レベル73 第四章完結
「えっ、一緒に来るの?」
「はい、兄がいつもお世話になっているようで、私にも少しでもお手伝いをさせて頂きたいのです。それに……」
ヒメリアさんは、ロリドラゴンの方をみてポッと頬を赤らめる。
そいつ、メスな上にドラゴンすよ? 性別と種族の壁を同時に超えるのは難しいかと。
まあ、お兄さんも回復祝いにちょっとは休めばいいのに、急に張り切りだしたからなあ。
一緒に居られるならどこでもいいのかもしれない。
しかし、ここんとこロリドラゴン大活躍だな。
さすがは腐ってもドラゴンってところか。
「ガウッガウ!」
いだ! イダダダ! 別に悪口言ってねえよ!
ところでアレ、オレが触っていたらどうなってたの?
えっ、既に発動状態だからなんにもならない? まあ、じゃないと持ち運べないよね。
と、いうことは、このロリドラゴンの勘違いってとこか。まあ、それが良かったんだがな。
それから数日後、またしてもお城からお呼ばれがかかる。
今度はなんなんスか? もう面倒事はカンベンしてくださいよ?
案内された場所は、なんと王様の個室!
そしてそこに居たのは、困ったような顔をした王様と王妃様、それに、腕を組んで苦い顔をしているエルメラダス姫様。
が、一様に見下ろしている、絶賛土下座中のカユサルだった。
なにごとぉ? またお前なの? 今度は何やらかしたの? もう知らないよオレ?
「師匠!」
「……なにでしょうか?」
土下座したままオレの事を呼ぶ。ちなみに昨日からずっとこの状況らしい。
困ったご両親が、どうにもならないのでオレを呼びに来させたようだ。
「申し訳ありません! 俺は……俺は! パセアラ女王を幸せにする事は出来ません!」
……状況がまったく見えないのですが?
なぜそこでパセアラの名が出てくるの?
えっ、婚約を解消したいと願い出ているの?
「いやしかしな、最早国同士の決め事で決まった事、そうそう簡単には取り消しできん」
「俺には! もう! 心に決めた女性が出来てしまったのです!」
嫌な予感がしてきたぞ……つい昨日、グランドピアノのレベルが10レベルになっていたんだよな。
そしたら生えてた、スキル『擬態』の文字が。
擬態大人気だな。なんでも人化させりゃいいってもんじゃないんだぞ。
「あのぉ……オレ聞かなかった事にしていいですか?」
「いいわけないであろう」
「ですよね~」
王様が妾として向かい入れればいいだろうと言われてもガンとして聞き入れない。
こうなったカユサルは亀のように頑なだ。
「父上、母上、やはりここは、カユサルを王位につけるべきでしょう」
腕を組んでジッとしていたエルメラダス姫様が突然口を開く。
「それこそ覆すことが出来ん決定事項だ!」
「私が、下野するとしても?」
「なに!?」
そして姫様はオレの方へ向き直る。
「クイーズよ。お前、我々が用意した屋敷に一歩も踏み入れて居ないそうだな」
そんなのあったっけ? あ、なんかボウリックさんが言ってたような気がする。
「お前が貴族の暮らしを望まぬなら、私がお前にあわすしかない」
「へ?」
「父上、王である条件とは何か、それは強きスキルを持っている事ではないでしょう」
今度は王様に向き直る。
「たとえどんなスキルを持ってしても万の軍勢には勝てませぬ。事実、此度の戦、カユサルの機転がなければ、負けていたのは我々の方でした」
敗戦一方だった我が軍を立て直したのは骸骨の力だった。
だが、そんな見ず知らずの骸骨へ指揮権を委ねたのはカユサルだ。
もし、王代理がカユサルでなければ骸骨の力を借りようとしなかっただろう。
「先の戦、私は唯、見て居るしか出来なかったのですよ」
王様は一つ大きなため息をつく。
「カユサルよ、私はお前の努力を知っている。だが、お前はあまりにも周りの人間を信用しなさすぎる。それがスキルの由来であろう事は分かるが、それでは王は務まらぬ」
「分かっている、だから王には姉貴がなればいい」
「いや私はだな・」
「どうせ相手にされていないんだから頑張っても一緒だろ?」
カツカツカツと歩いて来た姫様は、足の裏でカユサルの頭を思いっきり踏みつける。
カユサルの額が地面にぶつかって鈍い音を立てる。超痛そう。
「そんなものはやってみんと分からんだろが! 戦う前から敵前逃亡はせぬ!」
ムクリと起き上がったカユサルが姫様を睨み付ける。
「そんなんだから男にモテないんだよ!」
「おっ、おまっ、言ってはならんことを……」
急に始まった姉弟喧嘩。
もうオレ、帰っていいですかね?
「分かった、分かった! エルメラダスの王位継承はそのまま、ただし、カユサルの婚約は解消。パセアラ女王には……カユサルかエルメラダスの子をあてがう。これで問題はないだろう」
それまでパセアラさんは独身ですか? それはちょっとどうなんだろう?
解散、解散って言って手を振る王様。
カユサル達の子供からだって文句が出るんじゃないかなあ……
「どっちか先に子供が出来るか勝負だな!」
「フッ、俺はもう既に愛を確かめ合っている」
「なんだとっ!?」
そっか~、もうやっちゃったのか~。え、オレに会っていって欲しい? 遠慮しときます。
「そんな事言わずに、彼女は師匠の子供もいっし・・」
「あ~あ~あ~! 聞こえない! 私は何も聞こえない!」
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