レベル104

 いろいろな事を気づかせてくれたお礼だ。と言って、とりあえずご飯を奢る事に。

 お勧めの食堂に案内してもらう。

 おっ、うめえな。エクサリーも連れてきたらよかった。


 えっ、エクサリーさんはどうしたかって?

 宿の方でハーモア達の面倒をみてもらっている。

 あいつら目を離したら何しでかすか分からないからな。


「つか兄貴、今は何してるんスか?」

「ん、冒険者?」


 冒険者だよな?

 店は基本エクサリーにお任せだし、政治はダンディが全部仕切っている。

 オレがやっている事と言えば、ラピス達のレベル上げの為のダンジョン攻略。


 ……べ、別にヒモって訳じゃないよね!?


 冒険者も職業ダヨネ?

 依頼とか受けてないから、あんま金になる事ないけど。

 やばい、最近ギルドにも顔を出していない。

 いつの間にか死亡扱いになってて除隊されていたらどうしよう。


「まあ別に、今更、冒険者にこだわる必要もありませんよ」


 そこへ、ボコボコになったカシュアを引き連れたラピスがオレ達と同じテーブルに着く。

 おめえ、その姿、もういいのか?

 えっ、今更帰って着替えて来るのも面倒だから気にしない事にした?


 最初からそうしとけばいいのに。アベシ!


「向いてないんじゃないスかそのスキル。兄貴にはモンスターブリーダーは無理じゃないかと思うッス」


 ラピスにチョップされているオレを見ながら、そんな事を言うレンカイア。

 うん、オレもそう思うわ。

 ラピスなんて可愛いほうだぞ、他の奴はマジ噛みしてくる奴も居るからな。


「ところでお坊ちゃま、一つ相談があるのですが」


 ふむふむ、モンスターの情報を集めるため、骸骨の知り合いに会いに行く?

 あの引き篭もりの骸骨に知り合いが居るのか?


「300年ぐらい前には居たそうですよ。今は生きてないでしょうけど」

「それ、会いに行く意味があるのか?」


 ほうほう、比較的人間に友好なモンスターだって?

 会いに行って現在のモンスターの勢力圏などを聞きだしたいと。

 どんなモンスターなんだ?


 えっ、エルフだって!?

 居るのかエルフ!


「エルフならオレッチの実家の付近にも居たッスよ」

「マジか!」


 いや、エルフが居るならオレも一緒に行くぞ!

 ぜひ見てみたいエルフ!

 モンスター枠なら、あわよくばゲットしたいエルフ!


「確かにゲットしてみるのも手かもしれませんね……ただ……」


 お坊ちゃまの思っているエルフとはちょっと違いますよ。と言うラピス。

 どう違うんだね?

 説明するより見てもらった方が早いですね。と言って、料理の注文だけして店を出て行くラピス。


 暫くして一冊の本を手に持って帰ってくる。


「これがこの世界のエルフです」


 えっ、コレがエルフ?

 緑色の肌にずんぐりむっくりな体型。

 頭には小さな角まで生えている。


 どうみても……これ、ゴブリンじゃね?


「エルフはゴブリンの一種ッスよ」

「マジでか」


 ただエルフの特徴は押さえているらしく、長い耳、ゴブリンの癖にフサフサの髪、顔の作りはイケメンぽく見えない事もない。

 つ~か、ジッと見てるとイラッて来る見た目だな。

 なまじ顔の作りがマシな分、他の部分とのアンマッチ差が、こう、なんていうか……キモさを際立てているというか。


「主食は魚っす」

「マジでか」


 なので、海岸沿いでしか生息しないそうな。

 なんでもこの世界のエルフさん、森を大層敬っているらしく、森で採れる恵みには一切手を付けないという。

 でもそれだと、森を荒らしている人間とは相性が悪いのではないだろうか?


「必要以上に森を傷つけなれば大丈夫ッス。むしろ、森の恵みで暮らしている動物達も森の一部だと思う傾向にあるッス」

「マジでか……色々変わっているなエルフ」


 森が存在する為には植物だけでは成り立たない。

 種を運ぶには動物の力が必要になる。

 植物だけでは土地は枯れてしまう。


 虫が居て、動物が居て、人間が居て、その全てが森にとって必要なものであり、それらを含めた全てを森と言うのだと。


「なので人を襲うことはないし、それなりの態度で接すれば友好的な面もあるッス」


 なるほどなあ。


「で、ゲットされますか?」

「いやコレは要らない」


 む、いや待てよ……確かに見た目はゴブリンだ。

 だが、オレのカードはゴブリンをゲットしからといって、ゴブリンになるとは限らない。

 しかもだ、オレの前世の影響がモロに出る。


 もしかしたら……


「お坊ちゃまの知るエルフになるかもしれませんよ」


 おお!

 試して見る価値はあるんじゃないだろうか?

 オレが知るエルフと言えば、魔法に精通してかなりの戦力になる存在だ。

 うちのメンバーで魔法使い役は居ないので、ちょうどいいかも知れない。


 ついでにレンカイアの故郷に行って、状況を確認しておくのもアリかも知れないしな。


「お坊ちゃまはほんと、おせっかい焼きですね」


 別に悪い事じゃないからいいだろ。


「ところで兄貴、隣で、メニューの端から端までって言ってる女性が例の護衛なんスか」

「ああ、ちなみにコイツもモンスター? な」

「えっ、……」


 ん、なにやらレンカイアのトーンが少し下がったような気が。


「あっ、居たぞ! やっぱハーの鼻の方が優秀だろ!」

「ガウッ!?」


 そこへ二匹のロリ娘がお店に入ってくる。


「おいお前! ハーをあんな怖い人間に預けていくなんてどうかしてるだろ!」

「ガウッ!?」


 ロゥリがハーモアの方に向かって、エクサリーは怖くない。と言っている。

 いや怖いだろ? まだ竜王ハイフレムの方がマシだと思うくらい。と反論するハーモア。

 そしたらロゥリが、竜王ごときと比べるのが間違っている。と、これまたどっちだよって発言をしている。


 よしたまえ君達。後ろで般若が泣いていますよ?


「も、もしかして、このちびっ子達も……」


 なにやら驚愕の表情でロゥリ達を指差すレンカイア。

 うむ、オレのモンスター達? でございます。


「あ、兄貴のスキルって……モンスターを女の子にするスキルだったんスか!」

「えっ?」


 えっ、いやちがっ……う事もないのか?

 いやいや、女の子以外にもなっていますよ?


「いや、みなまで言わなくても分かります。もう何も言わなくてもいいです」


 モテナイ男の希望なんですね。と呟いている。

 いやっ、違う! いや? 違う事も無いのか? 前世のエロいカードゲームは……いや、これは違うんだ!


「使役するだなんて見栄を張らなくても……いや、いいんすよ、そういうスキルも世の中にはあるって知ってますから」


 おいちょっと待て、どういうスキルを想像している?

 違うぞ、オレのスキルは決して、モンスターを女の子にしてイチャイチャできるスキルじゃないからな。


「大丈夫、分かっているッスから」


 いや分かってないだろ! その大丈夫は、ぜってぇ分かってないだろ!

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