのサイズである。
「それならばまだ、召喚、というスキルがあろう」
フロワースは一枚のカードを手に取る。
「召喚、には魔力が必要でしょう。一人が呼び出せる数は知れています」
しかし、このカードからモンスターを呼び出すには魔力が必要ない。
同時にいくらでも呼び出す事が可能である。
「ふうむ、街や城の中に入られて一気に呼び出し……確かに脅威ではあるな」
「そうです、一気に呼び出し、が可能なのです」
そしてさらにカードを取り出し、机の上に並べる。
そこにはクイーズが未だゲットしていない、様々なモンスターが描かれている。
「今はまだ、これらのカードはないでしょう。しかし、たった一年で10枚以上のカードが増えています。この先いくつ増えるか想像もつきません」
さらに、と続ける。
「カードに取り込めるのはモンスターだけとは限らないようです。先に見せたオーガの砦を破壊した魔法……どうやら水の精霊が係わっている模様」
「精霊……だって?」
そして、本当の脅威は……アレらの戦力を量産できる。という事ではないでしょうか。
「アレを量産、だと!?」
俄かに会議の場が騒然となっていく。
「しかも、過去の偉人、をも復活できるとしたら」
フロワースがさらに一枚のカードを差し出す。
クイーズ卿の参謀であり、実質、今のヘルクヘンセンを支配しているダンディと言うこの男。
……実は、ピクサスレーンの初代国王がアンデット化した者ではないかという噂がある。
「お、恐れ多いことだ……」
次にフロワースは、このモンスターカードのスキルを持っている、クイーズと言う人物についての説明に移る。
ヘルクヘンセンの公爵家に生まれつき、10歳の時にスキルを解放。
その後、盗賊に攫われ隣国ピクサスレーンに奴隷として売られる。
その2年後、ピクサスレーンの王都を襲ったドラゴンをたった一人で仕留め、史上最年少のドラゴンスレイヤーとなる。
さらに魔都サンムーンを解放し、ピクサスレーンに攻めて来たヘルクヘンセンの軍隊を撃退、返す刀で一気に王都まで攻め込み、ヘルクヘンセンを手中に納める。
「どこの英雄だそれは?」
「経歴だけ聞けばとんでもないな、なぜ今まで、あまり話題にならなかったのか不思議なくらいだ」
「本人が前面に出る事は、ほとんどなかったからですね」
ドラゴンスレイヤーの称号を持っても、それを使う訳でもない。
魔都サンムーンの解放に至っては、いまだ公式発表さえされていない。
ヘルクヘンセンとの戦闘も短期間に終わり、戦禍もほぼなく、本人が戦場に立ったのは最後の仲裁の時だけと言う。
「ドラゴン討伐の時はこのラピスと言うカードを。魔都サンムーンではカシュア、ヘルクヘンセン戦ではダンディ、それぞれのカードを用いたとしたら」
「数々の強力なモンスターを使役し、国をも落とすか……まるでそれは、御伽噺の魔王ではないか」
「天啓のスキル、と、どっちが上か。こんな事なら予定通り攫っておけば良かったか」
ふと、会議のメンバーの一人がそう呟く。
フロワースが怪訝な表情でそちらを見やる。
「おっと口が滑ってしまったな。なに、このクイーズとか言うもの、幼少は天啓のスキル持ちではないかと噂されていた人物でな」
少々工作を行いスキル解放を早め、幼い内に迎え入れても良いかなと思っておったのだ。と言う。
「……その話は聞かなかった事にします」
「ちょいと待たれよ。何気なく使役されているモンスターだという事であまり重要視されていないようだが……この聖剣の担い手というスキルは見過ごせんのだが」
一人の老人がカシュアのカードを手に取っている。
「ワシが知る限り、このスキルは史上二人目、しかも、先代は聖皇国を打ち立てた者であろう、これは天啓どころの話では、ないのではないか?」
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