レベル139

 さて、お祭りにはまだ少々の余裕がある。

 カユサルの奴は貴族の催しの消化に行った。

 なので、オレはいつものメンバーでレベル上げに行く事にした。


 パワードスーツのレベルも上げないといけないしな。

 ちなみに、このパワードスーツ、レベルが10になって、備考欄の魔法無効のかっこ内がエリアからエリア・調整可能になっていた。

 範囲が広がった上に、その範囲を0から100%まで調整が出来るようになっていたのだった。

 これでアポロが近くに居ても問題は無くなった訳だ。


「じゃあこうやって、くっついて居ても大丈夫って事ですよね」


 そう言ってピタッと寄り添ってくるサヤラ。


「……うん、そういうこと」


 逆サイドにアポロさんまでくっついてきた。

 きみたちぃ、そんなにくっついていると動けないじゃないか。


「そんな事言って顔がデレデレっすよ?」


 なんなら、うちもくっついてあげましょうか? って言ってくるティニー。


「あっ! なんすかその視線! ひどいっ! ひど過ぎるっす!」


 いや、そうじゃない! 偶々! たまたまっす!

 しかしお前、ほんとに胸無いな。ヒデブッ!


「ちょっとそこ、遊んでないで。向こうで戦闘音がしますよ」


 ラピスがそんなオレ達を呆れたような目で見ながらそう言ってくる。

 どうやら、ダンジョンの奥の方で誰かが戦っている模様。


「どうやら苦戦しているようですが、どうしますか?」

「とりあえず見にいって、加勢が必要だというなら手助けする事にしよう」

「了解しました」


 ダンジョンの奥では、6人ぐらいのパーティが、多数のモンスターと戦闘を繰り広げていた。

 まるでボス戦のように、幾多の雑魚モンスターと数対の強力そうな鎧騎士、さらに巨大なリビングアーマーらしき存在がいる。


「君達! ここは危険だ! すぐに逃げるんだ!」


 オレ達を見かけた、その冒険者達がそう叫んでくる。


「加勢は必要ありませんか?」

「くっ! そりゃ猫の手も借りたいけどね! いいから早く逃げな!」

「え~と、こう見えてもAランクパーティなので、アレ位は片付けられますが?」


 ラピスのその言葉を聞いて思わず隙が出来る、前衛の方。


「おっと危ない」


 モンスターの剣がその男性に届く寸前、オレの鉱石Mが伸びてそれを阻止する。


「なっ、何だコレは!?」

「もう一度聞きます。加勢は必要ありませんか?」

「どうするリーダー?」

「……Aランクが本当というのなら、後衛だけでも連れて逃げてくれないか」


 後衛の人達が驚いた顔で、そう言った人物を見やる。

 そうして口々になにやら言い争っている。


「いいから行け!」

「そんな行けないっすよ! トラップに掛かったのは俺の責任なんすから!」


 どうやら、罠に掛かってボスモンスターが召喚された模様。

 責任を感じて、スカウト役の人が自分は残ると言い争っている。


「分かったわ……、行くわよトライウ」

「そんな! あねさん!」


 後衛の女性が、息も絶え絶えになっている人物を抱きかかえて下がってくる。

 ちょっと後れて、唇を噛み締めていた少年も後を付いてくる。


「酷い怪我だ……カシュア、頼めるか?」

「うむ、任してくれたまえ!」

「今は回復より、一刻も早くあいつらから遠ざかることを考えてください」


 前の方に居る雑魚はともかく、後方の鎧騎士達はかなりの強敵らしい。


「貴方達は見かけない顔ね……そう、他所の国から……私達はここらじゃちょっと有名でね。それでもこの様よ」


 なんでもSランクパーティとか。

 えっ、そんなにあのモンスター達強敵なのか!?

 Sランクパーティが尻尾を振って逃げるぐらい?


 Sランクと言えば今のラピスですら敵わない。

 ピクサスレーンのお姉さん、その昔、オレが必死で一太刀入れたモンスターを、あっさりと細切れにしていた。

 今ならあの時のモンスターもやれない事はないだろうが、それでも細切れは無理だろう。

 それほど、Sランクとは異常な存在だ。


「なんとか時間を稼げないかラピス」

「どうでしょうかねえ……ん~、あんまり強く見えないですけどね」


 なにやらモンスターをスカウターで測っている模様。


「とりあえず応急処置はすましたよ!」

「よし、じゃあラピスとカシュアは足止めを頼む!」

「ええっ!」


 大丈夫、やられそうになったらカードに戻ればいいから。

 アクアも付けておくから、多少は持ちこたえれるだろう。


「こっち二人、足止めをさせますんで、貴方たちも下がってください」

「な、何を言っているんだ君は!」


 なにやら前衛の方が怒っていらっしゃる。

 同じパーティメンバーなのにそれはないだろうと。

 説明している時間はないんだけどなあ。


「ハリス、あたいは下がらせてもらうよ……まだここじゃ死ねない」

「生きる可能性が有るのなら、なんにでも縋り付く」


 前衛の三人のうち二人が、そう言って下がって来る。

 代わりに前衛に出るラピスとカシュア。

 え~と、ハリスさん? ですか。貴方も早く下がってください。


「そんな事出来る訳がないだろう! 女性を二人囮にして逃げるだなんて僕には出来ない!」


 仕方ない、ちょっとそこのハリスさん、殴って気絶させてくれないか?

 えっ、大丈夫? だってやっぱり雑魚だって?

 ラピスがスパン、スパンとモンスターの首を刎ねていく。


「た、確かに、前の方に居る奴は雑魚だ! だが、あの後方の鎧騎士は魔法も効かない、攻撃だって、この剣でも傷をつけるのがやっとだ!」


 と、ドカーンって吹っ飛ぶ後方の鎧騎士。

 アクアの水蒸気爆発が炸裂した模様。

 うん、アレ魔法じゃないからね。化学反応だから。うん、十分ダメージになっている模様だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る