レベル27

「あっ、お帰りなさいリーダー、どうでした新人さんの方は?」


 そう言いながら一人の女の子が駆け寄ってくる。

 この子は、ラピスがリーダをしているパーティメンバーの一人、サヤラ、という女の子だ。


「チース、随分早かったッスね」


 その後を、よく日に焼けた肌をした女の子が付いてくる。

 名はティニー、この子もラピスのパーティの一人だ。

 そして最後に、無言で俯いて歩く女の子が続く。


「アポロの奴、なんか機嫌が悪そうだな」

「リーダーが私達を差し置いて、そんな新人さんにかまけてるんで拗ねているんですよ」

「…………すねてなぃ」


 掻き消えそうな声で否定の言葉をあげる。

 この子はアポロ。

 この3人がラピスのパーティーメンバーだ。


 全員オレより一個下、13歳の女の子達だ。


 なんでも2年前、11歳でダンジョンに入り、無茶をして死にそうになった所をラピスに助けられたらしい。

 普通はそんな年齢でダンジョンなんて無謀なもんだが、アポロは珍しい魔法系のスキル持ちだったので、自分達なら大丈夫と謎の自信があったようだ。

 そのアポロ、スキルの詳しい内容は教えてもらっていないが、どうもレアクラスのスキルのようで、全属性の魔法を高威力で操る事が出来る。


 魔法系のスキル自体が百人に一人と言われるぐらい希少なもの。

 それが全属性ともなればどれだけ貴重なものか。

 少々天狗になるのも頷けない事も無い。


「ところで一つ、相談があるんですが」

「何でしょう?」


 ラピスがサヤラにある相談を持ちかける。

 ちなみにこのサヤラ、実は非常に珍しい武器を扱っている。

 銃剣だ。


 銃といっても、オレの前世であった鉛弾を打ち出すものではなく、魔法で作った弾を打ち出すものだ。

 事前に銃に必要な弾を作って置かなければならない上に、扱いにかなりの熟練を要する。

 弾を作るのにも相当の技術が必要であり、態々この武器を選択する者は少ない。


 その弾というのは、火の魔法を3段階に分けて製作する。


 撃鉄の当たる部分には弾を打ち出す雷管の役割を。

 その後弾の速度を増す火薬の代わりになる部分。

 最後に着弾時に発動する炎の魔法。


 着弾時に発動する炎の魔法は様々な効果を追加出来る。爆発したり、さらに加速させて貫通させたり、燃え広げたり。

 サヤラの両親はその魔法銃の職人さんだったらしい。

 それで小さい頃から慣れ親しんだ武器のようだ。


 サヤラはその銃にさらに剣を組み合わせ、遠距離では銃を、近距離では剣での攻撃を行う。

 なお、ティニーは普通に弓とダガーである。


「実は、このプリンセスのレベル上げに付き合ってもらいたいのです」

「そんな事なら何も問題ありませんよ。ねっ、ティニー、アポロ」

「ウッス、リーダーと一緒ならどこでもオッケーッスよ」

「…………問題なぃ」


「良かった。少し遠征になるので、そうですね、2週間ほど時間を空けておいてください」


 3人は快く了解してくれた。


 だが、


 その表情が驚愕に目を見開くのも時間の問題ではあった。


「えっ、えっ、……」

「ちょっ、マジで!?」

「………………」


 オレ達が向かった先、そこは――――魔都サンムーンであった。


「ちょっ、ちょっとリーダー、いくら何でもここはムリっしょ!」

「そ、そうですよ! サンムーンと言えばトリプルSなダンジョンですよ!」

「…………いずれ通る道、私達なら大丈夫」

「「無理だからね! アポロのそういうとこいいかげん直そうよ!」」


 お二人も苦労なさっているご様子。


「まあまあ、私もなにも勝算がなくココに来た訳ではありません」


 そう言って、カシュアのカードの裏面を見せる。


「ここに、アンデッド特効と言う物が書かれています」


 カシュアのカードの備考欄には、天敵・オーク以外に、アンデッド特効とも書かれてた。


「ということで、ここはこのプリンセスナイトになんとかしてもらいます」

「えっ!?」


 聞いてないよぉって顔をするカシュア。

 ラピスの奴、言ってなかったんかい。まあ、事前に言ったら行かないって言うよな、きっと。


「さて行きましょうか」

「イヤイヤイヤ! ラピス様! どうか御慈悲を!」

「大丈夫ですよ。あなたのくれたあの剣、すごい性能でしたよ。中には手練れのガイコツも居たのですが、剣に触れるだけで昇天してましたから」


 えっ、剣、あげてないよね? 貸しただけだよね? いやもう無いからどっちでもいいけど。とか言いながらも引き摺られていく。


「ほら来ましたよ。私が誘導します、スキルを発動して正面に来そうなら斬りつけてください」


 ラピスは3人の少女に指示を出しながら、アンデッドの集団に挑みかかる。

 そして一匹づつカシュアの正面に誘導する。


「くっ、でやぁあああ!」


 カシュアが剣を振り下ろす。その剣を受けたゾンビは、


「えっ、一撃……?」


 一撃で昇天していった。


「さすがはアンデッド特効、まあここらのゾンビはレベルが低いってのもありますが、それでも大したものです」

「ハハハ、なんだ、我が剣は圧倒的ではないか!」


 急に張り切りだすプリンセス。

 ラピスの奴、かなり弱らせた奴を正面に向かわせたな。


「坊ちゃまは後方で3人の護衛をお願い致します」

「分かった」


 しかしこの構成、オレだけ何もしていないように見えるな。

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