レベル34 大神殿オクタバレス
アポロが驚いたような、まん丸な目で二人を見送る
そして振り返ってオレをジッと見つめてきた。
オレはそんなアポロの頭に手を当てる。
「包帯を、はずしてみてもらえないか?」
フルフルと首を振るアポロ。
しかし、だいぶ考えこんだ後、ゆっくりと包帯をはずしていく。
その包帯が外れた後は……痛々しいほどの傷跡が残っている。
オレはそっとその傷跡に触れる。
ビクンッとアポロが震える。
「別に隠さなくたっていい。この傷は二人の為に付いたものだろう」
アポロ達が持っていた資金は、あの二人のスキル開放の為のお金だ。
そして、アポロ自身の武器なんて知れている。
きっとアポロは、あの二人の為に必死の抵抗をしたのだろう。
「傷は男の勲章だって言う奴がいる。でもそれは少し違う。誰かの為に負った傷は、男だろうが女だろうが関係ない、隠す必要のない誇りある勲章なんだ」
「…………クイーズ」
やっとしゃべってくれたな。
ウルウルと目に涙を湛えてオレを見上げてくる。
その時だった。
「あらあら、女の子なのに顔に傷なんてつけちゃって。もっと自分を大切にしなくちゃダメですよ」
突然現れた女性がアポロの顔に手を当てる。
そしてその手が離れた後は、傷一つ無い、かわいいアポロの顔が、そこにはあった。
「えっ、……?」
アポロはまだ何がおこったのか分かっていない。
オレの驚く顔を見てなにかを察したぐらいだ。
「あなたは……?」
「フフッ、君が史上最年少のドラゴンスレイヤーちゃんね。お噂は予予伺っています、本日は二人も同時にスキル解放の料金をありがとうございます」
そう言って頭を下げてくる。
いやいや、こちらこそ受けていただいてありがとうございます。
オレも慌てて頭を下げる。
しかし、あのドラスレ、こんなとこまで噂が広がっていたのか。まさしく黄金看板だな。もう誰にも(笑)なんて言わせはしない!
「あ、あの、今、アポロの傷を……」
「フフッ、これはサービスです。今後とも当神殿をご贔屓にお願い致しますわ」
そう言って微笑む妙齢の女性。
しちゃうしちゃう! ご贔屓にしちゃう! ありがとうございます!
オレは再び頭を下げる。
それでは私は仕事がありますので、と言って去って行く。
カッケー!
名も告げず、サッと人助けをして去って行く!
なんたるヒーロー!
オレ、ファンになっちゃいます!
「…………あの、クイーズ?」
「治ったんだよ! アポロのその顔の傷が!」
「えっ!?」
アポロは急いで中庭の噴水に駆け寄る。
そして溜まっている水に顔を映し……
「…………ほんとに……治って」
そのまま涙を零しながら小さく嗚咽を漏らす。
オレはそんなアポロの頭をそっと優しくなでる。
「良かったな」
「……うん、うん……あ、お礼」
お礼はちゃんとオレが言っといたから。またここに来る事もあるだろう、その時でも改めてお礼を言うといいよ。
「……うん」
暫くして、神殿から二人が出てくる。
そしてアポロの顔を驚愕の表情で見る二人。
思わず駆け寄ってきて、三人抱き合って泣き出す始末。
オレがもの凄く不信がられて見られている。
えっ、オレが泣かしている事になってるの?
あっ、ちょっと待って、通報するのはカンベンしてください。
あっ、衛兵さんがやって来た。
マジ通報したのか!?
違う! オレはやってない! え? 泣いてる原因は誰が作ったかだって、あ、オレかもしれない?
ちょー! ちがー! そういう意味じゃないッスー!
どうやら、からかわれていたようで、神殿でスキルを貰ってああやって泣く人は結構いるんだとか。
そうならそうと言ってくださいよ、もう。
「ところでスキルはなんだったんだ?」
「あ、そうだ! 二人とも凄いのが出ましたよ!」
ほうほう。
「まず私、なんと、この銃剣にもっともふさわしいスキル、その名も……」
『弾丸練成!』
ポロポロポロって、サヤラの目の前にいくつもの弾丸が精製される。
おおっ、こりゃすげえ。これで撃ち放題じゃないか!
サヤラの武器の弱点は弾切れがある、そしてその弾を作るのが大変である、という2点。
それさえ無ければ、飛び道具としては最高の性能である。
ん? でもこの弾丸なんか違って……
「次にうちッス! ちょっと地味だけど、これがあるとないのでは大きな違いになるっす!」
『必中!』
ティニーが矢を放つ、その矢は狙いたがわす、ヒラヒラと落ちる一枚の葉っぱを貫く。
おおっ、凄いじゃないか!
必中とは、飛び道具の飛距離が許す限り、必ず命中させる事が出来る。
ただし、スキルが軌道に影響する所以か、威力は低下するらしい。
「威力に付いては……解決済みッス」
「私が練成で魔法銃の弾が作れるなら、ティニーの分まで用意が出来ますから」
なるほど。弓よりも威力の有る魔法銃に持ち代える訳か。
必中のスキルを発動すれば、熟練を要すると言われる魔法銃もなんなく当てる事が出来ると。
「あれ? これ……私の魔法銃の弾丸と違う?」
ふと、地面に落ちた弾丸を拾ったサヤラが呟く。
その手にあったものは――――鈍色に輝く細長い――ライフルの鉄の弾丸であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます