レベル28

「た、たった一日でこんなに……」

「この調子で一週間稼げれば……いっきに数か月分の稼ぎになるッスよ!」

「カシュアのレベルも順調に上がっていますからね。この調子なら最終日にはこの倍は硬いでしょうね」

「マジっすか!」


 さすがはトリプルSなアンデッドタウン。出るわ出るわ、ワラワラと。

 そんなアンデッドが落とす魔石と言う奴が、結構な高値で売れる。

 ちょっと素早そうな奴はラピスが片付けて、弱そうな奴から順にカシュアの正面に誘導する。

 最初は薪割り機がごとく、ただ振り下ろすだけだったカシュアも、徐々にスキルの使い方に慣れてきたのか、後半は積極的に攻撃に参加していた。


 さすがはアンデッド特効だけあり、次々と現れるゾンビやガイコツを打ち倒していく。

 良く見てみると、剣が触れた場所が光の粒子になって消えていっている。

 まさしくバターを切るがごとし、だな。


 そんなカシュア、有頂天になってオレの肩を叩いてくる。


「見ててくれたかね、ボクの勇姿を! ん、そういえば今日は君の勇姿を見かけなかったかな? まあいい、君の分までボクが稼いで見せようじゃないか!」


 ウザッ。

 一応オレだって、迂回して3人娘に向かって来てた奴を始末してたよ!


「そうか、そうだな……じゃあ明日は今日の倍はお願いしようかな」

「えっ?」


 オレの分まで稼いでくれるんだろ? だったら倍はいかないとな。


「そうですね……倍々目指しましょうか。明日はもうちょっと奥まで行って……後、3匹は同時でも大丈夫ですよね」

「ええっ!?」


 無理ムリムリ! 絶対ムリ! って涙目でラピスに縋り付くプリンセス。

 まあ、倍は冗談だけど、今日の終わりぐらいのペースで最初から行けば、かなり稼げるとは思うな。


「ちょっとちょっと、先ほどの事は謝るから、ラピス君を止めてくれないかな?」


 いや、さすがにラピスも倍々は冗談だろ?


「彼女が冗談を言うと? アレは本気の目じゃないかね!?」

「まあ、ラピスがやれるって言うんならやれるんじゃないかな?」

「そこにボクの無事は入っているのかな?」


 ないんじゃない?


「お前にいい言葉を授けようではないか」

「おおっ!」

「口は災いの元」


 そんなぁって膝から崩れ落ちるプリンセス。まあ、頑張れ。


「それにしても、相変わらず脆い家屋だな。もしかしてまだコアが転がっているのか?」

「さすがにそれはないかと。でも、どこか排水路にでも落ちたのかもしれませんね」


 王様骸骨に恨まれていそうだなぁ。

 なるべく王城には近づかないようにしよう。


 そんなこんなで一週間、稼ぎに稼ぎまわって、さあ帰ろうかってなった日の事だ。


「…………少し、話があります」


 3人娘が深刻そうな顔をしてオレの元に集まる。


「アポロ、そんなに急がなくても」

「大事な事、スキルあれば、もっと強くなれる」


 珍しくアポロが饒舌だな。

 普段はめったにしゃべらないんだが。


「…………サヤラ、お願い」


 でも説明はサヤラに頼むんだね。

 サヤラは一つため息を付いた後、観念したような表情になる。


「まずは、私達の置かれた立場から説明させてもらいます。いいよね、アポロ」

「…………クイーズは信用できる」


 まあ、なんとなく想像は付くけどな。

 ティニーはまあ、普通だが、残りの二人が異常である。

 一人は希少なスキル持ち、もう一人は金持ちが使う特殊な武器。そしてそれの製造方法を知っている。


「私達、というより、アポロが……元は貴族だったんです」


 スキルは遺伝する。

 いやスキル自体ではなく、スキルを持って生まれてくる可能性がだ。

 スキル持ちの子は大抵スキル持ち。


 レアスキル持ちの子はレアスキルを持って生まれやすい。


 即ち、貴族のような裕福な人間は、そういったスキル持ちを伴侶として選ぶ事が多い。

 必然、貴族の子はかなりの確率でスキルを持って生まれて来る事になる。

 平民からレアスキルが出るのはめったにない。


 アポロが貴族であろうことはその面からも大体想像はついていた。

 それは気づいていた、だが、サヤラの語る言葉は思ったよりオレに衝撃を与えるものであった。


「アポロは元々、この国と敵対する、隣国の小さな辺境の領主だったのです」


 ほうほう、この国と敵対する隣国とな……嫌な予感がしてきた。 


「それがその国では数年前に政変がありまして」


 なんでも、お国のトップレベルの偉い貴族様が王家を巻き込んで問題を起こしたらしい。

 そしてその問題を起こした偉い貴族の長男が失脚する事になり、その弟が跡を継ぐことが決まったのだが。

 それまで長男の取り巻きをしていた連中が、スワッこりゃまずいってごとき、弟の取り巻きに鞍替えしたそうな。


 で、それまで弟の取り巻きをしていた連中を、あれやこれやの政略で追い落としていったらしい。

 中には、無実の罪を着せられて辺境に飛ばされた貴族も居たとのこと。

 で、そんな辺境に飛ばされた貴族にとっては災難ではあるが、それよりももっと災難な連中が居る。


 それは、元々その辺境を治めていた貴族だ。


 玉突き状態で領主の身を追われ、平民に落とされたりしたようなのだ。

 で、その平民に落とされた貴族っていうのが……


「アポロの両親なのです」

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