レベル140

「ちょっとアクア、私にも残しといてくださいよ」


 ボロボロと破片となって降り注ぐ鎧騎士。


「えっ、ボスはもらっていいかって? う~ん、じゃあ雑魚の鎧騎士は差し上げます。ボスは私がもらいます。えっ、横暴だって? 仕方ないでしょ、アレ爆発させる威力だと洞窟が崩れかねませんから」


 うん、大丈夫そうだな。

 言うほど強力な敵でもなさそうだ。

 じゃあオレも、経験値を稼がせてもらおうかな。


「それならボクは下がっていてもいいかな?」

「ああ、アポロ達の護衛を頼む」

「任せてくれたまえ!」


 カシュアと交代に前衛に出る。

 なんだ、ほんとに大した事無いじゃないか?

 あのお姉さん脅かしやがって。


 ラピスが後方の巨大鎧騎士に踊りかかる。

 正直勝負になっていない。

 動きも遅いし、魔法も使ってこない。


 防御力は高いんだろうが、ラピスの持っているドラスレに掛かれば、防御力は正直関係ない。

 なんでも斬れるし。

 ラピスの素早さにドラスレの攻撃力が合わされれば、防御力が高いだけの敵は相手にならない。


 ちなみにオレの武器は鉱石Mだ。

 普段は指輪にして指にはめている。

 攻撃するときは剣に、防御するときは盾に変形させて使っている。


 最初の頃は変形速度が遅くて、とっさに使えないものだったが、スキルの熟練度が上がったのか、最近ではそこそこの速度で切り替えることが出来るようになった。

 まあ、まだまだスラミィの速度には到底及ばないがな。

 というかアイツ、もう目で追えない速度で変形しているから、追いつける気はしなくなってきた。


「クイーズさん、なんかあの武器、使うようになってからカッコ良く見えるよね」

「そうッスね。カタナ、でしたっけ」

「…………元々クイーズはかっこいい」


 どうせ自由に形を変えられるならと、見た目を日本刀にしている。

 これが結構切れ味がいいんですよぉ。

 擬態で変形させた場合、やはりというかなんというか、イメージに大きく左右される。


 ロボットを作り出しても、中身まで詳細に考えないと動かない。

 コクピットすら開かない。ただのプラモデルでござる。

 だが、日本刀ならどうだ。


 作り方に関しては、本である程度知っている。

 作成過程は大変だが、変形で作り出すなら構造さえ理解できていれば問題ない。

 問題は、素材が単一物って所か。


 日本刀の『折れず、曲がらず、良く切れる』の原因ともなる、粘度の違う二つの素材を重ね合わすことは出来ない。

 そして日本刀は実は実戦向きではなかったりもする。

 刃こぼれがしやすく、刃物同士で切りあうのはもっての他だ。


 だが、我等が鉱石M、刃こぼれしても瞬時に直せる。擬態、超便利。


 即ち、砥石要らず! 切れ味は常に白ゲージ、マックスという訳だ。

 そしてパラメーターは防御力にガン振り、即ち、折れず、曲がらず、非常に強固である。

 うん、切れ味の部分が刃物加工なので、攻撃力に振ってもダメージが上がらなかったのは内緒だ。


 しかし使いづらさは否めない。

 刀はちゃんと引いて斬らないとダメージにならない。

 西洋刀のようにぶっ叩く使い方は出来ない。


 じゃあなんで、こんな武器使っているのかだって? そりゃおめえ……かっこいいからだろ?

 ほら、女性ウケもいいし。ちょっとくらいオレだってキャーキャー言われたい!


「お坊ちゃまは行動が不純ですよね」

「むしろ、不純な動機がないのに戦闘する奴の方が怖いと思うんだが」


 などと軽口を叩きながらモンスターを一掃していく。

 すでにボスモンスターはラピスが討伐済みだ。

 残りはほぼ雑魚のみとなっている。


 ん、さっきまで文句言ってた前衛の方、剣を構えたまま硬直しているぞ?


「きっ、君たちは、ほんとにAランクなのかね!?」


 えっ、そういや最近更新いってないな。

 今ならSとれそうな気もする。

 今度ピクサスレーンに戻った時にギルドに寄って見るか。


「ぴっ、ピクサスレーン、だって!?」

「どうりで……」


 えっ、ここいらのSランクはピクサスレーンじゃBランクにも及ばない?

 なんだランク詐欺か。


「そりゃ国によって基準が違うのは当然だろ? ピクサスレーンでは、生きているだけでBランククラスだと聞いた事がある」


 いやさすがに普通の人は戦闘していませんよ?

 まあ、草原に一歩出れば、さっきの小さい方の鎧騎士並はざらに出るけどね。


 ん? どうしたアクア。

 えっ、ちょっと試したい事がある?

 爆発はダメだぞ? 違う? ふむ……ああ、いいぞ。


「ラピス、ちょっと下がっていてくれないか?」

「了解しました」


 アクアの正面に水の膜ができる。

 それがブワッと霧のようになってモンスターを覆いつくす。

 するとだ、霧の中からすごい悲鳴が!


「ストップ! ストップ! お前、何やったの!?」


 えっ、高熱の水蒸気を吹き付けた?

 水蒸気爆発のダメージで、一番被害が多かったのが、高熱の水蒸気をかぶった火傷だったので、その部分だけ作り出せないかと考え付いたらしい。

 そうすれば爆発の被害を出さずに敵を沈黙させられると。


 うわぁ……ひでえ、焼け爛れてうごめいている無数の肉槐が……


 前面一斉攻撃で逃げる場所も無く、かつ地形には影響を与えない。

 だが、これはどうなんだ? いくらなんでも人非道すぎやしないか? えっ、火炎で焼くのも大して変わらないって?

 そうなんだけど、そうなんだけども。


 うん、気持ち悪いんで、やっぱこれは禁止ね。

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