レベル85

 調子に乗って細切れにして行く、エロゥリ。

 正気を取り戻していく騎士達。


「下がっていてください。奴に迂闊に近づくと操られます」

「う、ウム……尊い……」


 騎士様、エロドラゴンの姿に目を奪われているご様子。

 まあ、神殿と言うと禁欲生活が長いのだろう。

 だからって拝むのはどうかと?


「久しぶりだな、目の前であんな事が起きているのに知らん振りかね。竜王ニースよ」

「その名で私の名を呼ぶお前は何者だ? ふんっ、人間達の小競り合いなど、私の関知する事ではない」


 骸骨はニヤリと笑って、誰だか当ててみたまえ。と言って続ける。


「随分力を無くしたな。その様子ではここを守るだけで精一杯という所か」


 お前が何者であろうと興味がない。と言って目を閉じる、庭園の中央に居る巨大なドラゴン。

 その背後には一本の剣が刺さった台座が在る。

 アレがこの国の聖剣なのだろうか。

 そんなドラゴンに悪そうな笑みで答える骸骨。


「聖剣の担い手が現れたぞ。お前の愛しの聖剣が抜かれる時がきたようだな」


 その瞬間だった!

 突如ドラゴンから威圧の様な物が放たれる。

 思わず吹き飛びそうになった所を骸骨に抱きとめられる。

 おまっ、やめろよ! 変なとこ触るなよ!


「ちょっとぐらいいいでしょ?」

「良くねえよ!」


 なお、ボロボロになった悪霊も吹き飛ばされた模様。壁にベチャッと染みを作っている。

 エロドラゴンが威圧の元凶を見て唸っている。


「私の聖剣は誰にも渡さぬ!」


 そう言って首をもたげるドラゴン。


「なんでお前、怒らせるような事言うんだよ?」

「こうでもしないと張り合いがないであろう?」

「いらねえよ! そんな張り合い!」


 骸骨が両手を広げてさらに挑発する。


「力無く、死を待つだけの貴様に何が出来る? お前が死ねば、現物は持ち去られ、残るはレプリカのみ。良くある話であろう」

「我は死なぬ! この剣は誰にも触れさせぬ」

「それはどうかな? 目の前に居る若き竜が目に入らぬ訳では在るまい。今の貴様に彼女を御しきれるかな?」


 ドラゴンがロゥリを睨み付ける。

 そしてロゥリはその殺気を感じ、すっかりその気になってしまっている。

 骸骨の奴、わざと挑発してロゥリとドラゴンを戦わせようとしているな。


 ドラゴンが地面を前足で叩く。その瞬間、そこを中心として地面が凍り始める!

 骸骨はオレを抱え、ラピスは高く跳躍して、それを交わす。

 しかし、ロゥリと騎士達は足を凍りつかせて動けなくなってしまう。


「な、なぜ神獣様が我々を攻撃なさるのか!?」


 すいませんねえ、うちの骸骨が怒らせちゃったようなんですわ。

 そして動けなくなったロゥリに向かって炎の塊が飛んでく。

 だがロゥリ、それを剣で真っ二つ。ほんとに良く切れるな、あのドラスレ。

 そのまま力ずくで凍った地面から足を引き抜き走り出すロゥリ。


 トンとドラゴンの頭上を越える高さに跳ね上がったロゥリはそのままドラスレで斬りかかる。

 それを地面から伸びた巨大な蔦が抱き止める。


「あのドラゴン凄いな、全属性の魔法を使えるのか?」

「竜には基本それぞれ属性、と言うものがありましてな。しかしながらそれを無視出来る存在が僅かでも居ましてね。古代の人はそういった竜をこう呼びました。竜王と」


 その竜王が呼び出した蔦がロゥリに巻きつていく。

 全身を蔦に巻き込まれ姿が埋まっていく。

 竜王がその蔦を地面に叩きつけようと大きく掲げた瞬間! 蔦から光が漏れ出す!


 バンッ! という大きな音と共に弾けとぶ蔦。

 その後に居たのは巨大な一匹の白竜! ロゥリの本来の姿であった。

 竜に変身したロゥリは、そのまま重力に従って竜王を押さえつけ首に噛み付く。

 竜王も負けじとロゥリの肩に食いつく。


 ロゥリはそれを物ともせず首を引きちぎろうとする。

 だが、ロゥリと竜王の間で幾つかの爆発が発生した!

 それに吹き飛ばされるロゥリ。竜王も無事では澄まず、あちこちから血を流している。


「中々やるではないか竜王よ! 自らの犠牲をも顧みずか! しかしそれで良いのかな? 随分とダメージを食らったようだが」

「ハァっ、はぁっ、私は退かぬ! 何が在ろうともこれだけは退く訳にはいかんのだ!」


 ロゥリが元のドラゴンナイトの姿に戻る。そしてドラスレを杖に立ち上がる。


「変わりますか?」


 ラピスがそう問いかけるが、首を振るロゥリ。

 ロゥリが走る、無数に襲い掛かるドラゴンの魔法。

 それを斬り、避け、打ち返し、遂に竜王の懐に辿り着く。


 そしてロゥリは、深々と竜の心臓に向けてドラゴンスレイヤーを突き立てるのであった。

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